第137話 俺はゴーストタウン商店街の続報を聞いた
「まだまだ少しずつですが、変化が起きてきていまして」
電話で報告してきたのは、陽太。
高齢者ゲーム普及協会会長だ。
俺は一度だけのつもりで奈良県の桜井駅の商店街でイベントを指示した。
しかし、陽太はそのまま、桜井市に残って高齢者ゲーム普及活動を進めているらしい。
「いやぁ、商店会長と気があってしまって。すごく熱い人だから、一緒に高齢者ゲーム普及活動をしています」
なんと、寝泊まりは商店会長のとこでしているらしい。
東京に出て行った兄弟の部屋があって、そこを自由に使わせてもらえている。
そう言っていた。
「面白いな。どうだ? 状況は」
「それが、子供達がゲーム目当てに学校帰りに来てくれて」
「それはいいな」
「高齢者の常連も増えているんですよ。おかげで空き店舗をもうひとつ、使わせてもらえることになりまして」
おお、ちゃんと、広がっているじゃないか。
少しは商店街の人たちのためになっているのかな。
「商店の人もときどき、ゲームに参加しているんですよ。常連さんと仲良くなって、商店街で買い物をする人も少しはいるって言ってました」
「それはいいな」
こういう話を聞くとなんだか、ほっこりするぞ。
ギャンブルで何千万円を賭けているときよりも、うまくいって欲しいと思うな。
もしかしたら、ギャンブル運がないのは、ギャンブルは俺がやりたいことではないから、かもしれないな。
その証拠に、あのギャンブル女はしっかりと勝っているし。
今はちゃんと仕事をして、趣味程度にギャンブルをしているが、給料以上にギャンブルで稼いでいるという。
「要はやりたいことじゃないと、白蛇さんのパワーは使えない、ということかもな」
だから、アイなろにしても、アニメにしても、商店街の話にしても。
ちゃんと、うまく行っているしな。
「そうそう。来月は王子アイドルイベントをやるんですよ」
「おお、あいつがとうとう動くのか」
「そうなんです。すでに分析が終わったと言ってました」
王子アイドル。
陽太と一緒に悠斗カンパニーに入社した男のアイデア。
アイなろで40代、50代の女性に人気のある男性アイドルを「王子アイドル」と名付けることにしたのだ。
不思議なことに、分析してみると、たしかに王子ぽいアイドルがその層に人気があることが分かった。
「だから、王子ファッションを徹底的に研究しているみたいです。王子アイドルが王子ファッションの写真に変えると、PVの視聴回数が伸びるって言ってました」
「そこまで進んでいるんだな」
「ええ、それでリアルな活動として、コラボイベントの話になったんです。今度は母子ペアで商店街に引っ張り込みますよ」
「それは面白そうだ」
間違いなく、俺はこういう話の方が楽しくできる。
ギャンブルは勝とうが、負けようが、それほど楽しいと言えるもんじゃないな。
「そういえば、悠斗さん。白蛇が好きだって言ってましたよね」
「ああ。俺の幸運のシンボルだ。白蛇さんは」
「それなら、次にこっちに来た時、お勧めの場所があるんですよ」
「ん? お勧めの場所?」
「三輪山って言って、神様の山って呼ばれている所があるんです」
「ほう」
「そこの神様は、巳さんって呼ばれていて、白蛇の化身だと言われているんですよ」
なんと。
そんな山があるのか。
それは、一度、お参りにいかないと駄目だな。
そういえば、お酒も奉納していないじゃないか。
まずは石神井の方に奉納しないとな。
「きっと、この地に僕が来ているのも、白蛇さんのつながりかもしれませんね」
「そうかもな」
近いうちに行ってみるか。
高齢者ゲーム普及の現場も見たいしな。
そうだ。
みゆちゃんも誘って行ってみよう。
次のイベントの時がいいかな。
俺はいろいろと想像して楽しくなってきたぞ。
やっと白蛇さんのお酒奉納を思い出したらしい。




