地震の多い国
最近は遠出する距離も少しずつ伸びている雪樹。
そんな中この国での経験の中で大きいのが自然災害だ。
ニュースなどでも見る中、特に身近なものは地震。
自分の世界ではそうした経験は少なかったようだ。
「この国は本当によく揺れるな、それなのに人が暮らしているのは大したものだ」
「雪樹は地震とかそこまで経験がないの?」
「経験がないというわけではない、ただ僕の国ではそこまで揺れなかったしな」
雪樹の世界にも地震が起こる国はある。
だがこの国ではそれが頻発しているからこそ驚くのだ。
「この国の人間は割と強めの揺れが起こるのに平然としているのには驚かされる」
「そうね、まあ耐震性の建物とか技術で対策はしているのよ」
「確かに高層ビルがびくともしないのは素晴らしい技術ではあるな」
「過去にも凄い大きな地震が起こった事が何度かあるのよ、それでも負けなかっただけでね」
「そんな国で昔から暮らしているというのは僕からしたら民が強いとしか思えん」
雪樹の世界でも地震が起こる国はあるにはある。
ただ耐震技術などは当然そこまであるわけでもない。
なのでこっちの世界で言う震度4ぐらいでも簡単にボロボロになるのだと。
「地震だけでなく多くの自然災害と付き合ってきたこの国は素直に称賛してしまうな」
「まあ地震に関して言うならそれこそ体感的には感じない微弱な揺れとかあるしね」
「つまり感じないだけで実はもっと頻繁に揺れているというのか」
「そうよ、まあ世界では地震の起きない国もあるしね」
「それは地質学的な話という事になってくるのか」
地震についての研究はかなり進んでいる。
この国が地震大国だからこそ地震への備えや研究が発達している。
自然災害の多い国だからこそ自然災害との付き合い方を覚えたという事だ。
「夏には豪雨のニュースも見たな、自然災害と戦い続けた国という事なのだな」
「近年は昔よりも酷くなってるとも言われるのよね、自然災害は」
「あれだけの雨が降るというのも驚きだ、地震の揺れの強さもそうだがな」
「この国って立地的にも台風の進路になりやすいのよね」
「さらには地震が起こりやすいところに国土がある、か」
この国の自然災害の多さは国のある立地的な理由も大きい。
台風は偏西風によって直撃しやすい、地震もプレートの真上に国土がある事にある。
さらには隣国から黄砂なども飛んできたりするのだから。
「どんなに技術などを発展させてもその度に災害は襲ってくる、強いものだ」
「それこそ今より技術が発達してない時代ですら地震や台風に負けなかった国だもの」
「そして未曾有の被害をもたらすような大地震も起きているのだな」
「そうよ、この国の歴史って自然災害との戦いの歴史でもあるのよね」
「自然災害は人の手でどうにか出来る話でもないからな」
自然災害は人の手ではどうにもならない。
だからこそそれと戦い立ち上がってきた歴史がある。
強さとは何度でも立ち上がる事なのだという事である。
「僕の世界でこの国のような自然災害が起きれば神の怒りだと思うだろうな」
「宗教的な話かしら」
「全ての民が信仰しているわけではないがな」
「でも大きな自然災害を神の怒りと表現するのはこっちでもあるわよ」
「こっちでもあるのか、凄いな」
自然災害は神の怒り。
それは宗教的な考え方でもある。
雪樹の世界でもそうした考え方を持つ人はいるのだと。
「だが自然災害の多い国は僕の国にもある、そういう国は神の怒りとは言っていなかったな」
「そこは考え方の違いよね、神の怒りっていう表現自体が宗教的なものだもの」
「宗教的、か」
「結局は自然災害っていうのは勝つのではなく何度でも立ち上がるしかないのよね」
「立ち上がる、強さというものが分かった気がするな」
災害でめちゃくちゃに破壊されてもなお負けない国。
それは何度でも立ち上がれるという事こそが強さだということ。
決して負けなかった、勝てなかったけど負けなかった、そんな感じなのだろう。
「立ち上がる事が強さ、その考え方は面白いな」
「何度もめちゃくちゃに破壊されてるものね、この国は」
「それでも立ち上がってきたからこそ今がある、強いのだな」
「自然災害と付き合っていくってそういう事よ、立ち上がる事が強さになったの」
「強さの意味、そういうのは勉強だな」
強さとは負けない事ではなく立ち上がれる事。
それは人間にはどうにもならない相手との戦い。
だからこそ今もそんな戦いは終わっていないのだから。
「自然災害はどうにもならないものだな」
「だからこそ付き合っていくしかないのよね」
「自然が相手な以上勝てるとも思えんしな」
自然災害と戦い続けてきた国。
何度も立ち上がってきた強さ。
雪樹もそうした強さについて学んでいるのかもしれない。
人の手ではどうにもならない相手と戦い続ける事は強さだと。




