第107話 俺は不思議な現象を目の当たりにした
猫島はいい。
とにかく猫は見ているだけで癒される。
猫というは個性があって、それぞれが違う。
やたらと食欲があるデブ猫。
美食家の白猫。
すぐにケンカするトラ猫。
1日猫島にいて、猫を見ているとそれぞれの猫の性格が分かってくる。
今、俺の足元にすり寄っているのは、食べるの大好きなブチ猫。
さっき、餌をあげたのにもう腹が減ったと見える。
にゃ~あ、と甘えた声を出している。
「ほら食え」
魚の焼いたのを投げてやると、すごい勢いで食べる。
おっといけない、時間だ。
島長さんに呼ばれていたのを思い出した。
「こんにちは、島長さん。遊びに来ました」
「おおー、悠斗さん。よく来てくれました」
島長さんの家には、美代子さんも来ている。
なにやら、相談事があると言っていた。
「実は悠斗さんにお願いがあって」
「どんなことか?」
「実は困っていることがありまして」
おおっ、困りごと。
すると、人助けができるということか。
「困りごとか」
「はい。すでに悠斗さんは島の猫のことでいろいろと助けてもらっていていいづらいんですが」
島の猫のことというのは、猫餌のことだ。
300匹ほどいるらしく、餌代が大変だというので、毎月20万円ほど援助している。
美代子さんを通して依頼があったから、1年分240万円を渡してある。
「それは気にするな。困りごとは何だ?」
「実は神社のことなんですが」
島にはいくつか神社がある。
その中でも一番大きな神社が、天一神社だという。
「その天一神社がボロボロになって改修しないと崩れそうでして」
前に改修をしたのが60年前。
造りはしっかりとした良い神社だが木造のため、傷みが激しい。
「昔なら島民もたくさんいて、漁業も盛んだったので寄付も集まったんですが」
しかし今は、島民が50人しかおらず、ほとんどは高齢者で年金生活者だ。
「とても、改修できるお金が集まらないで改修できずにいまして」
なんか、言いづらそうだな。
島の人は真面目だからな。
島長さんは50歳でがっちりした身体の男だ。
いかにも真面目って顔をしている。
「悠斗さん。また、1000万円くらい降らしてくれないかしら」
「1000万円なんて、そんな大それた金額は…できたら、その半分でも…」
ここは俺の隠れ家にすることにした島だ。
そのくらいは島の人たちを助けることをしないとな。
俺は島長さんと美代子さんと一緒に天一神社に行くことにした。
天一神社は、島の真ん中にある山の上だ。
標高だと324mほどの場所。
そこの山頂近くの森の中に天一神社はある。
「見事にボロボロだな」
「そうですな。もうずっと改修できていないからな」
島の人たちがずっと守ってきた神社だと言う。
それはしっかりとした人助けだな。
「うむ。わかった。それでは、お金の神様を呼んでみよう。おふたりは目を閉じるように」
もったいつけて言ってみた。
やっぱり、お金を降らせるためには、演出も必要だ。
「それでは、おふたり。神様にお願いを伝えてみてくれ」
「「神様、天一神社の改修費をどうかお授けください」」
必死に祈っているふたりに、デイバックから取り出した1千万円の札束をバラシて降らしてみた。
「おーーー。神様、ありがとうございます」
「神様、いつもありがとうっ」
千枚の1万円が舞うのはなかなかだな。
お金の使い方としてバカっぽいけどインパクト最高だ。
「これで先祖代々守ってきた神社が改修できます。島のみんなも喜びます」
よし、島長さんも大喜びだし、いいことしたな。
その時、3人は不思議な体験をした。
天一神社の拝殿が光りだしたのだ。
「しかし、どこが光っているんだ?」
「きっと磐座です」
「磐座?」
「元々、この神社は古代から祀りをしてきた磐座を囲うように作られています」
「磐座が光っているというのはどういうことだ?」
「きっと、祀られている大白星神が喜んでいます」
なんか俺の気まぐれな行動で、神様をよろこばしたらしい。
しかし、聞いたこともない神様だな、大白星神とは。
白星は勝ちのことだから、大勝利の神様か。
なんか縁起いいと考えておこう。
そんなことを考えていたら、猫が集まってきた。
1匹や2匹じゃない。
大量の猫がわんさか集まっていた。
不思議な光は猫を引き寄せる力もあるらしいな。
なんだか、外こもりしているだけだったはずなのに。
怪しい世界に引っ張りこまれている感じがするな。
そろそろ、異世界転生が起きるのか?




