少し早いかき氷
最近はすっかり遠くに行くようになった雪樹。
そんなこっちの世界はすっかり夏の始まりがやってきた様子。
なのでアイスが美味しい季節になってきた。
だが美味しいものと言えばまた別にあるようで。
「凛音、また何か作っているのか」
「あ、雪樹さん、これはかき氷ですよ」
「かき氷?そういえば去年も食べた気がするな」
凛音が少し早いかき氷を作っていたようだ。
どうやらかき氷機が部屋の押し入れにしまってあったようで。
「かき氷、もうそんな季節なのだな」
「食べます?シロップもいくつかありますよ」
「ではいただく、みぞれがいい」
「みぞれですか、分かりました」
「もう夏という事か、早いものだ」
凛音が手慣れた様子でかき氷を作っていく。
雪樹はどうやらみぞれが気に入っている様子。
その一方で凛音は宇治金時がお気に入りのようだ。
「しかしみぞれというのは美味しいのにそこまで人気でもないのか」
「うーん、色が氷とほとんど同じというのはあるのでは」
「紛らわしいという事でいいのか?」
「好きな人は好きだと思いますよ、人気も低いというわけでもないと思いますし」
「味は割と美味しいからな、人気がないというほどではないのか」
みぞれ自体はカップのかき氷でも出ていたりした。
かき氷の出店なんかでもみぞれは普通に置いていたりする。
とはいえ売れているかと言えばまた別の話ではあるが。
「例の飲み物をかけて食べたりもするからな、白い色とかき氷の相性は悪いな」
「味は美味しいんですけどね、はい、どうぞ」
「うむ、これが美味しいんだ」
「でも白い色のかき氷は確かに何もかかってないように見えてしまいますからね」
「色彩というのは厄介なものだな」
かき氷はその色も大切だと思うのである。
みぞれもそうだが某乳酸菌飲料なんかも白い色なので、美味しいが紛らわしい。
いちごやメロンが美味しいと見えるのもその色が理由なのだろうから。
「うむ、やはりこの頭に響く感じが何より美味しいな」
「雪樹さんって意外と甘党ですよね」
「甘いものは嫌いではないからな」
「でもみぞれを好きっていう辺りは分かっている感じはありますよね」
「別にみぞれを好きでも通ではないだろうに」
雪樹は意外と甘いものが好きなのは普段から分かる。
それと食事は回数よりも量を重視するタイプでもある。
忍者という職業柄腹持ちのいい食べ物を好むというのはあるからのようだ。
「それにしても凛音は器用なものだな、料理もお菓子もいけるとは」
「かき氷は作るだけなら簡単ですけど、美味しくするとなると意外と難しいんですよ」
「なるほど、シンプルだから難しいという事なのか」
「そういう事ですね、オムレツやおにぎりの仲間ですよ、かき氷は」
「意外と奥が深いんだな、かき氷は」
凛音曰くかき氷はシンプルだから難しいという。
作るだけなら簡単なものだが、美味しくするとなると実は難しい。
オムレツやおにぎりの仲間なのだというのが凛音の考え方だ。
「うむ、美味しかったな」
「それはどうも」
「しかしもうかき氷の季節なんだな、季節が巡るのは早いものだ」
「一年って早いですよね、私もこの前まで冬だった気がしますよ」
「時間の感覚というのは不思議なものだな」
時間の流れというのは不思議なものである。
子供の時の一年と大人になってからの一年は感じ方も違うのだろう。
地球に時間加速魔法をかけた魔法使いは死罪にすべし、慈悲はない。
「なぜ時の流れの感覚は速くなってしまうのか」
「小学生の時は20分休みでドッジボールしてチャイムが鳴ったら戻るとか普通ですし」
「こっちの子供はアグレッシブすぎないか」
「今と昔は違うとはいえ子供の元気さは今も昔も変わらないのかもしれませんね」
「そこまで凄い子供は僕の世界では見た事もないな、大したものだ」
夏でも元気に駆け回る子供というのは強いものである。
凛音もそんな今と昔では自分も変わったと感じているようだ。
人は成長すると様々な事の感じ方も変わってくるのだろう。
「この世界の夏というのは何かと凄いものだ、いろいろとな」
「実際雪樹さんも凄いと思ってしまうんですね」
「子供はいつの時代も強いものだな、感心する」
そんな夏が近づきかき氷も美味しくなる季節。
白いシロップとかき氷の相性はあまりよろしくない、美味しいけど。
雪樹は腹持ちのいい食べ物を好むタイプ。
忍者とは難しい生き物である。




