百均ショップのからくり
最近はすっかり遠出するようになった雪樹。
そんな中遠出先で近所では見られないものもいろいろ目にしている。
こちらの世界にはそういった技術はこれでもかとある。
見たものの疑問については素直に聞いているようだ。
「なあ、こちらには100円均一という店があるだろう」
「うん、あるけど、雪樹もそれに興味があったりする?」
「いや、こちらの世界は安く売っている店が多いのだが、成り立っているのか?」
雪樹の疑問はそういう安く売る店が成り立っているのかということ。
卯咲子も詳しくは知らないが、そういう商売のやり方なのだろうと語る。
「100円均一というのはそれで利益が出るものなのか?」
「ああいうのは薄利多売が商売のスタイルだから、利益は二の次なんじゃない?」
「つまり利益は少なくてもいいという事なのか?」
「値段が値段だから長く使うのには向かないものも多いしね」
「つまり品質はある程度察しろという事でいいのだな」
確かにそういう店の商品は基本的に長く使い続けられるものでもない。
ただそれでも丁寧に使えばそれなりには使っていけるものだ。
品質はそこまでいい方ではないが、よほど雑に扱いでもしなければ平気という感じだ。
「だが他の店ではもっと高い食品などが100円と税で買えるのはどうなんだ」
「それってコンビニとかを基準に言ってる?スーパーとかはもっと安いよ」
「まあ確かにスーパーマーケットは安く売っているものも多いが」
「コンビニっていうのは基本的に割引しないものだしね」
「だが通販なんかでも信じられん値段のものを見るぞ」
雪樹が言いたいのはこっちの世界は物価が安いという事なのだろう。
だが卯咲子の仕事仲間の外国人もそれについては言っている様子。
つまりこの国は物価が安い傾向にあるという事でもある。
「なんにせよ100円均一というのは薄利多売がやり方なのだな」
「そうそう、だから珍しい飲み物とかが買えるから私は好きだよ」
「確かにコンビニでは見ない飲み物が多かったな」
「ああいうのが売ってるから百均は行きたくなるんだよね」
「だが薄利多売とはいえ本来の価格よりも安く売っていたりするのは凄いものだな」
実際本来の価格よりも安かったりするのが百均でもある。
最近はスリーコインのような似た感じの店も出てきている。
また百均とは言うが全てが100円と税で買えるものでもない。
「そういえば税金がかかるのならそれは100円均一ではないのではないか」
「それは仕方ないんじゃない?今は10円の駄菓子にも税金がかかるから」
「それはなんというか、複雑な話だな」
「学校でおやつは300円までと言われて消費税でオーバーとかあるし」
「税金の仕組みは複雑だな、子供故の失敗ではあるとは思うが」
子供が貯めたお小遣いで買おうとしたら消費税でオーバーする。
それは子供故の失敗ではあるもののやるせなさはある。
そもそも値段の表示のしかたが悪いと言えばそれまでだが。
「税金の計算までしなければいけないというのは子供には大変だな」
「今度から総額表示しなきゃいけなくなるように法改正されるって聞いたけどね」
「それはそれで助かるのだろうとは思うがな」
「人はそういうのに敏感だからね」
「確かに税抜でいくらと表示されていると税の計算は面倒になるが」
結局は100円均一と言いつつ税金を含めて100円ではない。
そういうのは雪樹もどうなのかと思うが、仕組みなのだから仕方がない。
ただ10円の駄菓子にも税金がかかるのは納得がいかないようではある。
「なんにせよ百均という店の仕組みはなんとなくだが分かった」
「あれは薄利多売だから出来るやり方で普通の人は真似しちゃ駄目なやつだよね」
「大量生産出来たり独自の仕入れルートがあったりするという話でもあるのか?」
「うーん、私は詳しくないけどたぶんあるんじゃない」
「明らかにその値段では売れないだろうというものも見受けられたが」
確かにこの値段で大丈夫なのかと思うものもある。
そこは独自の生産や流通があるから可能なのだろうが。
仕組みはなんとなく理解したが不安になったりするのもあるようだ。
「とりあえずそういう店は有効に使わせてもらうか」
「それがいいと思うよ」
「しかし物価が安いとは思っていたが、100円均一というものまであったとは」
「仕事仲間の外国の人もこの国は物価が安いって言ってたよ」
「そこは外国から見てもそうなのだな」
外国に行くと物価はもっと高いのが普通。
卯咲子も外国に行った事は今はないが、そういう話は聞くようだ。
世界の物価はこの国から見たら高いのである。
「生産や流通も覚えておくとするか」
「雪樹も技術を持ち帰るのも大変なんだね」
「この世界の仕組みが何かと凄すぎるからな、本当に」
雪樹の世界から見たこの世界は恵まれすぎているとも映る。
だからこそ持ち帰るべきものは多い。
仕組みの時点から見直さなくてはならないとも感じる。
あらゆるものがスケールが違いすぎるのだから。




