第140話 俺はまた悠斗カンパニーの面接に参加したぞ
「私、DIYをやりたいんです。そして、もっと広めたいんです」
ずいぶんと元気な女子が悠斗カンパニーにやってきたな。
年齢は30歳というから俺と同じくらいだな。
だけど、アピールポイントは面白い。
DIY歴、18年だと。
「小学校の頃から、家の修理をしていました」
築52年の古民家で育った彼女はなんでも自分でやってしまうらしい。
趣味が高じて、今は大工さんの見習いをしている。
「しかし、大工さんの見習いなら、いくらでもDIYできるだろう」
「自分が思ったようなDIYをしたいんです。依頼通りじゃなくて」
ほう。
どんなDIYをするのか、興味あるな。
「合格! まずは猫島送りだな」
「あ、いいわね。猫島。古民家が一杯あって」
美咲さんも同意した。
今回の面接は、俺と美咲さん、そして翔が参加している。
翔は悠斗カンパニーの特別顧問になってもらった。
あの猫島は俺が引きこもった最後の日にユーチューバーを呼び寄せたことから、良質な猫動画が大量にアップされて人気がでてしまった。
今や猫アイドルが住み始めていたり、猫ユーチューバーが通っていたり。
もちろん観光客も一杯いるから、宿泊設備が足りないと言っていた。
まずは、そこで実力を発揮してもらおう。
「次の方」
「あ、はい。ぼ、ぼくがやりたいのは……」
「ん? やりたいのは?」
「3Dプリンタの可能性の追求です」
あれか。
立体CGで簡単に造形ができるってやつだな。
「僕、写真や絵からCGデータを作るのが好きなんです。友達からは匠だと呼ばれています」
ぽけっとからとりだした、食玩みたいなもの。
十二支の動物達か。
「これは友達の書いたイラストから作りました。ひとつ、CG制作2時間くらいです」
なんか面白いな。
イラストと立体は微妙に違う。
「少し形が違うようだが」
「それはイメージを立体にしているからです。イラストを書いた友人は、立体の方が思っていたような感じだと言っています」
ほう。
元のイラスト以上の立体を作るというのか。それも2時間くらいで。
「合格!」
おっ、先に翔が合格を出してしまった。
「もしかして。小説から立体を作ることはできないか?」
「あー、それ、面白そうですね。小説を書いた人と話せれば可能でしょう」
そんなこともできるのか?
不思議なやっちゃな。
「よし。まずは私の小説からお願いしたいな」
「もちろんです。喜んで」
「宇宙小説もあってな。宇宙船とかも出てくるんだ」
「楽しそうですね。立体化してみたいです」
なんか、盛り上がっているな。
「次」
何人かはパスだった。
単に自分がいかに優秀かを主張する人には用はない。
何ができるか、じゃなくて。
何をしたいのか、だ。
それがない奴は、パスだ。
「次」
「私の専門はお金です」
「ん? お金というと投資とか?」
「いえ、お金自体です」
「お金の有効活用とか?」
「いえ、お金自体です。お金の実態を探るために、いろんな人の話を聞きまくっています」
「ほう」
「だから、魔法の財布を持っている悠斗さんに興味があります」
「ほう。そうか」
「一緒にお金の謎を探求したいんです」
「それでは聞くぞ。今の段階でお前が考えるお金というものはどういうものか?」
「お金は感情です」
そう来たか。
それはチート財布を持ってから考えていることと一致するな。
お金が人の感情を動かす。
それがお金の本質というのか。
「合格!」
こいつは、ぜひ、俺が活用してみたい。
俺のチート財布とこいつのお金の理論。
組み合わせたら、何か起きるかもしれないしな。
またまた、ニッチなオタッキーな連中が集まってきた。
何をさせるのか、不明だが。




