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荒廃した世界を救うもの  作者: あさしおやしお971号
技術の発展した世界
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助けたお礼にもらったもの

最近は遠出もするようになった雪樹。

そんな雪樹が少し珍しいものを持っていた。

どうやら遠出先で人助けをしてその際にもらったものらしい。

それをどうするかという事に悩んでいたようだ。


「むぅ、どうするべきか」


「雪樹が珍しく悩んでるね、なんかあった?」


「愛依か、少しな」


こういう話は愛依なら分かってくれそうな話ではある。


とりあえず話だけはしてみる事にした。


「先日遠出した先で困っていた幼子を助けたら親からこれをもらってな」


「これって遊園地の招待券じゃん、こんな物をくれるなんて太っ腹だね」


「遊園地というのは遠目で見ていて知っているが、僕が行くようなところでもないからな」


「ふーん、ペアチケットか…なら碧流にでもあげれば」


「碧流か、確かに卯咲子とは親しい仲だからな、それもいいか」


とりあえずペアチケットなので碧流にでも渡す事にした。

とはいえ卯咲子の立場からしてすっぱ抜かれたら何かとある気はする。


まあ元々親しい仲をアピールしてたりするので問題はなさそうな気もするが。


「しかし僕が人助けとはな、こっちに来てから少し甘くなったのかもしれん」


「忍者だもんね、忍者って割と厳しい掟とかがあるイメージはあるし」


「ああ、仲間だろうと負傷したら助けずに捨て置くのが忍者の掟だ」


「その仲間から足がつくかもしれないから、とかだね」


「それに仲間だろうと抜け忍はこの手で斬らねばならない、それが忍者だ」


忍者という職業はそれだけ厳しい世界で生きる生き物でもある。

この世界ではそれも必要ないからなのか、少し甘くなったのかもしれない。


困っている子供を見捨てるのもいい気分がするものでもないからだ。


「忍者という世界で生きてきた以上誰かと深く関わるというのは今までもなかったからな」


「忍者って過酷なんだね」


「親だろうと友だろうと何かあればこの手で斬り捨てなければならん、そういうものだ」


「こっちにも昔は忍者がいたらしいけど、やっぱりそういうものだったのかな」


「この世界の忍者については僕は分からん、だが甘さは死を招くのもまた忍者だ」


人助けをしたという事自体が雪樹自身にとっても意外だったのだろう。

過去の自分なら泣いている子供であろうとも助けようなどとは思わなかった。


それはこの世界が平和な証拠であり、それをするデメリットや不都合もないのだから。


「忍者というのはとにかく相手に足がついた時点で死罪になる生き物だからな」


「捕虜になるぐらいなら自決しろって事なの?」


「そもそも忍者というのはこっちの世界で言うスパイや工作員だからな」


「だから情報を敵に渡すぐらいなら自決する、情報の大切さも分かってるからか」


「忍者とはそういう生き物だ、だから僕自身も人助けをしたのが意外でな」


雪樹は忍者としての役割を分かっている。

だからこそ人助けをした自分を意外に思ったのだろう。


優しさはそれが必ずしも正しいものではないという事も雪樹は知っているのだから。


「僕は優しくなったんだと思う、だが優しさは必ずしも正しくない事も知っているからな」


「優しさは必ずしも正しくない、それで傷つく人もいるもんね」


「僕の世界では優しい王様も過去にいた、だが優しかったから何も出来ずに失脚した」


「優しかったから失脚したってその歴史において何があったの?」


「そうだな、この世界の言葉で言う八方美人、そういえば伝わるか」


雪樹が言う優しかった王様は何も出来ずに失脚した。

それはこの世界で言う八方美人だったからだと雪樹は言う。


優しさが必ずしも正しくないという話でもある。


「なんにしても僕は変わったんだろうな、それは確かだ」


「雪樹って元々優しい人に見えるけど」


「そうか?忍者としてはかなり厳しい教育を受けて育ってきたのだがな」


「なんにしても人助けが出来るなら普通に優しい人だよ、うちはそう思うよ」


「そうだな、それが甘さか優しさかはまた別なのだとも思う事にする」


優しさと甘さは違うもの。

それは優しい王様が何も出来ずに失脚したという雪樹の世界の過去の話。


そんな雪樹も優しさというものについては知っているのかもしれない。


「なんにせよこのチケットは碧流にでもくれてやるとする」


「その方がいいかもね、卯咲子とデートでもさせようか」


「それはそれで楽しそうだしな」


それを楽しむ気があるのもまた愉快なところなのか。

雪樹の優しさは少なからずその変化なのだろう。


忍者の世界で生きてきたからこそその意味も知っている。


優しさは必ずしも正しくはないという事も。

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