第155話 俺はイベントが大成功するのをみた
三輪山から帰ってきた俺とみゆちゃんは、下痢で休んでいた商店会長と合流して桜井駅の商店街に戻ってきた。
商店会長は少し前から体調が急に良くなったという。
「まるで何もなかったかのようです」
「あー。もしかして。11時11分くらいから良くなったんじゃないか?」
「ええと。そういえば、そのあたりかもしれません」
うん。
俺たちが奉納した時くらいだな。
そもそも、商店会長が下痢したのも、俺とみゆちゃんだけを呼ぶためだったんじゃないか。
そんな気がする。
「今は誰も入山していませんよ」
登拝の説明をしてくれた神官はそんなことを言う。
集中豪雨になりそうだから、入山をやめさせていたのと、すでに入山していた人は早めに降りてきたらしい。
「俺とみゆちゃんだけが三輪山にいたんだな。11月11日11時11分に」
なんだか、不思議な感じがした。
商店街に戻ると、イベントが大盛り上がりをしていた。
集中豪雨の心配がなくなり、イベントに参加する人の数が増えていたのだ。
「みゆちゃん、早く来て、着替えて。三輪そうめんの試食販売するわよ」
「はーい」
Sheshockガールの2人がみゆちゃんを迎えにきた。
俺はというと、急激な眠気が襲っていた。
それまでなんともなかったのが、立っていられないくらいに。
商店街のベンチに座って目を閉じた。
音が聞こえなくなり、俺は夢の中に入っていく。
そこには、白蛇さんがいた。
お酒と卵を前にして嬉しそうにしている。
「やっと、来てくれたな」
「おおっ~。しゃべれるのか?」
「当たり前だ。前も話しただろう」
「そうだったかな」
「覚えていなかったのか」
そんな話を白蛇さんとした気がする。
しかし、深い深い眠りに入ってしまい、記憶があいまいになる。
もっと色々と白蛇さんと話した気がする。
だけど、俺は覚えていない。
完全に寝ていたのだ。
☆ ☆ ☆
その頃、みゆちゃんは試食販売ステージが終わった。
SheShockガールズのメンバーのひとりと控室に戻るところだった。
「やりたいを取り戻せ?」
「えっ、何? みゆちゃん」
「やりたいを取り戻せ!」
「えっ、やりたいを取り戻せ、って何?」
「・・・・」
「みゆちゃん、どうしたの?」
「・・・・」
「ね、みゆちゃん!」
「えっ、何?」
「あ、よかった。変だったわよ、今」
「えっ?」
「やりたいを取り戻せ」
「えっ、それは何?」
「みゆちゃんが言ってたのよ、今。やりたいを取り戻せ、って」
「やりたいを取り戻せ?」
「そう」
その日、ふたりはぼーっとして1日をすごしたのだった。




