第153話 俺は三輪山に急遽登拝することになった
「三輪山の神様は蛇神様で雨乞いもできるはずなんです」
「おいおい。雨乞いしてどうする。雨は困るんだろう」
「だから、雨乞いができるなら、雨も止められるかと」
「本当か?」
「ほかにあのすごい雨雲をなんとかする方法は分かりません」
急遽、俺は三輪山に清酒と卵を奉納することになった。
元々は明日の朝に予定していたのだが、そんなことも言っていられない。
「みゆも行くっ」
ふたりで登拝する予定だったから、みゆちゃんも参加することになった。
ところが。
車で三輪山の前にある大神神社の鳥居まで来たら、元気商店会長は急な下痢に襲われてしまった。
「おふたりで奉納してください」
下痢の状態では登拝は無理だから、俺とみゆちゃんのふたりで行くことになった。
どうも、このあたりで俺はなんか変だと気づいていた。
なにか、目に見えない力が働いているんじゃないか。
蛇神様なのか、白蛇様なのか、はたまた、大白星神様なのか。
もしかしたら、卑弥呼の力かもしれないな。
「考えても無駄だ。とにかく奉納するんだ」
チート財布を拾ってから、俺は人間ではどうしようもない力というものがあることを知った。
今、俺たちがここにいるのも、何か意味があることだろう。
「まぁ、これでも食べない?」
「なんだ、これは?」
「ポッチー。ほら、今日は11月11日だから、ポッチーの日なの」
ポッチーというのは昔からある人気のお菓子だ。
長細い棒にチョコがかかっている。
「これがあればひとりポッチーでも楽しくなる」
そんな由来があると聞いたことがある。
いつの間にか、11月11日はポッチーの日だと、決まっていてCMでも宣伝している。
「そういえば、今10時半くらいじゃない? ちょうど11時11分頃に奉納できるかもね」
そういうの、みゆちゃん好きらしい。
エンジェルナンバーだと言っていた。
俺の車はナンバーなど気にしたことがないが、三台目からみゆちゃんの提言でぞろ目にしてもらっている。
「きっと11時11分にちょうど三輪山のてっぺんにいるのよ」
「そうなのか?」
「絶対そうよ」
言い切るみゆちゃんだったが、どうも俺は違うんじゃないかと、なんとなく感じていた。




