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第124話 俺はキャスティング会社と接触した

「こんにちは。神山キャスティング代表取締役の神山です」


俺はテレビ番組にアイドルを出させてくれるという男と会っている。


場所は個室があるカフェだ。


同席しているのは、狼獣人アイドルの美尾ちゃん。

そして美波と美咲さんだ。


「悠斗だ。よろしく頼む」


ちょっと意外だった。

テレビ番組にアイドルを紹介するというから、いかにも業界人が来るのだと思っていた。


「ザギンでシースー食べながら話そうか」


そんなことを言いそうなイメージだ。

しかし、実際はできるビジネスマンみたいな30代半ばの男だ。


なんかイメージが違うぞ。


「えっと、この美尾ちゃんなんだが」

「コスプレアイドルですか?」

「いや、コスプレではなく、狼獣人アイドルだ」


コスプレだと安っぽくなる。

あくまでも本物の狼獣人としてアピールする。

それが美尾の基本戦略だ。


そもそも、アニメ『アイドル革命』の番宣に美尾ちゃんを使うことになったのは消去法だった。


「まず、紗夜華はトップシークレットだから、出せないな」

「じゃあ、みゆちゅんはどう?」

「アイドルとしてデビューして人気がでなかったからな。いまいちインパクトに欠けるな」

「それなら、美尾ちゃんね。決定!」


美波に気楽に相談したら、気楽に決定されてしまった。


そういう訳で美尾ちゃんがここにいるのだ。


「あー、そういう設定ということですね」

「そう理解してもらっても構わない」


あまりに本物だと主張すると中二病だと思われてしまうだろうな。


「特技はなんでしょう?」

「身体を動かすこと全般だ」

「それはいいですね」

「身体を動かすことは任せてください」


美尾ちゃんもしっかりとアピールしている。


美尾は狼獣人を名乗っているだけあって、身体能力抜群だ。

走らせても、跳ばせても、アスリート並みのポテンシャルを発揮する。


「外ロケのときに運動能力を発揮すればインパクトが得られますね」


しかし、この神山という男。

芸能界の手配師らしさがない。


ただのビジネスマンだな、受け応えも。


「すまんが、聞きたいことがある」

「なんでしょう?」

「キャスティング会社というのは手配師の会社じゃないのか?」


一瞬、間があった。

そして、神山社長が笑い始めた。


「ははは。面白いことを言いますね」

「そうか?」

「手配師ですか。そうとも言えますね」

「だが、神山社長は手配師らしくないぞ」

「私どもはテレビ、映画関係のキャスティングのお手伝いをしている会社です」

「それは手配師とは違うのか?」


芸能界の裏の裏まで知り尽くした手配師。

そんなイメージを持っていたが、違うらしい。


「ただのコーディネータですよ。ぴったりなキャスティングを番組側とタレント側に提案しています」


やっぱりイメージと違っていた。

困ったな、せっかく愛人と秘書の美人ふたりを連れてきた意味がない。


「困ったな」

「どうしてんですか?」

「これは俺もミスだ」

「どういうことでしょう?」


まぁ、確認だけでもしておこうか。


「ちなみにだが。饅頭は好きか?」

「饅頭ですか? 好きですけど」


うーん。話しが伝わっている感じがしない。


「ここに、手土産の饅頭箱があるのだが」


もちろん、下に札束を敷き詰めてある奴だ。


「はぁ。饅頭ですか」

「欲しいか?」

「ええ。でも、なんで饅頭なんですか?」


やっぱり伝わっていないな。

こういうときの美学として饅頭と決まっているんだ。

仮にゴディ〇のチョコレートだと恰好が付かないだろう。


「形式美だ。手配師とお近づきになるときのな」

「はぁ」

「では、上の饅頭だけでも、もらってくれるか?」

「上の饅頭って。下には……」


あ、やっと伝わったようだ。


「ちょっ、ちょっと、まさか」

「どうだ。饅頭欲しいか?」

「えっと、もらっていいなら、欲しいんですが」

「では、もらってくれ」


さっと、饅頭の箱を自分の方にもってきた。

そして、中身を確認している。


「い、いいんですか?」

「もちろんだ。ただの饅頭だからな」

「で、では。遠慮なく」

「だが、この美尾ちゃんをよろしく頼む」

「分かりました! 任せてください」


うん。

やる気になってくれたようだ。

ここはもうひと押ししておこうか。


「お友達に饅頭好きな人はいるかな?」

「それはどういう?」

「実はあと3箱持ってきているんだが」

「!」

「力のある友達に渡してくれまいか」


ずいぶん驚いた顔をしているな。

おっ、覚悟をしたようだ。


しっかりと目を見ながら、饅頭の箱を3つ。

彼の方へと押し出す。


「これでよしなに」


ちゃんとウケてくれるのか。

ちゃんと伝わってくれよ。


「おぬしも、悪よのぉ~」


よし、完璧だ。

きっと、うまくいくだろう。


越後屋こっご、成功したらしい。


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