第146話 俺はなんだかすごい報告を受けたらしい
「カンパニー登録、すごいことになっています」
誠人によると、新しく実装したカンパニー登録が絶好調らしい。
今から2週間前に出来たときの報告だと、開発費5000万円だった。
「そうなのか」
俺はまぁ、よかったな、とその時は答えた覚えがあるが、あっさり忘れていた。
その機能がカンパニー登録で、登録する会社から利用料をもらう仕組みになっているらしい。
「それですごいことってなんだ?」
「それが、カンパニー登録で入ってきた収入がこの1週間で1千万円を超えました」
「そうか」
それってすごいことなのか?
一千万円と言えば、1㎏でチート財布だと30秒だ。
1週間で30秒か…すごいことなのか?
「だって、まだサービス開始2週間ですよ。予想では1カ月で1億円を超える勢いですよ」
そういえば、『アイなろ』で収入1億円っていままでなかったな。
イベントをして、多少利益が出たものはあるが。
せいぜい1千万円どまりだった。
だから、『アイなろ』の収入は別に気にしていなかった。
必要ならチート財布から出せばいいや、と。
「しかし、なぜ1千万円にもなるんだ? もしかして、カンパニー登録というのはそんなに高額なのか?」
「いえ。月会費は3000円なので、そんなに高額ではないですね」
「じゃあ、なんで1千万円にもなるんだ?」
その仕組みを誠人は分かりやすく説明してくれた。
要は広告費の代わりにSPブーストっていう機能があるらしい。
1万円で1SPブーストが掛けられて、一時的にSPが上昇する。
それによって、すでにSPが高くなっているスペシャリストと組むことができる機能だ。
お金を使っても、優秀なスペシャリストと組みたい企業がブースト掛けまくっているらしい。
「要は課金制ね」
まぁ、ゲームでもそれができるんだから、ビジネスに使えるカンパニー登録なら付けちゃいけない機能ではないな。
無駄にブーストして、ちゃんとした対応しなければ、あっという間にSPはマイナスになるらしいからな。
ブーストするような会社は、対応もちゃんとしてくれるだろう。
「開発チームはこの成功を元に、さらに機能を上げたいと言ってきています」
「それって3億円じゃたりないのか?」
「第一期の開発費として、そのくらいを言われています」
なんだが、かかるお金が大きくなってきたようだ。
仕方ないな。
「それでは、開発費30億円まで認めよう」
「本当ですか?」
「それで、その開発ってなんか名前は付いていないのか?」
「タレントブック、だそうです」
タレント?
アイドルじゃなくて?
「タレントというのは、才能って意味の方で、フェイスブックが顔や本名でつながるのと同じように才能でつながるSNSだそうです」
「そうか」
なんだか、分からないものになってきたことだけは分かる。
才能のSNSだって?
意味が分からない。
「そっちも、もちろんカンパニー登録があって、絶対儲かるとシステム屋が騒いでます」
「そうか」
まぁ、『アイなろ』の開発連中はどうも優秀らしいから、作りたいなら作らせておこう。
失敗しても、2時間半チート財布と仲良くするだけだ。
「第一期完成予定が2カ月後です」
「そうか」
タレントブック。
これがフリーランスの働き方を大きく変えてしまうとは、この時は全然理解していなかった。
趣味からアマチュア、セミプロ、プロ、達人。
その流れを信頼ポイント、SPというもので作っていく。
そこに天才プログラマのAIが絡むと、とんでもないクリエータ集団を構築してしまう。
音楽から映像、文章、アイドル、モデル。
いままでだったら、プロダクションが複雑に利権を絡ませあっていたものが、作品を欲しいと感じる会社や個人とクリエーターの直接やりとりによって実現してしまう。
そこには、中間搾取をする組織もなければ、過去の実績でしか判断できない基準もない。
やりたいことを実現するシステムになっていくのだった。
なんだか、主人公が「そうか」って言っている間に、何やら怪しいサービスができあがっているような。




