第188話 エピローグ
俺は七夕に目覚めてから、いくつか驚いたことがあった。
その筆頭はアニメが中断していたことだ。
「けしからん! テレビ局に圧力をかけろ」
そんな命令を出したけど、あっさりと再開が決まった。
それも、深夜ではなく20:00というゴールデンタイムに。
8話から再開という話と1話からスタートと。
両方の案が出たが、1話から7話は深夜に毎日放送して、それが終わってから8話から13話までゴールデンと決まった。
深夜の放送開始が7月25日から1週間。
ゴールデン移行の8話が8月5日。最終回が9月9日に決まった。
8月5日は、東京オリンピック期間なのに、よくゴールデンの枠をとれたなと思ったら、スポンサーがとんでもないことになっていた。
ミラクル悠斗の復活でお祝いを兼ねて、事故する前の大企業経営者の会合参加者がほとんどCMを出してくれた。
それも、それぞれ復活をテーマにした一回限りのCMを用意するという用意の良さ。
第8話は新たに悠斗の復活という話になったらしい。
おいおい、キリストじゃないんだから、そういうのはどうか、という意見は、周りの賛成の声に打ち消された。
そんな話をみゆちゃんに話したら。
「やっぱりね」
「ん? なにか?」
「金星神さんが調整したみたい」
「どういうことだ?」
「9月9日は菊の節句だから、菊理媛の日なのよ」
うーん、みゆちゃん。
やたらと神社と神様に詳しくなっていた。
☆ ☆ ☆
この『アイドル大革命』のアニメは、大成功した。
深夜ですら、タイムシフト分をいれると10%を超えた。
ゴールデンタイムは、最近聞かない30%という視聴率。
最終回に至っては39%というあり得ない数字になった。
そして、9月9日に発売になったジュエリープリンセスのデビューシングル「やりたいを取り戻せ」は予約だけでミリオンを突破。
たった1カ月でダブルミリオンを達成した。
俺とみゆちゃんは、文秋砲に狙われる前に婚約を発表した。
アイドルグルーブのセンター。
人気絶頂の婚約、それも相手がミラクル悠斗。
これもまた大騒ぎになった。
ふたりはデートで街を歩いていても、周りの人たちは気を使って声をかけない。
温かい笑顔で見守ってくれている。
「やりたいを取り戻せ!」
後ろから走ってきた子供がそんなことを叫んでいる。
やりたいを取り戻せは、今年の流行語大賞の一番の候補だ。
「蛇神さんは納得してくれたかな」
「うん、きっと喜んでいるわ」
「そうだな」
「でもね。まだまだ封印されている縄文の神様は一杯いるわ。解放してあげなきゃ」
最近、旅行に行くと神社巡りが定番になった。
みゆちゃんのガイドによって。
ちょっとやりすぎだと思うのだが、みゆちゃんの今、一番やりたいことがそれだと言う。
俺か。
俺が今、一番やりたいこと、それはみゆちゃんと一緒にいることだ。
だから、俺も縄文の神様の解放に一緒について回っている。
☆ ☆ ☆
後に、令和の時代を歴史学者はこう分析した。
卑弥呼の時代から始まった縄文文化と弥生文化の統合が終わったと。
弥生文化は大陸から渡ってきた渡来人が持ってきた統治技術がベース。
当時の中国大陸は始皇帝による統一中国が誕生して滅びていた。
縄文文化を封印して、稲作をベースにした弥生人による統治が始まった。
それが邪馬台国、三輪王権、大和王権、飛鳥時代へと繋がり今の日本が形成された。
そして、令和の時代に入って封印されていた縄文文化が解放されて、多様な価値観、多彩な文化が広がった。
文化統合ではなく、文化共存の時代に入った。
そしてその文化は国の枠を超えて世界に広がり始めた。
解放されはじめた縄文の神様と共に。
「令和の言葉を欧米ではビューティフルハーモニーと訳しました。
その通りの時代がやってきたんです。
弥生に始まる日本と、縄文までの古き日本が美しい調和を奏でる時代になったんです」
そんな解説がされるようになった。
そのきっかけを作った悠斗は、ミラクルからレジェンドに進化して語り継がれるのだった。
これにて、一度、完結となります。
5月9日にスタートして、2カ月弱、毎日3話更新を続けてきました。
一番書きたかった、蛇神さんと星神さん。
そして、お金のこと。
だいたい、書けたかな、と。
一番多い時で、最新話を当日中に読んでくれる連載読みの読者が1万7千人になりました。
終わりまで1万人の連載読みをしてくれている読者がいます。
お付き合い、ありがとうございました。
毎回いくつもある誤字脱字をひとつひとつ訂正してくれた多くの読者さん、ありがとうございました。
今後、番外編として、蛇神さんの話やジュエリープリンセスの話とか。
のんびり書いていこうかなと思います。
1800年前に起きた、卑弥呼と蛇神さんたちの戦いも書いてみたいな。
そして、この小説の協力者。
蛇神さん。
いろいろとインスピレーションをありがとうございます。
まだまだ、小説を書くスキルが足りないから、不満なこともおありだと思いますが
長い目で見てくださいね。
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次の番外編…悠斗は新札発行までに、全部返し終わるのか? その答えを番外編として更新予定
他にも …俺はキャバクラオーナーになった……こんなとこにも、やりたいが残ってたって話
番外編 …俺はギャンブル女とラスベガスに行くことになった
…美波は悠斗の愛人でいつづけるのか?
…なぜ、渋川さんはパラコンシェルジュになったのか?
等々、を気まぐれで更新する予定。
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最後までお読みいただいて、ありがとうございました。
読み終わった感想や、↓で評価をしてくれるとうれしいです。




