第164話 俺はとんでもないスクープを文秋砲で知った
無事、『吹雪にしやがれ』でアニメ組のアイドルグループが発表になった。
ジュエリープリンセス。
コテコテのアイドルグループ名だな。
それぞれが宝石の原石だという意味がある。
ここから本格的な活動をスタートしようと思った瞬間。
文秋砲が炸裂した。
「1800年にひとりの歌姫は芸能界のサラブレッド」
そんなタイトルだった。
意味が分からない。
俺がスクープされるなら、分からんでもないが、なぜ煌が?
記事に書いてあったのは、とんでもない煌の生い立ちだった。
煌の両親がとんでもない芸能人だった。
父親は、キムパクで平成のイケメンの代表だった木村白馬。
さすがに最近はイケメンというより、渋い役が多くなったが、それでも映画の主役を年何回も務めているイケメン帝王。
母親は、藤原恵子で演歌からブルースまでこなし紅白の常連でアメリカでも受賞経験を持つ女性。
そのふたりの子供が、煌だと言うのだ。
そして、もうひとつ驚いたこと。
パロプロからのデビューが決定しているとのこと。
「なんだって!」
これから、グループとして活動していく予定だったのに、キャンセルか?
いつかはメジャーデビューすることになるとは思っていたが、さすがにこれは予想していなかった。
リーン♪ リーン♪
「煌です。ごめんなさい」
「あ、ちょうどいま、文秋を読んでいたところだ」
「パロプロの話。断り切れなくて」
「どうして話してくれなかったんだ?」
「いきなりだったの。その記事も両親の仕込みよ」
どうも、煌は両親と仲が悪いらしい。
ほとんど育てられたという実感はなく、ずっとお婆ちゃんと一緒にいたらしい。
「でも、ジュエルプリンセスの活動は参加するわ。ちゃんとパロプロにも了解をもらったわ。それが所属の条件にして」
そこまでして、参加する意味があるのかよく分からない。
パロプロは売り出しがうまいプロダクションだし、すでにライブを成功させて実力は保証付きだ。
ソロとして十分メジャーなステージで戦えるはずだ。
「ううん。ひとりはイヤなの。みんなと一緒に活動したい」
まだ16歳だったな。
大人顔負けのラブソングを歌うから忘れてしまいそうになる。
まだ、高校生の歳だ。
普通なら学園生活をしていてもおかしくない。
「それじゃ、こっちも一緒に頑張っていこう」
「はいっ」
☆ ☆ ☆
「しかし、うまく行ったな」
「本当に。ここまで準備してくれた悠斗さんには感謝しないといけないわね」
「それはどうだか。あいつも煌のおかげでいろいろとメリットはあっただろう」
「それもそうね。しかし、変なグルーブに入ってしまったのはまずいわね」
「ああ。大丈夫だ。そのあたりのコントロールはパロプロのしんく社長に任せればいい」
「そうね」
木村白馬と藤原恵子は笑いあったのだった。
あーあ。煌が敵側にとられたぁー、のか?




