第133話 俺は適当に新しい機能に了解を与えた
「オーナー。カンパニー登録を実装したいんですが」
『アイなろ』運営総責任者の誠人が提案をしてきた。
カンパニー登録というのは、スペシャリスト登録の一種だけど『アイなろ』では珍しく有料サービスにするらしい。
元々はアイドルのPVを作るスペシャリストのクオリティが驚くほど上がってきたのが発端だ。
趣味でやっている人。
アマチュアな人。
セミプロな人。
それを職業にしているプロな人。
プロのうちでも実績が半端ない達人級な人。
いろんなレベルの人が登録しているのがスペシャリスト登録。
そのスペシャリストに依頼ができるのがカンパニー登録。
なぜ、そんなことが必要になったのかというと。
今、アイドルの間ではやっている動画がある。
愛用品動画。
アイドルが使って良いと思った商品を紹介する動画。
これが人気が出てきていて、商品の会社から制作依頼が入ったりしている。
アイドルのプロフィールに愛用品という欄があって、そこに使っている愛用品を書き込んでいる。
アイドルのPVを見て、自社の商品が愛用品だと分かると、愛用品動画の依頼が来たりする。
いまや、アイドルに取って割の良い仕事になってきている。
その力の元が、アイドルのファンやアイドルPVを作るスペシャリスト達。
そこに目を付けた会社が直接スペシャリストに依頼をかけてきた。
しかし、そういうことに慣れていない人たちでもある。
いろいろとトラブルが起きて問題になってきている。
「だから、商品を広めて欲しい企業も登録させてしまおうというんです」
この提案の発案者は、『アイなろ』のメインプログラマ。
「そんな『アイなろ』の外で起きていることの対応なんてやめておけ。中に取り込めばすむこと」
その一言で、カンパニー登録の提案が上がってきた。
『アイなろ』の中では、SPという概念で物事が進んでいく。
SPは信頼ポイントと言って、スペシャリストに仕事を頼むときの基準になっている。
SPが高い方がもちろん仕事の依頼が増える。
ただし、SPが高いと料金等が上がるから、人気があって支援者のエンジェルが付いているアイドルしか使えない。
だから、SPがそれほど高くなくて、依頼する内容をこなせる相手を探すのだ。
これは、商品を広げて欲しい会社も同じことがいえる。
ただ、カンパニー登録がないから、依頼した結果等は参加したスペシャリストのSPには反映しない。
そのことがトラブルが増える原因になっている。
それというのは、SPはトラブルが起きると、頼んだ方と受けた方、両方がSPが落ちる仕組みになっている。
ケンカ両成敗って考え方。
だから、アイドルとスペシャリストが気持ちよく仕事をするのがSPをあげていく基本になる。
アイなろの中では当然SPの関係でトラブルが起きづらくなる。
トラブったとしても、お互い話し合ってちゃんと収めること。
それができないと、アイドルだろうがスペシャリストだろうが、SPが下がってしまう。
「だから、カンパニー登録ができるようにしたいんですよ」
「そうか」
「でも、開発費がかかるみたいでして。それも、それなりに」
通常のバージョンアップは毎月の予算の中でやる仕組みができあがっている。
わざわざ提案してきたということは、それでは足りないということだろう。
「わかった。開発費用3億円までなら自由に取り仕切っていいぞ」
「さすがに、そんなには。予定では3000万円だそうです」
まぁ、開発なんて当初の予算なんてあてにならないからな。
10倍も用意しておけば、さすがに足りないとはならないだろう。
「わかった。3億円の資金は口座に入れておくから、あとは誠人がうまくやってくれ」
「わかりました。最高のを短期間で作ってみます!」
最近は誠人も言うようになったな。
とにかく開発チームはやることが速いからな。
誠人は安心して大きな口をたたけるんだろう。
いいことだね。
やっと「アイなろ」が収入につながる部分ができました。
いままでは開発費、運営費、すべてチート財布から出ていたんですね。笑
この機能実装がどう影響するのか。




