第178話 俺はふたりの女性に会っていた
「どうしたの? 今日は」
「明日、大企業のオーナーに会うことになってな」
「それはすごいわ。どこの会社?」
「まだ分からないが、10社くらいになりそうだと渋川社長が言っていたぞ」
「それじゃ、おしゃれしないとね」
久しぶりの美咲さんと一緒のお買い物だ。
本当のことを言うと、すでにお偉いさんに会うコーディネイトはちゃんとある。
今日、揃えないといけない理由はない。
だけど、なぜか、今日は美咲さんに服を選んでもらいたい気持ちになっていた。
「今の悠斗なら銀座ね」
最初のコーディネイトが新宿は伊勢丹だったから、格が上がったのかもな。
「すべて任せた。17時に約束があるからそれまではフリーだ」
「わお。じゃあ7時間も悠斗さんをひとりじめね」
「そうなるな」
なんか、懐かしい感じだな。
美咲さんと一緒に出掛けるのは。
秘書的なことはしてもらっていたが、最近は一緒に出掛けることが少なくなっていた。
美咲さんお勧めの銀座のお店を廻る。
服自体は吊るしのものでは駄目だということで、服はあきらめて小物類中心にお買い物だ。
「この店はアンティークの1点ものが多いの。このフランスの18世紀のカフスボタンなんかいいんじゃないかしら」
「そうか。それをいただこう」
今は高いものではなく、値段では測れない物を買うようになった。
アンティークなどは特にそうだ。
もっとも、美咲さんがナビゲートしてくれるから、そういう物と出会えるんだがな。
三ツ星レストランで昼食をふたりで食べて、お店を3軒回って。
カフェで美咲さんと話をしていたら、17時になった。
「美咲さん。バトンタッチよ」
「あー、もう17時かぁ。残念」
真っ赤なランボルギーニで迎えに来た美波。
今夜は美波と一緒に朝まで過ごす予定だ。
「どこにいくか?」
「もう、ホテルを取ってあるわ」
「そうか」
「食事もルームサービスにしたわ」
「そうか」
「悠斗さんとふたりでいる時間をできるだけ取りたいから」
「そうか」
今夜は寝られないかもしれないな。
そんなことを思いながら、美波が運転するランボルギーニに乗り込んだ。
美咲さんと美波。
チート財布を手に入れたときに知り合ったふたりだね。
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