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第135話 俺はギャンブルの奥深さを知ってしまった

「悠斗さん。見つけましたよ」

「何をだ」

「あいつですよ。悠斗さんの金を持ち逃げしたあいつです」


あー、思い出した。

中国行きが決定したあいつだな。


「それじゃ、中国の塀が高くて逃げられないあの場所に送りこむのか?」

「それがですね。思っていたのと状況が違いましてね」


俺は闇金親父とギャンブル姉ちゃんに会って話を聞くことにした。


「これがその金です」


闇金親父がテーブルに1千万円束を3つ置いた。


「なによ。借金は返すって言ってるじゃないの。利子をつけて1千万円返すわよ」

「悠斗さんにはどうするんだ?」

「借りた500万円にこっちも利子をつけて1千万円、ちゃんと返すわよ」

「こんなことを言っているんですが、どうしましょう?」


これは予想外だな。

てっきり、500万円くらいギャンブルであっという間にすってしまうと思っていた。


「この3千万円、どうしたのか?」

「あれから、運が急によくなってガンガン当たるようになったのよ」

「本当かよ」


3千万円が実際にあるとこを見ると、嘘ではないらしい。


「俺は一度渡した金を回収する気はないぞ」

「じゃあ、どうしたらいいのよ」

「そうだな」


なんだか、不思議な気がしてきた。

もしかしたら、俺が渡した金には白蛇さんのパワーが宿っているのかもしれないな。


「お前の運を試してみないか?」

「どういうこと?」

「お前がもってきた3千万円がここにある。さらに俺の3千万円をプラスする」

「6千万円ね」

「そうだ。この金を菊花賞で倍にしてみないか?」

「ええーー」


もし、このギャンブルに失敗すれば、彼女は無一文になる。

いや、借金はそのまま残っているから、マイナスだ。


「もし、倍にできたら。俺は5千万円回収する」

「ちょっと。出したお金は回収しないんじゃないの?」

「いや、これはギャンブルだ。俺はお前に賭けているだけだ」

「そういうことね」


なんか、にゃっと笑ったぞ。


「私の今のギャンブル運にのりたいってことね」

「その通りだ」

「あとは、闇金さんね。どうする?」

「おう。のってやるよ。ただしな。倍以上になったら、1/3だ」

「ええー。それって取りすぎじゃない?」

「何言ってやがるんだ。持ち逃げをしたくせにな。金を回収して中国送りにもできるんだぞ」

「わかったわよ、それでいいわよ」

「それなら、俺も1/3にしよう」

「それがいいわね。菊花賞の配当金を3人で1/3づつ分けるということね」

「そうだ」


まぁ、俺は3千万円がなくなっても、痛くもかゆくもないが。

ふたりにとって、大きい金だろう。


特にギャンブル姉ちゃんにとって、負けたら中国行きというペナルティーもある。


「それじゃ勝負は明日ね。京都競馬場。負けられないわね」

「負けたら、中国行きだからな」

「わかってるわよ」


なんか俺までも、ドキドキしてきたぞ。

久しぶりだな、この感覚。


お金のことでドキドキしたのは、チート財布を拾ってからはなかったな。


 ☆   ☆   ☆


「おい。ずいぶんな掛け方しているじゃないか」

「もちろんよ。馬番12を中心に4番と10番を組み合わせた予想よ」

「じゃあ、12番がこけたら終わりじゃないか」

「間違いなく12番は来るわ。今の私は神懸っているのよ」


うーん、すごいな。

一番人気じゃない馬に全賭けかよ。


たしかオッズでは馬番12は人気6位だというぞ。


「もう6千万円、全部買ってしまったわ。単勝3千万円、馬連が2通りでそれぞれ1千5百万円。もう、後戻りできないわ」

「そうだな」

「絶対勝つわよ。私のギャンブラー人生を賭けて」

「そうだな」

「そうしてくれよ。俺だってお前が負けたら困るんだよ」

「なにいってるのよ。単にギャンブル女を見つけて中国送りにしたって、上に報告するだけでしょう」

「それがな。3千万円の話をしてしまっていてな」


あちゃ。もし、負けたら、闇金親父もやばそうだな。

俺は痛くもかゆくもないが。


「とにかく、12番。がんばってよ」

「そうだな」


ファンファーレの演奏が始まった。

ゲートがオープンした。


 ☆   ☆   ☆


「どう? 私の予想通りだったわ」

「そうだな」

「すげーな。5億7千万円って、どういうことだ」

「そのくらいにはなるわよ。10倍くらいは着くわ。さすがに大金賭けたから、オッズは下がってしまったけど」


しかし、競馬というのはすごいな。

5億7千万円という高額配当であっても、窓口で受け渡すものなんだな。


57kgもあるから、台車は貸してくれたがな。


「それぞれ1億9千万円が取り分だ」

「そうよ。感謝しなさいよ。私に」

「そうだな」

「悠斗さんはいいの。私に一世一代のギャンブルをやらせてくれたから」

「なんだ。俺と扱いが違うな」

「あんたは、単に話にのっただけじゃない。だから私に感謝しなさいよ」

「そうだな」

「そうだなって。なんで、感謝しなきゃいけないんだよ。俺だって生きた心地しなかったんだから」


まぁ、ギャンブルの面白さを少しは感じることができたな。

俺には向かないものだということも。


俺だったら、単勝で一番人気の馬を買いそうだな。

あの状態ではな。


どんな状態であっても、自分の勘を信じる。

それがなければギャンブラーにはなれそうもないな。


「しかし、気をつけろよ。そろそろ、お前のキャンブル運が消えかかっている気がするぞ」

「分かっているわよ。今回のだって、その前までのだって。悠斗さんの運を借りていただけだって」

「そうなのか」

「だって、こんなに私が勝つ訳ないもの。私の運なんてしょぼいものよ」


そうか。

分かっていたのか。


「それなら、ギャンブルから足を洗えるのか?」

「それは別。これからは遊び程度にしておくわ」


本当だろうか。

まぁ、それは彼女の人生だからな。


俺は単に試してみたかっただけだ。

俺には、無限の収入だけでなく、運もあるのかどうか。


「それでは、それぞれ別の道を歩いていこう」

「そうね。もう会うこともないかもしれないけど」

「いや、俺は悠斗さんにまた会いたいぞ。お前みたいな困った借金女を紹介しないといけないしな」


不思議な縁だが、闇金親父とはまた会うことになるだろう。


こっちのギャンブル女はどうだろう。

まぁ、それは神のみぞ知るってことだな。


まさかのギャンブル女の再登場。

それも大金を持って。


チート財布から出てくるお金、不思議な効果があるのかもしれない。


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