服屋の不思議
最近は遠くにも行くようになったので見るものも増えた雪樹。
そんな遠出した先で見るこちらの世界の変わった景色も多い。
寧ろ遠くに行くからこそ見られるものとも言えるのだろうか。
だからこそこの世界の不思議に触れる事も多いのかもしれない。
「卯咲子、この世界の服は値段が両極端すぎないか」
「遠出して何を見てきたのかは知らないけど、服にはターゲットってあるからね」
「ターゲット、つまり俗に言うおしゃれというものでいいのか?」
この世界では服の値段もピンからキリまである。
雪樹の世界ではこちらの世界以上に服はピンからキリまであったのでなおさらだ。
「だがこちらの世界には貴族や王族と言った階級はないだろう?」
「それは国にもよるけど、偉い人の場合高い服を着るのはなめられないようにだね」
「つまり高価な服を身につけるのは相手に対する威圧的なものなのか?」
「政治家がそこらで買える安いスーツで国際会議とかに出たらなめられるでしょ」
「そういうところは僕の世界とそこまで変わらないのか」
スーツなんかは相手になめられないために高いものを選ぶ。
政治家がオーダーメイドの何十万とするスーツを着用する理由だ。
その一方で平民なんかも服には差があるとも感じているようで。
「俗に言うおしゃれというのはやはり金がある奴がするものなのか?」
「モデルやってる私が言うけど、お金を使う優先順位なんだよ、それって」
「優先順位?」
「そう、服にお金をかける人もいれば食事にお金をかける人もいるからね」
「つまり金を何に対して優先的に使うのか、人によってそれが違うのか」
おしゃれな人は服にお金をかけているからおしゃれなのだ。
卯咲子が言うように何に対して優先的にお金を使うのか、なのである。
おしゃれとかを気にしない人はそれこそ安い無地の服みたいな人は多い。
「卯咲子は意外とおしゃれなのか?」
「私は高い服は買わないけど、最低限いい服は買ってるからね」
「モデルをしているから私服のセンスもそんな感じなのか」
「まあ安い服っていうのは服に関心がない人に売るための服だからね」
「確かに着られればいいという感じの服を着ている人は見るな」
服はセンスもあるが、同時に関心もあるのだろう。
安い服屋で買えるような服は服に関心がない人に向けて売るものなのだと。
だからこそおしゃれを気にする人はファッションショーなどにも関心があるのだ。
「なんにせよ服の事情は分かった気がするな」
「雪樹はスタイルはそれなりにいいのに服は無頓着な感じはするよね」
「忍者だからな、目立つ服は着ない主義だ」
「隠密行動に派手な服なんか着てたらバレバレって事だもんね」
「忍者とは闇に紛れて活動する生き物だからな」
雪樹は派手な服は徹底して着ない傾向にある。
それは忍者という職業の職業病のようなところもあるのだろう。
こっちの世界で着ている私服も基本的には地味な服ばかりである。
「なんにしても服屋とはピンからキリまであるのだな」
「高い服っていうのは基本的に服に対する優先順位が高い人が買うものだもん」
「なら僕にそういう服は完全に無縁だな」
「スタイルは割といいのに地味を徹底してるのは職業病なのかな」
「かもしれん、そういう生き方が長かったからな」
雪樹にとって服の優先順位は低いという事らしい。
卯咲子はモデルもしているのでそこそこいい服は着ている。
優先順位や仕事の関係でいい服を着るというのも卯咲子らしさではある。
「こちらの世界は服で威圧するみたいな事もあるものなんだな」
「偉い人なんかはいい服を着てなめられないようにするとは聞いたからね」
「政治家なんかは金があるのだからいい服を着るのもある意味当然か」
「社交的な意味でいい服を着るっていう意味合いが多いかな?私服は地味とかあるから」
「仕事の場ではいい服を着るが、普段は地味な服を着る、そういう人もいるのか」
政治家などがいいスーツを着るような話は社交的な意味合いの方が大きい。
私服は地味という金持ちも珍しくないのは意外とある。
外国では投資にお金を使い生活は質素という社長が普通にいたりする。
「なんにせよ少しは分かった気がするな」
「生活のレベルは一度上げると下げるのが大変っていう話はあるからね」
「質素な暮らしから突然贅沢を始めると質素に戻れなくなる、という事だな」
「だから仕事にもよるけど、仕事と私生活は別っていうお金持ちはいるからね」
「服も公私においての差がある、生活レベルか」
公私においての身に付けるものの違い。
それは見ただけでは金持ちで社長とは分からないみたいな話だ。
服においてもそういう一面があるという話でもある。
「僕の世界以上にこの世界の服の話は面白いな」
「服屋もターゲットをある程度定めてるんだよね」
「どんな客層を狙うか、商売とは面白いな」
卯咲子も多少は知っている服の業界の事情。
その一方での服をどんな人に向けて作るかという事。
それにより安い服高い服は棲み分けが出来ている。
商売も考えるというのは大切なのだ。




