第160話 俺はアイドルの人気が移ろいやすいことを知った
「悠斗さん。良い報告と悪い報告があるんです」
「それなら、悪い方から聞こうか」
誠人が電話してくるときは、たいてい何かあったときだ。
良いこともあるし、悪いこともある。
今日は両方らしい。
俺は好きなものはとっておくタイプだ。
食べたいものも、最後まで取っておいて最後にまで楽しみを取っておくのが好きだ。
「悪いことは、紗夜華のライブチケットが売り切れそうもありません」
「どのくらい残っている?」
「まだ半分近く残っています」
「売れ行きがいきなり止まったな」
「そうなんです。どうも、煌の影響みたいなんです」
「煌?」
すでにアニメは3話が放送されている。
エンディングで煌の男バージョンが登場して、絶大な人気を受けている。
そのあおりをくらって、紗夜華の人気が頭打ちになってしまった。
最初のライブも地味だという評価が流れてしまって、リピーターもあまりいないらしい。
「そうか。紗夜華はひとりだと弱いのかもしれないな」
「そうですね。ハープだけだと、ひとりで家で聴くのは良くても、ライブだと弱いんです」
「そうか。まぁ、元々、新人にしては、ハコが大き過ぎただけだな」
「はい」
紗夜華は誰か他のアイドルと組み合わせていくといいのかもな。
あ、みゆちゃんはどうだろう。
これは、検討の価値ありだな。
「それで良い知らせってなんだ?」
「煌です。ネットではすごいことになっていて、テレビの取材もすごいです」
「明日の朝の情報番組はすべて煌を取り上げるみたいです」
「それはまたすごいな」
たしかに、煌の声はすごいからな。
とにかく声を出せる範囲が普通の人の2倍あるんじゃないか。
男と女両方出せるしな。
「すでに1800年に一度の歌姫のフレーズはネットでも拡散しています」
「そうか」
「たぶん、明日にはテレビもそのフレーズを拡散するはずです」
「これは、ライブをやらないといけないかな」
「そうですね。煌はスター性に心配ないですから。そもそも、自分で作った持ち歌も10曲はありますし」
「そんなにあるのか」
本当に天才みたいだな、煌は。
「すでに2000人キャパの箱を押さえました」
「おいおい。それはやりすぎだろう」
「大丈夫ですよ。今度は満席にしてみます」
うーん、誠人はライブの仕切りが楽しくなってしまったらしいな。
まぁ、楽しいことをやらせるのが悠斗カンパニーのポリシーだ。
ガンガンやってもらいたいな。




