第149話 俺はアニメ『アイドル大革命』の人気を実感した
アイドル大革命は、第2話が放送された。
この回は、完全に紗夜華だけの回。
始まりは佐那河内の谷あいの棚田のシーン。
この部分はドローンで撮影したのをアニメ化しているから、すごくリアルな風景だ。
そこでハープを奏でている紗夜華。
紗夜華は単にハープが好きなだけの女の子。
正直、見た目はぱっとしない。
そんな紗夜華に友達はアイなろを紹介した。
「紗夜華のハープきっと人気になるわ」
「無理無理。こんな綺麗な人だらけで」
アイドルになんてなれっこない。
だけど、ハープはもっと多くの人に聴いてほしい。
そんな気持ちでアイなろにPV登録した。
そこから始まるシンデレラストーリー。
初めての上京。
そして悠斗との出会い。
「なんだ、この悠斗って奴は。なんで、キラリと白い歯が光るんだ?」
完全に俺が白馬に乗った王子様扱いじゃないか。
俺の現実の姿は、みんな知っているぞ。
テレビで会見してしまっているからな。
どうみても、この悠斗は俺じゃない。
「ふふふ。そんなことないわ。アイドルを夢見る少女にとって悠斗はこう映るのよ」
「おいおい、美化しすぎだろう」
今回はみゆちゃんと観ている。
みゆちゃんは自分か登場しないと分かっているから、安心して観れると一緒に観るって言ってきた。
逆に俺は悠斗が登場するなんて聞いていないかった。
聞いていたら、ひとりで籠ってみたものを。
「ほら、始まるわ。『風に乗って』。いいわよね。この歌」
「あー、これは最高だな。あとは、悠斗がもう出てこないことだけ祈るぞ」
「あなたの元へ、風に乗って♪」
「もう覚えたのか?」
「みゆはね。どんな歌でも、一度聴くと歌えるの」
ほう、そんな特技があったのか。
知らなかったな。
アニメは紗夜華が初ライブをするシーンになっている。
スポットライトが当たる。
そこで終わった。
ふう。
シンプルなシンデレラストーリーだな。
前回のが複雑だったから、いいかもな。
しかしまぁ、なんか不思議だな。
みゆちゃんと一緒だと深夜でふたりきりでソファーの横にいても、変な気持ちにならない。
美波だと間違いなくしちゃっているな。
みゆちゃんのこと好きなのは間違いない。
だけど、エッチの対象としては見ていないのか?
我ながら不思議なことだ。
「どうしたの? 悠斗さん」
「あ、ごめん。考え事していた」
「どんなこと?」
「みゆちゃんのこと、かな」
「私のこと? どんなこと?」
「ああ。みゆちゃんは不思議な存在だってな」
「不思議?」
俺にとって、みゆちゃんがどんな存在なのか。
分からないながらも語りだした。
なぜか今日はスムーズに言葉が出てきた。
キャバクラの出会い、スーパーでのアイドル活動。
いろんなことがあった。
それらのとき、どんな気持ちになったのか。
「俺はみゆちゃんが好きなんだな。そう実感したんだ」
その言葉にみゆちゃんが反応した。
「えっ、悠斗さん。みゆのこと、好きなの?」
「ああ。ああ、好きだ」
「嘘」
本当にびっくりしている。
「それは好きさ。そうじゃなきゃ、こんなにいろんなことを一緒にしていないって」
「嬉しい」
たったそれだけだった。
好きって気持ちを伝える。
最近の俺は女性との仲の進展がやたらと早くなっている。
いい感じだと思ってからエッチな関係が直結しているようなものだ。
なぜか、それがみゆちゃんとのだと発動しない。
「好きって言ってもらっちゃった。うれしい」
「そうか」
この気持ちはなんなんだ?
好きって気持ちを伝えて、それを喜んでもらった。
それだけで俺は満足している。
もっとふたりの仲を進展させたいという気持ちが起きてこない。
じっくりとみゆちゃんとの仲は進めたい。
そんな気持ちが強くある。
その後も、俺とみゆちゃんのこれまであったことの話は続いた。
ふたりっきりの俺の部屋で。
手を握ることすらしないまま。
どうして、みゆちゃんとだとそうなるのか。
まぁ、焦らず解明していくこととするか。
みゆちゃんと仲はのんびり進んでいます。




