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荒廃した世界を救うもの  作者: あさしおやしお971号
技術の発展した世界
88/90

報告と継続

どんどん遠くに行く事にも慣れてきた雪樹。

その一方で一旦報告に戻るかどうかも考えている。

とりあえず年末年始になる前に一旦報告に戻ってしまおうかと考える。

任務を継続出来るかは当然分からないが、その上での考えだ。


「ふむ、どうしたものか」


「雪樹が珍しく真剣な顔してるね」


「僕はいつも真面目なんだが」


卯咲子もそういう茶化しが出来る程度には雪樹を理解しているのだろう。


ただその一方でお別れになるかは今は不確定でもある。


「なあ、僕がもし戻ってこなかったら悲しんでくれるか」


「その口振りだと自分の世界に戻るのかな」


「あくまでも僕は報告として戻るつもりだ」


「つまり望めば任務継続でこっちに戻ってこれるって事かな」


「それが受け入れられればだがな」


つまり本人が望んだとしても継続をしなくていいと言われればそれっきりだ。

雪樹はあくまでも国の命を受けた任務で来ているに過ぎない。


なので国からの返答次第ではお別れにも任務継続にもなるのだ。


「僕は忍者、こっちの世界で言う諜報員だ、現地人と親しくなるのも任務だからな」


「うーん、でも親しくなっても殺したりする事はしないなら私は友人だと思ってるよ」


「そういうのはこっちの世界の人間という考えだな」


「まあお別れになったら寂しいよね、異世界人と親しくなるなんて二度は経験出来ないし」


「そう言ってくれるなら嬉しいものだな」


忍者は基本的に感情は殺す生き物だ。

こっちでも住民や遠出先の現地人と親しくしつつも表情は大きく変化しない。


喜怒哀楽も基本的にめったに出さないように教育を受けてきたのだ。


「ただ僕が戻ってこなかったら卯咲子も他のみんなも悲しんでくれるか?」


「そうだね、思い出としては残るけど、記憶はいつかは風化していくものだし」


「そうか、まあそう言ってくれるなら僕もまんざらでもない」


「表情を変えないポーカーフェイスなのに、心の中では普通に感情が出てない?」


「かもしれん、心の中では未知のものに対してテンションが上っているな」


そういう事も言えるようになったのは多少なりとも変化があったのだろう。

雪樹は報告のつもりであり、任務継続によりまたこっちに戻ってこられる保証はない。


もちろん継続を命じられればまたこの世界で活動する事になる。


「僕からも国王様には一応進言はする、その上で必要ないと言われればそれまでだな」


「なるほど、つまり雪樹はこっちでの生活が恋しいんだ」


「かもしれん、この豊かさを知ってしまった以上僕の世界では満足出来んだろうからな」


「豊かさを捨てるのはそれだけ大変って事だね、自分の世界と比べたらね」


「そうだな、今なら豊かさの意味がとてもよく分かる、それを捨てられる人間などいないとな」


雪樹自身がそうであるように、豊かさを捨てるというのはそれだけの事なのだ。

この世界の豊かさを知った今自分の世界の貧しさに耐えられるだろうか。


だからこそ技術により自分の世界を豊かに出来ないだろうかと思うようになった。


「僕の世界は戦争が泥沼化し、世界の多くの国で平民は貧しくなった、そういう事だ」


「王様とかがいるのはそういう階級の人は豊かさを維持してるのかな」


「豊かさは保っているがそれでもレベルは下がっている、そんな現状だ」


「そっか、豊かさってそういう事なんだね」


「以前一度生活レベルを上げてしまえばそれを下げられなくなると聞いたからな」


そうした事もしっかり聞いている辺り、技術だけを学んでいたわけでもない。

人が生きていく上での心得のようなものも多く聞いてきた。


その上での豊かさというものについて自身でそれを感じているのだろう。


「僕がこの豊かさに慣れてしまった以上、自分の世界に戻るのはそういう事だからな」


「一度豊かさを知ってしまうとその豊かさを失う事に耐えられなくなるんだね」


「まあそれでも任務終了を言い渡されたのならそれまでだ、それだけの話だ」


「ならまたこっちの世界に戻ってきてくれるって信じていいの?」


「信じているとその通りにならなかった時が辛い、だが信じてくれるなら嬉しいな」


とりあえず近いうちに一旦自分の世界に帰還する事にした。

その上で帰ってこられるかは未確定な話である。


卯咲子や碧流などにも信じてもらえているのはそれだけの関係を構築したという事だ。


「とりあえず保証は出来ないが、進言はしてみる」


「うん、それならみんな信じて待ってるからね」


「そこは好きにしてくれればいい」


そうして近いうちに一旦報告に戻る事にした雪樹。

任務を継続したいとの進言は一応してみるつもりだという。


もちろん不確定であり未確定な話ではある。


それでも自分の中にある気持ちには従おうと決めたのだ。

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