第129話 俺は離島に御殿を建てることにした
「それでどこにどんな家を建てたいんですか?」
「それがな。まだ決まっていないのだ」
俺がきっぱりと言うと、ダンディな建築屋はずっこけた。
「えっと、すごい高級な家を建てたいと聞いてきたんですが」
「その通りだ。豪邸だ。それだけは間違いない」
ダンディ建築屋は、国際的な賞をなんども取っている有名建築家らしい。
依頼したがるお金持ちが多く、話を聞いてもらうだけでも大変だという。
もっとも俺は、元パラコンシェルジュにして渋川社長に電話した。
「別荘を建てるぞ。東京じゃないなら、でっかいのがいい」
そう宣言したのだ。
そして、渋川社長が派遣して来たのが彼だ。
「それでは、私の建築した家の写真を見てもらえますか?」
「いいぞ」
「その中で、いいな、と思うものを選んでください」
確かにな。
俺の頭のなかには、豪邸という言葉しかない。
一番近いイメージは、宮古島のリゾート邸宅か。
あれが俺がリアルに知っている豪邸だ。
「これがいいな」
たしかに、どれも豪邸だ。
広さがだいたい100坪以上。
最大で250坪程度。
建築費は坪150万円から250万円といったとこか。
「それは、すごく評判がいい豪邸です。参考にする施主さんも多いんです」
水を演出した邸宅と名付けられたシリーズだ。
庭と中庭には、水を張った浅いゾーンがある。
美術館とかにありそうなものだ。
「特にこの邸宅のこのあたりは、地下1階分の水を張っていまして。地下の部屋から水の部分が見えます」
うん、水族館のようだ。
ここで魚を飼ったら、まさに水族館に見えるな。
「熱帯魚が好きな人が興味を示すんです。面白いでしょう?」
「ああ。俺は気に入った。ただ、こっちの天空邸宅もいいな」
これは、展望を売りにした邸宅で、高いところに建てることがポイントだ。
「それで予算はどのくらいですか?」
「坪単価300万円くらいでどうだ?」
「そんなに!」
「あと建物面積は400坪程度を考えている」
「すると…12億円!」
そうなるか。
思ったより、いかないな。
「そうだ。忘れていた。ヘリポートが必要だ」
「ヘリポートですか」
「あと、メガヨットが停泊できる桟橋もな」
「桟橋ですか?」
そうだ。
ヘリとメガヨットは、山をくりぬいたところに収納したいな。
なんだかサンダーバッドの秘密基地みたいになるな。
「メガヨットとヘリコプター用の収納スペースもいるぞ」
「そうすると、四角い建物のハンガーですね」
「できれば、そういうのじゃなくて、山の中に収納するほうがいいが」
「御冗談ですよね」
冗談にされてしまった。
まぁ、そのあたりは任せよう。
トゥルルー♪
おっ、渋川社長から連絡だ。
みつかったのか?
「ありました。瀬戸内海の無人島です」
「それはいいな」
「広さが5万坪。平坦地もありますし、ビーチもあります」
「それでいくらだ」
「5億円程度で交渉しています」
「よし、買いだ」
最近、主人公はやりたいことを
迷わなくなってきたみたい。




