第139話 俺は目をつけていた映像ペアに近づいてみた
「ピックルさんに、アイカムさんですよね」
参加者はそれぞれ名札を付けている。
映像関係は、グリーンの名札だ。
「はい。あっ、悠斗様!」
ビデオカメラマンのピックルが驚きの声をあげた。
知らない人が見たらビデオカメラマンではなくアイドルと勘違いしそうな美少女だ。
ビデオ編集のアイカムは同じ顔をした美少年。
「もしかして、双子?」
「そうなんです。ふたりでアイドル映像創りを始めまして」
「運営のトップが注目していたぞ。いい映像を創るって」
「うわー、光栄です。まだ初心者なのに」
「初心者の割にSPが上がっているじゃないか。すごいことなんだぞ」
「そうなんですよね。どうしてSPが上がるか不思議なんです」
あ、このふたりSPの仕組みを理解していないらしい。
まだ参加したばかりだから仕方ないよな。
「それは、君たちの創ったPVを見て映像の良さを感じたファンが君たちに『やるなぁー』を押しているんだろう」
「そんなんでSPって上がるんですか?」
「少し押されたくらいじゃあまり上がらない。たくさん押されているのと、運営トップのようなSPが高い人が押したりするから上がるんだ」
「そうなんだー。やっとわかった」
SPの仕組みは俺でも詳しくは理解できない。
まぁ、AIを活用してやっているとか言っていたからな。
あの天才プログラマーが。
「僕が作るSPは、隠れた才能を見逃さない作りになっているんだよー」
そう自慢するだけあるな。
この二人は確かに隠れた才能がSPに現れているな。
「そのうち、一緒に仕事をしよう」
「本当ですか? 底辺アイドルだったみゆちゃんを一躍有名にした悠斗様と一緒に仕事できるなんて。夢のようです」
その、悠斗様はやめようよ。
なんかこそばゆいぞ。
「実はPVを作ってもらいたいアイドルはもう決まっているんだが」
「誰ですか? 今日来ているんですか?」
「いや、今日はいない」
「残念です。もういるなら、挨拶をしたかったのですが」
「それなら明日、一緒にいくか?」
「行きます! あ、どこに、でしょうか?」
「四国の佐那河内村だ」
「あ、紗夜華さん!」
「ご名答!」
今、紗夜華のデビューPVを密かに制作準備をしている。
東京に住んでいる原作者とも打ち合わせが終わり、紗夜華の魅力をPVにどう表現するか。
そこまでは決まっていた。
後は、それを実際に撮影し編集を経てPVにすることができるスペシャリストが必要だったのだ。
白羽の矢が立ったのが、このふたりという訳だ。
「よし、来週撮影するぞ。ついでにみゆちゃんのも撮影してみてくれ」
「みゆちゃんも参加するんですね。人気アイドルのみゆちゃん」
佐那河内は紗夜華が住んでいる場所だから、というのがひとつ。
だけど、それだけじゃない。
なぜか俺もみゆちゃんも、佐那河内が気に入っているのだ。
だから、みゆちゃんのPVも紗夜華と一緒に撮影することにしたのだ。
佐那河内で、この双子の撮影・編集か。
なかなかいいPVが作れそうだ。




