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第176話 俺は焦っている気がするのは何故なんだろうか

「悠斗さん。いいですね。これ」

「そうだろう。みゆちゃんの作詞だ」

「違うわ。半分は悠斗さんの作詞です」


元ゴーストソングライターの一輝に三輪山の後に作った、みゆちゃんとふたりで作った作詞を見せた。


「しかし。このタイトルは僕には付けることができないタイトルです」

「ん。 なぜだ?」

「やりたい、ってキーワードはほとんど歌のタイトルになっていないんですよ」


一輝が歌タイトル検索のホームページを表示した。


そこに「やりたい」と入れるとほとんど表示されない。


たった4つ。

そのうち2つは「ヤリたい」だからエッチな意味だ。


「あと、やりたいし放題っていうもあるけど、違いますよね」

「あぁ、違うな」

「最後のひとつが、ちゃんとやりたいこと、これも違うニュアンスですよね」


不思議だ。

やりたいって言葉はそんなに使われない言葉なのか?


それが努力になるとすごい数が出てくる。


「すると。『やりたいを取り戻せ』ってタイトルは人気でないってことか」

「いえ。そんなことはないかと。すごくインパクトがありますから」


一輝のそのあたりのセンスは信じられる。

だいたい、三輪山の蛇神さんから授かった言葉だから、変える気はないけどな。


「面白い歌詞ですね。あと、あれですね。作曲は紗夜華さんに任せたら?」

「紗夜華にできるのか?」

「いいセンスもっていますよ。僕みたいなあざとい曲ではない。自然な曲を作ってくれるはずです」

「そうか」

「編曲は任せてください。最高の仕上げをしてみせますよ」


どういう曲ができるか分からない。


だけど、俺とみゆちゃんが作った歌詞と紗夜華ちゃんの作曲。

きっと素晴らしい曲になるに違いない。


「これが『アイドル大革命』の最終話の歌ですね」

「そうだ」

「これを聞いた人はすべて本当にやりたいことに目覚めるってストーリーですね」

「あー、それはまだ分からないが。ただ、ラストシーンはこの歌をみんなで歌っているだろう」


俺は劇場版『マグロス』の最終シーンをイメージしていた。


巨大なウニ型の敵要塞に突入していくマグロイド・カジキニー。

あの時の歌。


「愛・おぼれていますか?」


あれで鱗・明里は、1800年の時を超えて卑弥呼とリンクしたのだ。


そして、鱗・明里が卑弥呼の生まれ変わりだということが判明した瞬間。



あの歌は今でも、頭の中に流れている。

感動的なシーンだ。


30数年経っても残り続ける名作。

それに並ぶ作品になったらいいな。


そんな夢を持って最終話のキー楽曲。


「やりたいを取り戻せ」


これを完成しなきゃ駄目だ。

それもすぐに。


なぜか。

やたらと焦っている俺がいた。


生き急いでいる悠斗。次のアニメの放送は2日後に迫っていた。

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