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荒廃した世界を救うもの  作者: あさしおやしお971号
技術の発展した世界
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ラーメン屋の調味料

最近はすっかり遠くにも行くようになった雪樹。

その一方で家賃代わりの二郎の店の手伝いもしっかりとしている。

以前から気になっていたのは店に置いてある調味料の類。

それらを無料で好きなだけ使えるというのは雪樹には凄く映るようだ。


「なあ、この調味料は本当に無料で使えていいものなのか」


「ん?それが気になるのかな」


「以前から気になっていたが、ニンニクや生姜など好きに使えるのは凄いな」


家系ラーメンによく置いてあるニンニクや生姜など。


それが無料で好きなだけ入れられるのはこの世界の豊かさなのか。


「他にもラー油や酢なども好きに使えるのはラーメン屋だからなのか」


「そうよ、うちも曲がりなりにも家系ラーメンを名乗ってるしね」


「そもそもその家系というのはなんなんだ?」


「定義は割と曖昧だけどね、こってり系とか醤油豚骨とか何かと言われるが」


「だがここは塩豚骨だろう」


家系ラーメンの定義は割とふわっとしたものである。

なので二郎もそこはそんなに気にしていない様子。


とりあえずそれっぽいものを置いている感じでもあるらしい。


「まあ家系ラーメンの定義についてはなんとなくは分かった」


「そもそも一言に家系ラーメンと言っても割とどこも好き勝手やってるしね」


「そうなのか?それなのに定義があるのだな」


「いつから言い出したかは分かんないけどね、だからそんなものなのよ」


「なおさら分からんな、ふわっとしすぎだろう」


それでも美味しければそれでいい感はある。

二郎もそういったところは気にせずにやっているとは本人の談。


やはり定義なんてものはそんなものでいいのだろう。


「しかし昼食の時間には割と客が入っているのを見ると人気はあるのだな」


「この近辺だとうちみたいな値段で食える店も珍しいからね」


「ワンコインで食べられるというのはなかなかに価格破壊ではないのか」


「それも税込価格でワンコインだからね」


「利益は出せているのか?不思議な話だ」


ちなみにオーナーの二郎の他に樹希や碧流が働いているがそれ以外にも店員はいる。

二人がどっちも入れない日に不定期で仕事に来ている近所の社会人だ。


店の規模はそこまで大きくない割に時給がいいと言われているらしい。


「そういえば樹希と碧流以外にも店員はいたな、失念していた」


「彼も割と働いてくれるから助かってるのよね」


「まかないでラーメンや水餃子も食べられるしな」


「まあ樹希ちゃんと碧流君がここに住んでるうちは増やす予定はないかな」


「いつかはみんな出ていくのだろうからな」


ずっとここに住み続けるというわけでもない。

とはいえ二郎の厚意もあるので普通のアパートに比べたら家賃は破格だ。


それもありみんなここに住んでいるわけである。


「なんにせよこの世界は調味料を無料で出せる程度には豊かなのだな」


「豊かなのはこの国だからよね、外国に行くと貧しい国とか珍しくないしね」


「つまり海の向こうにはこの国から見たら貧しい国も普通なのだな」


「そういう事、僕の生まれた国も都会と田舎の差が凄かったしねぇ」


「世界は広いというのが分かるな、二郎は外国の出身だからなおさらにな」


結局はこの国が豊かだからこそ出来る話でもある。

外国に行くと食事も普通に高かったり、物価も高かったりする。


また豊かな国も実際はそこまで多くないとも。


「この国はそれだけ豊かな国なのだな、外国を知らない僕の失言だった」


「別にいいんだよ、実際僕もそんな貧しい地域の出身だからね」


「そうだったのか、二郎も苦労して育ったのだな」


「まあそれでも歴史の転換点には触れて育った人間だよ、だからこの国のよさも分かる」


「こうしてラーメン屋が出来る事も含めてだな」


二郎の過去については深く詮索するつもりもない。

それも含めて今の二郎が素晴らしく見えるのも雪樹なのだろう。


楽な人生ではなかった事はその背中から窺い知れる。


「二郎が楽しそうなのを見ると苦労が分かるな」


「僕としてもまさか異世界の人に出会えるとは思ってなかったけどね」


「そっちの方が経験としては凄いのか」


「当然でしょ」


「経験というのは面白いな」


そんな二郎が楽しそうで何より。

雪樹も自分の世界にこういう人はいなかったと思う。


苦労して辛くても今を楽しんでいる人である。


「終わったぞ」


「どうもね、雪樹ちゃんは仕事が上手くて助かるわ」


「必要な時はいつでも言ってくれ」


そんな豊かさと人生の話は染み入るものがある。

雪樹の世界とこの世界の人の感じ方の違い。


世界は広く異世界はまた違うのだ。


そんなことを感じながらまた遠くへと出かけていく。

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