第148話 俺は1800年歌姫の由来を知った
「なんで1800年なんだ?」
俺はどうでもいい疑問を持ってしまった。
だいたい何年に ひとりというのは、もっと切りがいい数字を使うものだと思っていた。
1000年だったり4000年だったり。
どんどんとインフレになっている気はするがな。
「それがレビューした人に聞いてみたら、卑弥呼以来っていうんです」
誠人はアイドルスカウトと仲良くなっているらしい。
今回のアニメ『アイドル大革命』の参加アイドルをみつけるのにも手伝ってもらっているという。
「卑弥呼って邪馬台国の女王だろ」
「あ、あれです。超宇宙戦艦マグロスです」
「ああ」
超宇宙戦艦マグロスは、アイドルアニメの元祖と言われるアニメだ。
俺が生まれる前に作られたものなのに、いまだに新作が作られている。
売りは、マグロ型潜水艇が人型兵器に変形するマグロイド・ガジキニー。
途中の変形形態で、銅鐸型になる三段変形は画期的だった。
そして、もうひとつの売りがヒロインで歌姫の鱗・明里だ。
このヒロインが伝説の歌姫卑弥呼の転生した女性なのだ。
銀河大戦をチートの歌スキルで終わられてしまうのだ。
2世紀に小国が乱立して戦いに明け暮れていた古代日本を統一した伝説の女王卑弥呼。
このアニメの中では卑弥呼はただの女王ではない。
卑弥呼は歌姫で、統一したのもチート歌スキルを活用して、という設定だ。
「だから、卑弥呼以来ということで1800年にひとりの歌姫だそうです」
「しかし、このPV、本当は男なのか? 女なのか?」
「分かりません。本当に何も情報がないんです」
そんな話をしていたら、その歌姫の情報がひとつ追加された。
「おっ、アイドル大革命キーワードが入ったぞ」
「本当ですか?」
「ああ。アイドル大革命に参加してくれるのか」
「やりましたね。絶対この歌姫はアイドル大革命にパワーを与えてくれますよ」
「そうだな。なろうの作家達も原作を作ってくるに違いない」
「そうです。アニメ参加のひとりになりますね」
「決まりだな」
俺と誠人は、情報がほとんどないこのアイドルをアニメに登場させることを決めた。
☆ ☆ ☆
「よし、うまくいったな」
「どうかしら。ちゃんとアニメに選ばれる?」
「間違いないだろう。なんと言っても俺たちの子供だ」
「それもそうね」
「デビューはパロプロに任せることにした」
「もう、煌にパロプロの話はしてあるの?」
「ああ。アイなろ活動と両立を条件にしたら飲んだぞ」
「それはよかったわ。どうなるか楽しみね」
大手プロダクション、パロプロ、パロディ・プロダクションという冗談みたいなところだ。
冗談から生まれた「ランチ娘…」がスタートだからそんな名前がついている。
社長がアイドルオタで最強のプロモータだから、女性アイドルグループと言えばパロプロと言われるまでになっている。
今は、SBY58をはじめ都市名グルーブやその対抗の峠道シリーズの女性アイドルグループに人気が出ている。
パロプロは早くから所属アイドルのアイなろ活動を肯定的にとらえている。
ライバルのビーペックスとは真逆な対応だ。
「とにかく、我が子には芸能界のトップになってもらわなきゃいけないからな」
「そうよ。だから使える力はどんな手を使っても利用しないといけないわ」
ふたりは楽しそうに笑いあった。
アイドルアニメは深いらしい。




