第163話 俺は1800年に一度の歌姫のライブを観た
「しかし、すごい人気だな」
「ええ。メジャーデビュー前なのに2000人ライブはとんでもないことですね」
俺と誠人は関係者席で煌のライブに来ている。
テレビにはアニメ以外一切出ていないにも関わらず、即日完売した初ライブ。
アニメは5話が放送になって、彗星のごとく現れてその歌唱力から一気に「1800年に一度の歌姫」と呼ばれるようになる部分。
しかし、アイなろの主要メンバーとは微妙な関係になって、一人で活動する形になった。
「実際、そうなりそうですね」
「そうとも限らないんだな。煌が他のアイドルと一緒に活動することを望んでいる」
「えっ、だけど。バランス難しくないですか?」
「ふっふっふ。アイドルは歌だけではないんだよ」
すでにアニメに登場している4人でグループを組む予定になっている。
楽曲もすでに用意してあって、発表場所も用意してある。
「どこでやるんですか? もしかして武道館とか」
「いや。ジャリーズのアイドル番組『吹雪にしやがれ』だ。4人がゲスト参加して最後に発表だ」
「ゴールデンじゃないですか。それも人気番組」
「そう、視聴率トップ5に入る番組さ」
さすがに、これにねじ込むことができたのはびっくりした。
饅頭箱が飛び交ったけどな。
「ジャリーズとトラブらないですか?」
「うちは、女性アイドル中心だからな。まだ、大丈夫だ」
「まだ、ですか?」
そう、これからは分からないが。
王子アイドルが人気が出てくると、ジャリーズとぶつかるかもしれない。
「さて、煌のステージを観るとするか」
「そうですね」
ステージが真っ暗になり、ステージ下からひとりだけ現れる。
いきなり歌いだす。
「フォーリンラブ」だ。
すると、男性の衣装なのか?
いきなり、スポットライトがあちこちの方向から当てられる。
スーツ姿の煌が、恋に落ちた気持ちを歌い上げる。
まだCDも何も発売になってはいないから、最初の部分以外、未発表だから公開の場ではこれが初披露だ。
3番までを歌い終わったら、とんでもない音量の拍手が沸いた。
「みなさん、応援ありがとう。鵜谷煌です」
少々のトークの後、早変わりで缶ビールを持ったOLの姿になった。
今度は「ロストラブ」だな。
しかし、缶ビールか。
確かに、飲んでいる感じがする歌だからな。
不思議なのは、メイクを変えている訳じゃない。
ウイッグをつける訳でもない。
ショートカットの髪を軽く整えて服が変わっただけなのに、男から女に変身する。
そうか。
表情が違うんだ。
男にも、女にも見える中性的な美形な顔。
これはアイドルとして必要なものが揃っている。
そこからのステージは、すごい声援が続いた。
1800年に一度の歌姫というのは本当かもしれないな。




