第108話 俺は猫島をもっと考えてみた
翌日の朝。
「今日は土曜日だから、お客さんが来るわよ」
民泊&古民家カフェ『猫屋敷』の主になった美代子さんが言った。
猫島は平日だと、観光客はそれほど来ない。
たまに猫を撮影するカメラマンが来たりする程度。
だけど、土曜から日曜にかけて泊まりで来る観光客がいるらしい。
「今日は予約で3組7人よ」
民泊施設は、個室が全部で3つあり、あとはドミトリーの大部屋がある。
今回のお客さんは個室の2組と大部屋のお客さんだ。
他にも土日は宿泊しない観光客もいるらしく、カフェもそこそこ繁盛しているらしい。
「だけど、ひとりじゃ大変だろう」
「近所の御婆さん達が手伝ってくれるの」
うん。とりあえずは美代子さん。
島の人の中に溶け込んでいるようだな。
猫好きというので、受け入れやすいのかもしれないしな。
「それに、島に猫好きな若い人が来るのは島の人にとって嬉しいことみたいなの」
たしかに、このあたりの離島だと猫がいないと、観光客など来ない。
高齢者だけの島もいくつかある。
それよりは、猫を見にくるとは言え観光客が来るのはいいことなのだろう。
ただ、美代子さんは、民泊&カフェで生計を立てている訳ではなく、収入の中心はライターだという。
「猫好きがもっと集まってくれるようになったら、こっち一本でいけるようになるかしら」
そうか。
猫好きが集まらないのが問題なのか。
もっと、この猫島を有名にしないとな。
こういうときは、やっぱり、あれか。
ユーチューブ。
ユーチューブで猫の魅力を発信すればいいんじゃないか。
「あ。誠人? ちょっとさ。猫が好きなユーチューバーって知らない?」
面白いから、猫島をもう少し宣伝してみるとするか。
☆ ☆ ☆
「あとは、この木とこの木の間を巾の狭い板で結べばいいんですね」
今、俺は猫の林と名付けた場所にいて、キャットウォークを作っている。
キャットウォークとは、猫が歩く路といった感じか。
高松から木の板やその他資材を手配して、さらに大工仕事ができる職人も2人ほど派遣してもらった。
「しかし、この林に猫が来るんですかね」
「今はあんまり来ないな」
猫は本当に気まぐれだ。
自分の居たいとこにいる。
だけど、ひとつだけ行動をコントロールする方法がある。
餌だ。
おいしい餌のあるところに猫は寄ってくる。
だから、俺が今作っているキャットウォークのあちこちに、餌が置ける場所を用意してある。
「できました」
全長50mに渡る長いキャットウォークが完成した。
高さは1mから6mにも渡る立体構造だ。
「どれどれ、試してみよう」
餌場に特別な鶏肉を焼いたものを置いてみる。
普段はキャットフードを上げているらしいが、肉や魚を上げると猫は喜ぶらしいからな。
しばらくは、静かにして猫が集まってくるのを待つとしよう。
三毛猫がやってきた。
おっ、木を登りはじめたぞ。
何もない木をうまく登るものだな。
餌台で食べはじめたな。
うん、やっぱり鶏肉は好きらしいな。
キャットフードもいいが、肉も好きなんだろう。
元々猫は肉食動物のはずだ。
食べ終わったな。
キャットウォークを歩いて……くれない?
木をそのまま降りてしまった。
ちぇっ。
今はそういうことをしたい気持ちじゃないらしいな。
次の猫、おっ、いろいろと来た全部で5匹。
それぞれ木を登っているな。
なんでせっかく作った階段を登らないのか?
そっちの方が登りやすいだろうに。
餌を食べ終わったら…なぜ、みんな降りてしまう?
せっかく作ったキャットウォークはどの猫も歩いてくれないな。
「なんで、駄目なんだ?」
1日中、猫を観察していたが、とにかくキャットウォークを歩く猫がいない。
だけど、猫を見ていると面白い。
それぞれ性格が違うんだよな、猫って。
ぼーっと見ているだけで癒されるな。
「悠斗さん!」
呼びかけられて振り向くと、ビデオカメラを持った女の子がいた。
「えっと、誰だっけ?」
「あ、初めまして。私、アイドル兼、猫専門ユーチューバーの峰子って言います」
みねこ、あ、名前にねこが入っているのか。
それよりもあれだな。
そのナイスバディな感覚は、峰〇二子ぽいな。
もちろん、ボンキュボンで巨乳だな。
「いいとこに来た。なんで、猫たちはキャットウォークを歩いてくれないんだ?」
「あー、あれですね。駄目ですよ、これじゃ。もっと巾は狭くしないと」
どうも、猫が好む巾があるらしいのだ。
俺と峰子と大工さん達は、キャットウォークの改造をした。
その結果、猫が集まってきて、キャットウォークを歩き出したときは、感動したんだ。
猫と峰子。
どっちと戯れたいのかな。




