第130話 俺は商店街連合会の希望になれるか
「お願いです。助けてください」
「おう、分かった」
いかん。
話を聞く前に答えてしまった。
助けて、って言葉は俺にとってヤバイ言葉らしい。
「えっ、いいんですか?」
「それで、何を困っているのだ?」
要は全国の商店街に客がこないってことだな。
それで、アイなろの協力か。
「あー。それは無駄だぞ」
「どういうことでしょう」
「客は来るが、商店で買い物などしないぞ」
これは、トライアイドルで試してみて分かったこと。
人集めはできるが、目的がアイドルを観にきているだけだ。
古びた商店街で買い物なんかしない。
最初のスーパーはあの後、いろんな工夫をして学生をお客さんにすること成功した。
しかし、ほとんどの他の店は、アイドルが来た日しかお客さんが増えていない。
「そうなんですか。アイドルの力でも商店街に力を取り戻すことはできないんですか」
あー、肩を落としてしまったな。
助けると言いながら、これじゃ駄目だな。
「要はアイドルと商店街の融合が必要なんだ」
「えっ、どういうことですか?」
あー。いかん。
こういうすがるような眼で見られると、なんだか、もっともらしいことを言いたくなる。
「アイドルはお客さんが足を運ぶきっかけは作れる」
「はい」
「しかし、その後はアイドルではなく商店街の力だ」
「はぁ」
そう。
商店街に来たくなる理由は、アイドルじゃ駄目だ。
商店街に魅力がないといけない。
「どこかひとつ、ダメダメな商店街を紹介してくれないか。ただし、ひとりはやる気があるところがいいな」
「あります! ちょうどいいとこが」
奈良県の桜井市。
古墳で有名な所らしいが、観光客もほとんどこないし、駅前からしてゴーストタウンになっているところ。
「正直言って、復興は無理かなと思うんですが、商店会長が30歳の元気な奴でして」
「おお。俺と同じくらいだな。それはいいかもな」
☆ ☆ ☆
俺は桜井駅前商店街に来ている。
2トントラックに必要な機材を揃えてある。
まずはそれを元気な商店会長らへ自慢した。
「すごい設備ですね」
「だろう? 最先端のゲーム設備を用意したからな」
「しかし、ゲームですか? 子供は少ないですよ」
「当然だ。だいたい子供では商店街のお客さんにならないだろう」
「そうですが」
俺が用意したのは、ゲーム設備だけじゃない。
高齢者ゲーム普及協会の会長と、ゲーム好きアイドル5人だ。
「すると、高齢者にゲームをやらせるんですか?」
「もちろんだ」
「だけど、ゲームの為に来てくれますかね」
それは分からない。
しかし、チラシは全部で10万枚配布した。
それも、肉フェスで知り合ったイベント集客のプロの作ったチラシだ。
インパクトはあるだろう。
「悠斗さん。わくわくしますね」
「そうだな。陽太」
悠斗カンパニーの幹部社員にして、高齢者ゲーム普及協会の理事長が陽太。
もっとも、まだ協会は一般社団法人の申請中だから、任意団体でしかないが。
陽太が企画した高齢者を集める仕組み、それが子供を出汁にすること。
「子供に教わるゲームの楽しさ」
そんなアイデアだ。
子供を集めるためには、お父さんを狙って、お父さんウケの良さそうなアイドルを用意する。
それもゲーム好きなアイドル。
地方ではアイドルイベントは少ないから、それだけで行ってみようかなとなる。
お父さんがアイドルイベントを観ているときに、子供はゲームスペースで遊んでもらう。
今、子供の間に流行っているゲームで、それほど難易度が高くないものを用意した。
基本はタブレット端末で出来るゲームだ。
「でも、本当にうまくいくんですかね」
「アイドル集客においては問題はない」
「それは心強いです」
「あとは、やってみないと分からないがな」
陽太と俺と元気商店会長。
この3人が中心になって、イベントの準備を始めた。
早くも悠斗カンパニーが動き出すみたいです。




