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荒廃した世界を救うもの  作者: あさしおやしお971号
技術の発展した世界
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きのこを食す

最近は冷えるようになったため雪樹も一枚羽織るようになった。

そんな中凛音が何やら買ってきた様子。

買ってきたものは様々なきのこだという。

この季節は美味しいきのこが豊富なのだと。


「凛音、またたくさん買ってきたな」


「はい、この季節は美味しいんですよ」


「きのこか、それだけあればいろいろ作れそうだ」


美味しいきのこがたくさん。


その味は焼いたり煮たり鍋の具にしたり様々だ。


「どれを何に使うかは決めているのか?」


「はい、大体は決めていますよ」


「そうか、なら楽しみだな」


「雪樹さんの世界だときのこは食べられたりするんですか」


「そうだな、食べる事は普通にある、僕も毒きのこの知識なんかは持っているしな」


きのこは食す際には細心の注意が必要になる。

生で食べてはいけなかったり毒きのこにそっくりな食用可能なものがあったり。


だからこそ知識を持たない者にきのこを扱わせるなという事でもある。


「これは松茸か?」


「はい、ご存知なんですね」


「出かけ先で売っているのを見た、松茸とはなぜこんなにも高いのだ?」


「うーん、そう言われるとなんとも、ありがたがるのはこの国ぐらいと聞くので」


「外国に行くと松茸は食べないとかそういう事なのか」


松茸は外国に行くと大した価値のない普通のきのこになる。

それにこの国では傘が開き切る前に食すのが基本だ。


松茸をありがたがるというのは外国から見たら変な感じなのだ。


「焼いたきのこなんかは僕も好きだが、松茸に似たきのこはよく食べていたな」


「似ているきのこはそっちの世界にもあるんですね」


「ああ、ただ香りが強すぎるせいで食べる奴は珍しかったな」


「松茸は香りを楽しむものなんですよね、味は二の次というか」


「松茸に関してはよく分からん、僕からしたら香りが強いだけで他と変わらなく見える」


松茸への見方に関しては雪樹からしたら自分の世界での認識のままらしい。

香りが強いせいで食べる奴は物好きでしかないと。


雪樹も貴重な食料だから食べていただけで、食後は必ず匂いを落としていたとか。


「こっちの世界の高級な食材というのはよく分からんな、珍しいから高いのか?」


「珍味とかそういうものもですか?」


「ああ、高いというからにはまとまった量が確保しにくいという事だろうしな」


「確かにそうかもしれないですけど」


「なんにせよ松茸は僕の世界だと似ているものが普通に山に生えているからな」


松茸は別に珍しくもなく、それと似たきのこはただ香りが強いだけ。

好んで食べるような人はいないというらしい。


高級食材は高級食材たる立派な理由があるという話なのだと。


「しかしきのこだけでも高いものから安いものまで多様なものだ」


「ええ、いろんな料理に使えるので助かりますよ」


「なるほど、使い道が豊富なのはいい事だ」


「最近はハヤシライスに舞茸を入れたりもしてるんですよ」


「和食が得意とは聞いていたが、洋食もイケるのだな」


ハヤシライスは厳密には和製洋食である。

とはいえ凛音は料理が得意なので、洋食も全然イケる。


バンドメンバーにも好評なので、食事は大体凛音任せになるのだと。


「きのこは汁物なんかにも合うのはまさに万能感があるな」


「ええ、だからきのこのお味噌汁とかきのこの炒め物とかも美味しいですよ」


「僕は基本的に時間がない限りは簡単にしか食べないからな」


「でも料理は得意なんですよね」


「ああ、一応得意だとは言われる」


雪樹も料理は得意な方ではある。

ただその理由も栄養をきちんと摂るという事が大前提にある。


それでも美味しい料理は安らぎなのである。


「こっちの世界は食用のきのこが豊富でいい、どれも美味しいしな」


「雪樹さんはきのこがお好きなんですか」


「好きだな、サバイバルで食べる事もあるが、山育ちなのもある」


「なるほど、だからきのこの知識にも詳しいんですね」


「とりあえずそのきのこは凛音が美味しく調理してくれればいいさ」


凛音に期待するのもその腕前故に。

雪樹も満足させるその料理はそれだけ美味しいという事だ。


やはり美味しいとは正義なのである。


「おすそ分けを期待してるぞ」


「はい、またたくさん作りますから」


「美味しい料理とはいいものだ」


いろんな人から好評な凛音の料理。

その一方で食材の調達にも抜かりがないのが凛音だ。


安い食材でも美味しく仕上げてこそ料理なのだという。


プロには及ばなくともその料理は好評なのだから。

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