第173話 俺は『アイドル大革命』の炎上を想定しなかった
アイドル大革命の第6話が放送が終わったとたん。
アイドル大革命のサイトの掲示板が炎上した。
反『煌』派と、『煌』派、そして、けんかはやめて派。
アニメを観て、そのストーリーと現実がごっちゃになったレスの応戦。
あっという間に公式の掲示板から、アニメ関係の掲示板、ツイッター。
あちこちで、大騒ぎになってしまった。
それがそのまま、翌朝の情報番組にのって、
さらにあちこちで炎上する騒ぎに。
朝、誠人から電話が掛かってきて。
「悠斗さん、どうしましょう」
「何を言っているんだ。こんなチャンスはそうないぞ、この騒動をうまく使う方法を考えよう」
そう指示を出しておいた。
もちろん、煌をはじめ、アニメ参加の4人は気にしているだろうから、電話で話した。
「なんであれ、人気があるってことだから、良い傾向だぞ」と。
それぞれ気にしているみたいだが、俺がそう言ったら安心したらしく、4人で会ってちゃんと話をすることになったらしい。
まぁ、4人の結束力を信じるとするか。
「悠斗さん。すごいです。第6話、深夜なのに視聴率3%を超えました」
それまでは1%前後だったから、一気に上がったということだ。
まぁ、朝のワイドショーで煌とアニメの話をしまくってくれていたからな。
どんでもない番宣になったらしい。
俺はこれかにどんなことが起きるのか。
妙にわくわくしていたら、電話がかかってきた。
「通りがかりの悠斗さんですか?」
電話してきて、通りがかりはないと思うが、この名前で呼ぶのは闇金のおっさんだ。
「ああ。そうだ。もしかして、通りがかって欲しいとこがあるのか?」
闇金のおっさんから電話が掛かってくるというのは、そういうことだろう。
しょっちゅう掛かってくるようだと、「いいかげんにしろ」と言いたくなるだろうが、絶妙なタイミングで掛かってくるから不思議だ。
「ええ。実は麻布から車で15分くらいの場所なんですよ」
「分かった。住所を送ってくれ。今なら行けるぞ」
あまりにアニメと煌の話ばかりになっているから、ちょうどいい気分転換になるな。
俺はどんな借金の人か興味を持った。
「それはよかった。それがかわいそうな女性なんですよ」
闇金なのに、追い込みする相手を可哀そうだとプロモーションしてくる。
不思議な人だな。
どうも、小さい双子の子供がいるシングルマザーで元々は奨学金返済からおかしくなったらしい。
両親はあまりお金がなくて高校を卒業させるのもやっと。
下に弟と妹もいるし。
だけど、彼女は勉強ができて真面目な女性だったから、奨学金を得て大学に行ったそうだ。
ただ、その奨学金は返済が必要で働きながら返す予定が、在学中に付き合っていた彼との間に子供ができて、それも双子。
卒業してから、結婚、出産の予定だったのに、卒業と共に彼が逃げてしまったらしい。
「それでついついクレジットカードを使ってしまって。それから消費者金融のルートのありがちパターンでさぁ」
うーむ。
そんな状況なら、学費返済なんて考えなければいいものを。
「学費返済って、待ってもらうことはできないものなのか?」
「そんなの申請ひとつで簡単にできますよ。ただ奨学金の関係者はそれを教えることはしないですが」
なんとも、不親切な仕組みだな、奨学金とは。
「奨学金だって借金。社会人になった瞬間に返済がスタートするんです」
「そこまでして大学に行く必要はあるか、だな」
「あー、悠斗さんもそう思いますか。それは疑問だと思っていたんです。俺は高卒ですしね」
「俺は中卒だ」
しかし、まだまだ学歴信仰というのは残っているらしい。
大学を出ないと人生の負け組になるという信仰だな。
その信仰によって起きた闇金追い込み。
その現場にたまたま、通りがかるとするか。
炎上対応からの闇金追い込みコンボ。
奨学金の闇にミラクル悠斗が通りがかるらしい。
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