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第106話 俺は猫に癒されている



「いいわねっ。本当に島の男に見えるわ」


美代子さんがほめてくれる。

島長さんに借りて着ている服装だ。


麻で作られたオフホワイトのダボタボなリネンシャツ。

ダークブルーのショートパンツ。


ついでに麦わら帽もコーディネートした。

最近は、美咲さんコーデの服を着ていたからおしゃれなのが当たり前だった。


こういう島の若者の服を着ると、俺も島の人間みたいだ。

観光客に見られたとしても、テレビで騒がれている男だとは分からないだろう。


「さて、暇だな。猫でも見てくるか」


この島には猫がたくさんいる。

500匹ほどいるらしい。


特に餌場になっているところに行くと間違いなく何匹もいる。

島の餌場マップは美代子さんお手製をもらった。


「ここか」


餌場の木で作った台がある場所。

台は2m四方くらいか。

いくつか皿が置かれているから、そこに餌が投入されるのだろう。


今は餌の時間ではないのでそれほど多くの猫がいる訳ではない。


台の上で寝転んでいるのが3匹ほど。

台の横にある車がやっと通れるくらいの舗装した道路にも4匹がいる。


「さて。餌をあげてみようかな」


美代子さんから猫餌をもらってきた。

カリカリと言われるドライフードと、「ちゅーちゅ」って名前のゲル状おやつ。


「ちゅーちゅは特に人気なのよ。みんな集まってくるわ」


せっかく、猫島に来たんだから猫に遊んでもらおう。

そのためには、貢物は必要だろう。


まずは、カリカリを皿に入れてみた。



すると、寝転んでいたトラ猫がぱっと起き上がって寄ってきた。

他の白黒猫と縞猫は、興味なさそうに寝ている。


「よしよし、一杯食べろや」


カリカリカリ。


トラ猫はお腹が空いていたのか、ガツガツと食べる。

まだ、大人になりきっていないのかな。

他の2匹より身体が小さい。


もしかしたら餌時間に負けてちゃんと食べられていないのかな。


猫の世界も、競争があるのかもしれないな。

まぁ、今日は俺がたくさん持ってきているから、取り合いになっても大丈夫だけどな。


カリカリの音を聞きつけたのか、道路を歩いていた2匹ほどが寄ってくる。


あ、最初のトラが押しのけられてしまった。

後から来た黒と白茶が餌を食べている。


うーむ。トラがかわいそうだから、他の2皿にもカリカリを入れた。

それぞれ1つの皿から食べ始めた。


どうも、俺は最初寄ってきたトラが気に入っているようだ。

トラが餌をとられるとむっとしてしまう。


トラはやんちゃな顔をしていてかわいいからか。


俺はトラに近寄って「ちゅーちゅ」を上げてみようと近づいた。


「ちゅーちゅ」は6㎝X1㎝のパッケージに入っている。

先端を切って、少し押すとジェル状のものが出てくる。


最初は警戒していたが、じっと待っているとトラは俺が差し出す「ちゅーちゅ」をペロリとなめた。


あ、うまいらしいな。

表情が変わったぞ。


一心不乱に食べ始めたぞ。


おっと、別の猫が乱入してきた。

トラは押しのけられてしまった。


ばしっ。


俺の手に白茶が猫パンチしてきた。

爪は立てていないから、痛くはないが「ちゅーちゅ」を取ろうとしたな。

俺は「ちゅーちゅ」を引っ込めた。


その後は、猫を眺めて過ごすことにした。


「ちゅーちゅ」を出すと猫のテンションが上がりすぎるからやめた。


俺はただの傍観者になって、猫の世界を見ることにした。


現実逃避して猫に遊んでもらっています。


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