夏の必需品
最近はすっかり単独で遠くに行けるようになった雪樹。
そんなこっちの世界でも今はすっかり夏模様だ。
夏の湿度は雪樹にはかなり苦痛なようで、外に出るのも億劫である。
この世界には涼しくなる方法が多いのも雪樹には嬉しいようで。
「ふぅ、こっちの世界は暑い日に涼む方法が多くていい」
「雪樹って暑がりなのか?」
「暑がり、というよりも耳や尻尾の毛があるからな」
亜人なのでそういったところの毛が生えているのは悩みでもある。
そのため湿度が高いと辛くなるのはあるようで。
「この世界は外は恐ろしく暑いのに室内は寒いぐらいに涼しいからな」
「エアコンもガンガンだもんなぁ、外が暑いのはそういうやつの排熱のせいだろ」
「室内を涼しくする際に排熱がされて外がやたらと暑くなるのか」
「言われてるのはアスファルトの照り返しとか風が少ないとかだな」
「そういえばこっちは風が思っているよりも吹いていない気がするな」
暑さの原因は風が思っている以上に吹いていない事はある。
そのため外の暑さが風によって冷えないのだ。
その関係なのか田舎なんかは普通に外も涼しかったりする。
「都会が暑いだけ、という事でもないのか?」
「そうねぇ、アタシなんかは田舎で仕事したりするけど割と涼しいって感じるぜ」
「つまり都会がただ暑いだけという事でいいのか」
「そうなんじゃねぇの?都会の場合入り組んでて風が吹き抜けにくかったりもあるし」
「風、そういえばあまり風を感じないな」
風が吹き抜けにくいというのは暑さの理由の一つとも思える。
田舎は都会に比べると風の吹き抜けがいいので涼しさを感じる。
雪樹も都会から離れたところに行くと風を感じていたようで。
「ただこの暑さは僕にはしんどすぎる、なんとかならないのか」
「ならこういうのを使ってもいいんじゃねぇの」
「これはなんだ?湿布薬か?」
「冷却シートってやつだよ、デコとかに貼り付けるとしばらくは涼しくなるぜ」
「ほう?ならば貼ってみるか」
樹希に渡された冷却シートを貼ってみる。
すると確かに涼しくなったのを感じる。
こういうものがあるのは素晴らしい限りだ。
「樹希はこういうのは持ち歩いていたりするのか」
「仕事で外に行ったりも割とあるからな、こういうのは持っとくに限るんだよ」
「これは薬局などに行けば買えるのか?」
「ああ、ドラッグストアとかに行けば買えるぜ」
「なら買っておいてもいいかもしれんな」
昨今の夏には必需品とも言える冷却シート。
風邪を引いたりしていなくても暑い日には体を冷やすには最適だ。
まさに夏の必需品だ。
「こっちの世界の夏は暑すぎる、アスファルトや排熱だけとは思えん」
「実際今から30年前とかだと最高気温が今より5度ぐらい低かったらしいしな」
「その5度が想像以上に暑いのだな」
「んでもう少し前の50年前とかだと30度で猛暑とか言われてたらしいぜ」
「今の最高気温が普通に40度近くあると聞いたからな、恐ろしい話だ」
夏の暑さは確実に暑くなっているのだという。
50年ぐらい前だと30度でも猛暑扱いだった。
それは文明が発展した事で熱が多く放出されるようになったからなのかもしれない。
「冷却シートみたいなものが風邪でなくても使われる程度には暑いのだな」
「文明の発展は必ずしもいい事ばかりじゃねぇって事かもな」
「それぐらい前だと熱ももっと出ていなかったという事なのだな」
「技術の発展は素晴らしいって思うけど、こんな暑くなるとかマジかよって思うし」
「技術を持ち帰ると命を受けたのはいいが、必ずしもいい話ばかりでもないな」
文明の発展の光と闇とでも言うべきか。
この暑さもそんな文明の発展によるものなのか。
なんにせよ発展は必ずしもいい事だけではないのだろう。
「そういえば田舎はここに比べると涼しいのだったか」
「ああ、暑いのに変わりはないけど風がある分涼しかったな」
「そういうところにも行ってみるのも面白そうだな」
「田舎は不便も多い土地ではあるけど、都会にはないもんがあるのも確かなんだろうな」
「野宿やサバイバルの知識ぐらいはあるからな、数日間もっと遠くへ行くのもよさそうだ」
雪樹も野宿やサバイバルの知識は割と豊富にある。
それは忍者という仕事をしているからなのか。
そのうち近辺の県よりももっと遠くの県にも行ってみたいと考えているようだ。
「とりあえず夏は涼しくなる方法でも考えるとする」
「そうしとけ、熱中症になったらマジで命に関わるからな」
「ああ、覚えておく」
雪樹の新たなる計画。
それは近辺の県よりもさらに遠くの県まで行ってみようという事。
外国にも行ってみたいがそれは今は難しそうだ。
楽しみも増えてきているようである。




