第175話 俺は奨学金のやり方を変えることにした
「そうなんですよ。奨学金から闇金に来てしまう客、最近増えていてな」
「そんなことが起きるのか」
通りすがりの男役を終わらせて。
お嬢さんが目をキラキラさせて見送ってくれた。
その後、ちょっと事情を聞こうと闇金おっさんとそっち系のたまり場の喫茶店でお茶をしている。
「さすがに悠斗さん。有名になりすぎですからね。俺たちみたいな反社会的勢力とつながりがあると文秋にみつかるとヤバイすからね」
「大丈夫だ。俺は凶本に所属していないし、反社会的勢力から金ももらっていないからな」
「あ。でも、資金提供しているって言われたらヤバイすよ」
「そんなことはしていないぞ。俺がやっているのは闇金に追い込まれている女性に資金提供しているだけだ」
「あ、そうでしたね」
勘違いを正してから、俺は奨学金の話を聞いた。
「だって、22歳の大学を卒業したばかりの若者がいきなり借金500万円ですよ」
「そうだな」
「そういう奴の親も大抵は金がないですし」
「そうだな」
「下手したら、闇金ルートに至ってしまう訳ですよ」
うーむ。
奨学金を借りるというのはそんな危険なことなのか。
そこまでして、どうして大学に行きたがるのか。
俺はチート財布を手に入れるまでは、最低限の収入で最低限の生活をしていた。
別にそんなに不満はなかった。
あったとしたら、彼女がいないことか。
それも贅沢のひとつだからな。
「大学行かないといけないという思い込みですかね」
「そうなのか」
それでも、奨学金を借りてでも大学に行きたがる人がいる。
そして、それが元で闇金に落ちてしまう人もいる。
「なんか、奨学金。違う方法はないのか?」
「あ、悠斗さんが奨学金の基金を作ったらどうですか?」
「どういうことだ?」
「ミラクル悠斗さんが魔法の財布から奨学金を出せば解決するじゃないですか」
それもちょっと違う気がする。
「分かったぞ。俺が奨学金をだす。そして、ミッションを与えてそれをクリアしたら1割減額だ」
そう。
ゲームの要領だ。
社会に出て役立つ経験をミッションとして与える。
前に悠斗カンパニーに入ってきた奴が言っていたな。
アルバイトでチェーン店の新規立ち上げをしたとき、すごく勉強になったと。
まだ形がしっかりと定まっていない新規立ち上げだとただ指示待ちではうまく機能しない。
自ら動くことをしないと駄目だ。
それをちゃんとこなして立ち上げをすると初期メンバーに連帯感が生まれると。
そういう学生バイトでもできるいろいろな経験を奨学金減免という賞品でクリアさせる。
社会に出たときに役立つ経験を10クリアしたら、奨学金返済義務が消える。
「うん。面白い。これに100億円くらい、突っ込んでみるか」
500万円が2千人で100億円か。
来年の4月スタートなら、まだ間に合うな。
「ミラクル悠斗奨学金の誕生ですね」
「なんか、うさんくさい名前だな」
しかし、渋川社長にその案を話したとき、言われてしまった。
「ミラクル悠斗奨学金の誕生ですね」
なぜ、全く違う闇金おっさんと渋川社長が同じ名前を付ける?
不思議だな。




