第9話 俺は美女の手を借りることにした
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「こんにちは。悠斗さんですか?」
声を掛けられて振り返ると美しい女性がいた。
白のワンピースに、淡いクレーのロングカーディガンを羽織っている。
ワンピースのあちこちにレースがあしらわれていて肌が見えている。
胸元はV字にカットされたデザインで大きな1粒ダイヤモンドのペンダントが輝いている。
洋服のコーディネートを依頼した美咲さんだ。
「それで、どんなコーディネートをお望みでしょうか?」
「どんなと言われると?」
「たとえば、ビジネス用のコーディネートとか、カジュアルなコーディネートとか」
「ああ、そういうことだな。それなら、カジュアルだ」
これから俺は贅沢な生き方をする決めた。
だが、いままでの恰好で贅沢な場所にいくのはどうかと考えた。
今の俺みたいに「GUが基本だ」という服では、まともな相手をしてもらえないかもしれない。
どうせなら、しっかりとコーディネートされた服でいけば対応も変わってくるだろう。
しゃべり方やマナー、常識等々。
すぐにはどうしようもないこともあるが、お金を使えばなんとかなることもある。
そのひとつが服だ。
今の俺には贅沢な服を選ぶセンスなどない。
下手に金を使うと単に成金ぽくなるだけだろう。
それは正直避けたい。
そこで考えたのが、プロの手を借りること。
プロと言っても、そっち方面に詳しくないから、ネットで検索して選んだ人だ。
1時間15000円で服装の相談にのってくれるコーディネータ。
一緒に買い物にも付き合ってくれると書いてあった。
もちろん、美咲さんを選んだのは彼女の写真も大きな要素だ。
どうせ、服を買うなら美人に選んでもらいたい。
それが男としては自然な気持ちだろ。
もし、8時間かかったとしても、12万円。
十分、役に立つ投資だ。
キャバクラで豪遊すれば30万円。
服の費用を入れたらもっとかかるだろうが、それでも損はない。
そう考えて予約を入れた。
「基本はカジュアルで。そうだな。3セットほど頼もうかな」
「3セット? 全身コーディネートで3セットということですね」
「そうだ」
「1セット当たりの予算はどのくらいですか?」
「いくらくらい掛かるものなのか?」
「それは…下は3万円くらいからですが」
「上はどうだ?」
「えっと、上ですか。そうですね、30万円くらいでしょうか」
「それでは3セットを100万円で揃えてくれ」
いきなり、予算100万円は珍しいのか。
かなりびっくりしているな。
まぁ、今の俺の服がGUばかりというのもあるだろうが。
「目的は第一印象が良くなること。貧乏くさく見えないように」
「それは、100万円も掛けたら当然です」
美咲さんは、俺のことをじっくりと見てコーディネートを考え始めたようだ。
美女にじっくり見られるというのは、こそばゆいな。
「見たところ、服には興味ない、と見えますね」
「その通りだ。だから、依頼したんだ」
「では、私が主導でイメージを作っていきましょう。細かい質問なしで」
この美女は頭がいいな。
今の俺にどうしたいと聞かれても答えられないのを読み取ったらしい。
「それで頼む。掛かる時間は気にしないでいい。その分は払うから」
「それなら、8時間。夕方まででよろしいですか?」
「すこし別のリクエストしたい。コーディネートが終わったら高級な場所で食事をしたい」
「はい」
「あなたと一緒に食事をお願いできないか」
「えっ、私? それって、誘っている訳じゃ……」
いかん。勘違いされた。
「そ、そうじゃない。単に仕事として頼んでいるだけだ。一度、コーディネートが似合う場所に行ってみたいからな」
「ふふ。そういうことですか。もちろん、いいですよ。ただし、仕事なら1時間15000円がかかりますよ」
「もちろんだ」
「それと食事代、諸々の経費はそちらもちになります」
「もちろんだ」
夜10時まで。
美咲さんの12時間を確保して、俺の服を新たにする行動が始まった。
いよいよ本格的な大金づかいが始まった。




