第105話 俺はあそこに外こもりすることにした。
タワーマンションで俺は考えていた。
「さて、どうするか」
昨日は巨乳マッサージ嬢4人と遊んだ。
それは、それで気持ちがいいし、楽しくもある。
だけど、飽きた。
毎日、それをやっても面白いものではないな。
だからと言って外へ出るのはちょっとな。
有名人をするのはすでに飽きている。
そろそろ、テレビ屋も俺のネタが視聴者に飽きられていると思ってくれるといいんだが。
だが、テレビ屋達は、飽きないらしくあいかわらず俺のことがワイドショーに出ている。
しっかりと、美少女の女子高生達と銀座寿司デートもテレビに出ていた。
「本命の恋人、みゆちゃんの心境はいかに」
なんて、解説、いらないだろう。
だいたい、恋人ってなんだよ。
ただの邪推だろう。
もう、どこに行っても、マスコミに追いかけられる気がするぞ。
だけど、タワーマンションの中で過ごすのも飽きるな。
こういうときは南の島に行ってのんびりって手があるんだが、宮古島も駄目だな。
やつらはすでに宮古島の「アイなろオフィス」を知っていて、テレビで取材されている。
「もしかしたら、このオフィスこそ、魔法の財布かもしれません」
そんなことを言っていた。
実際は違うんだがな。
そのオフィスは、魔法の財布から出てくるお金で維持しているオフィスなんだが。
もっと知られていないところに避難するか。
どこか、何も考えないでいいところがないか。
「そうだ。あそこだ」
思い出したぞ。
瀬戸内海に浮かぶ、小さな島、猫島。
子猫3匹と一緒に拾った女が、民泊と古民家カフェをしている。
あそこなら、まだマスコミにバレていないだろう。
猫以外、何もない島だがそれがまたいいぞ。
「よし、行くか」
そうと決まったら即行動だ。
俺はペニンシュラホテルに向かうことにして、美波を呼び出す。
美波はポルシェ911ターボ・カレラで俺を迎えにくる。
もちろん、後ろからは報道陣の車がわんさかとついてくる。
俺はポルシェでペニンシュラの駐車場に入れてもらった後、ひとりでペニンシュラホテルに入る。
もちろん、報道陣がついて来ようとしたが、残念ながら俺が入ったのはVIP用入口だ。
取材陣が入れるはずがない。
俺はそのまま、屋上のヘリポートまで行ってヘリコプターに乗り込んだ。
宮古島に行くなら、途中でチャータージェットに乗り換えるのだが、行先は猫島だ。
ヘリのスピードは時速200kmくらいしか出ないから猫島だと3時間くらいかかる。
ただし、直接、猫島に行けるのが利点だ。
ヘリポートもないところにヘリコプターで離着陸するのは法律違反じゃないのか。
前にそんなことをパラコンシェルジュに聞いたことがある。
「大丈夫ですよ。どこでも申請すれば正規の方法で離着陸できます」
こともなげに言う。
大富豪はいちいちヘリポートのあるところで乗り降りなんてしないものらしい。
安全に離着陸ができる場所さえあれば、問題ない。
「災害の時、救助のために離着陸するでしょう? あれと一緒ですよ」
うーむ。たしかにそうだ。だけど、金持ちのわがままのためにできてしまうのはもやっとするな。
もっとも、今は金持ちのわがまま側にいるから、ありがたく利用させてもらおう。
ペニンシュラのヘリポートを出て3時間。
ヘリコプターに揺られていると。
「そろそろ着きます」
ヘリの操縦士は40代くらいのおっさんだ。
サングラスをかけていて、いかにもって感じ。
災害救助等もこなすベテラン操縦士だそうだ。
「あそこが降りる場所なのか」
「はい。あの広場なら人もいないですし、安全に着陸できます」
まぁ、猫島には人がほとんどいないからな。
猫はいるかもしれないが、ヘリが来たらあっと言う間に逃げてしまうだろう。
ゆっくりと10センチくらいの草に覆われた広場にへりは降りる。
さすがにヘリポートでないところは初めてだから、緊張するな。
「到着しました」
「ありがとうな」
「どういたしまして」
ヘリを降りると、美代子さんが走ってきた。
まぁ、連絡を入れてあったからな。
「いきなりの来島ですね」
「ああ。たぶん理由は分かっていると思うが」
「もちろんよ。あんまりお金を降らさせすぎたのでしょう?」
美代子さんにはそういうことになっているらしい。
魔法の財布ではなく、お金を降らす魔法なのだろう。
「どうだ。順調か?」
「ええ。すっごく順調。もう、民泊と古民家カフェ始めているのよ」
すごいな。
まだそんなに経っていないと思うが。
「民泊のところだと、観光客がいるだろうな」
「ええ。だから、島長さんのところに泊まってもらうことにしたわ」
すでに島の住民はすべて友達になっているという。
猫好きな人が多く、話題に困らないらしい。
島長さんというのは、島の住民を取りまとめている人。
町内会会長って感じか。
島長さんは俺のことは、美代子さんから聞いているらしく、快く離れを貸してくれることになった。
マスコミの騒ぎが一段落するまで、俺は猫と一緒にこの島に隠れているとするか。
あーあ。とうとう外こもりはじめてしまいました。




