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荒廃した世界を救うもの  作者: あさしおやしお971号
技術の発展した世界
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怪我をするという事

最近はすっかり遠出にも慣れてきた雪樹。

そんな遠出の先で様々なものを見ているようで、いい経験になっているようだ。

また観戦はしていないが、スポーツの会場などにも寄っているようだ。

この世界ではそうしたものがある事も凄いと思ってるようだ。


「こちらの世界では勝負も娯楽の一環なのだな」


「雪樹はそういうのに興味があったりする?」


「僕の世界だと拳闘士による勝負を見世物にしていたりはあったな」


雪樹の世界にもスポーツではないが拳闘士による戦いの見世物があるらしい。


それは奴隷が普通に存在するからなのだと雪樹は言う。


「僕の世界だと貴族が奴隷を買って使用人に教育するみたいな話は普通にあるな」


「拳闘士による見世物もそれの一環なのかしら」


「そんなところだろうな、ただ拳闘士に男も女も関係ないというのはある」


「つまり女の拳闘士も普通にいるのね」


「ああ、主人に対する忠誠の証として使用人による拳闘が行われる事は普通だ」


雪樹の世界では貴族が奴隷を買い使用人に教育するのが普通らしい。

あくまでも使用人なので、きちんとした教育を施すのは当然だとも。


なので最低限の保証はされるし、それに加え貴族としての体裁もあるのだとか。


「奴隷があるというのは結局は行き場のない者を貴族の庇護下に置く事でもあるからな」


「でもそんな使用人に迎えた元奴隷に拳闘をさせるのよね?」


「ああ、ただあくまでも興行であり殺してしまえばその拳闘は死罪になる」


「つまりこっちで言うところのプロレスみたいな感じなのかしら」


「そんな感じだな、ただ殺しはタブーだが大怪我をする事は普通にある」


拳闘士が大怪我をするという事は言うまでもなくあるのだと雪樹は言う。

使用人として雇うのが本来の目的である事もそれには大きく関係している。


怪我をするというのは敗北に近いものがあるのだとも。


「僕の世界だとこっちのような高度な医療はないからな」


「大怪我をすればそれは死に等しい感じなのね」


「ああ、だが拳闘は忠誠を示すための見世物だ、怪我は小さいものから大きいものまでな」


「なんか優しいのか厳しいのか分からない話ね」


「結局は奴隷というのは帰る場所を失った者達だからな」


奴隷は貴族により教育を施され使用人になる。

それは雪樹の世界では当たり前の事であり、そこに男も女も関係ない。


だがそれは同時に拳闘の世界に足を踏み入れなくてはならないという事でもある。


「大怪我で拳闘が出来なくなった使用人も多いからな、怪我はそれだけ怖いんだ」


「その場合使用人としてはどうなるの?」


「名誉の負傷とも言われるな、使用人としての高い地位になったりする」


「メイド長とかそういう感じの地位になれる、怪我はそれだけの証なのね」


「なんにせよこっちの世界のスポーツなどとは全くの別物だな」


つまり雪樹の世界における拳闘は忠誠心を示すための見世物。

大怪我も忠誠心を貫き通した名誉の負傷扱いだ。


考え方がこの世界とは根本的に違うと夏花は感じ取った。


「怪我への扱いが僕の世界もこちらの世界もそこまで変わらんのには驚いたが」


「こっちだと怪我をしてでも最高のパフォーマンスをするみたいな人もいるものね」


「僕からしたら怪我を恐れない姿勢は戦士のそれでしかないと思う」


「スポーツ選手で凄い人は何度となく大怪我しても現役とかいるものね」


「だが怪我はパフォーマンスを低下させるそれはこちらも変わらないのだろう」


怪我を一度でもしてしまえばそれまでのようなパフォーマンスは出来なくなる。

つまり元には決して戻れなくなるという事でもある。


体が万全だから最高のパフォーマンスが出来るのだと夏花も言う。


「僕は傷を名誉だとは思わない、死んでしまえばそれまでなんだ」


「傷は強者の証なんて言うけど、私はそれは間違いだと思うのよね」


「傷は弱いからつく、それには僕も同意する、だがだからこそ強くなるんだ」


「傷の数は今まで生き抜いてきた証ね」


「無傷の強者などいないからな、傷を受けその傷に勝ってきたから強者になるんだ」


それは怪我というものへの考え方の違い。

夏花もテレビなどで体を張る事もたまにあるからこそである。


怪我なんてものはしないに越した事はないのである。


「怪我を恐れないというのは立派なのか無謀なのか、難しいものだ」


「スポーツなんかでも怪我を恐れないプレーが結果に繋がるとかあるものね」


「それを正しいとも間違っているとも言い切れないのは難しいな」


雪樹がスポーツなどを見て思う怪我への姿勢。

怪我を恐れない事は勇敢なのか無謀なのか。


自分の世界における拳闘を知っているからこそこちらの世界に来て思った事。


それは己の体を考える事にも繋がるのだろう。

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