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二郎のあの手この手

すっかり一人で遠くまで行けるようになった雪樹。

そんな一方でも二郎の店を家賃代わりにしっかりと手伝っている。

料理は元々得意な方なので、今では慣れたものである。

その二郎も商売として何かとやっているようで。

「二郎、さっきの奴はなんだったんだ」

「仕事の付き合いをしてる人よ、コンビニの企画担当ね」

「コンビニの企画担当？監修のカップ麺でも出してんのか？」

樹希の言うようにコンビニで監修のカップ麺も出している二郎。

それも期間限定ではなくオールシーズンで売っているらしい。

「二郎はコンビニでカップ麺まで売っていたのか」

「まあねぇ、あくまでも監修だから店の味をほぼ再現してるってだけではあるが」

「有名店監修のカップ麺ってそんなに美味いもんなのかね」

「そうね、ピンからキリまでだけど美味しいものは美味しいよ」

「だがカップ麺で店の味を再現出来るものなのか」

雪樹の疑問も確かに分からなくはない。

カップ麺はあくまでもカップ麺、店の味には勝てないというイメージもある。

ただそれでも美味しいものは美味しいので気にならないが。

「僕は碧流にもらっているやきそば弁当が好きなんだが」

「でもカップ麺って結局は原点に帰ってくる感じはあるわよね」

「あー、分かるぜ、限定の味とかも美味しいんだけどな」

「結局はシンプルな醤油とかそばみたいなのが一番美味いもんだよ」

「原点回帰という事なのか」

二郎が言う事も分からなくはない。

期間限定でどんなに美味しい味が出ても勝てないもの。

それは原点の味には結局は勝てないし、戻ってきてしまうという事だ。

「しかしこっちの世界は凄いな、毎週のように様々な食品の限定味が出てくる」

「それでもそんな限定味は定着しないもんよ、だから限定は限定で終わってくんだよね」

「定着したのって例を挙げるとコンビニのおにぎりのツナマヨとか明太子ぐらいか」

「そうそう、新商品として定着してロングセラーになってるのはそれはいい例だね」

「定番の味として定着しないというのはやはり味の方に問題があったりするのか？」

新しい味はこれまでに幾多と出ていても定番として定着する事なく消えたもの。

それはやはり材料費の問題だったり、シンプルな味の方が定着しやすいとかなのか。

だからこそ限定品は限定品のまま消えていくのだろう、それも商売だ。

「コンビニの有名店監修のカップ麺も限定は多い気がするな」

「だね、オールシーズン売ってるのってプライベートブランドぐらいだよ」

「確かに新発売ってなってるのとは別に監修のやつも売ってるもんな」

「そうだね、まあ新商品という名の限定品ってコストとか度外視でやってるから」

「そうなのか？だから限定なのだろうとは思うが」

限定品は割とコスト度外視なところがあると二郎は言う。

つまり下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるというところもあるのだとか。

新しく定番味を作るというのも大変な事なのだ。

「商品を考えるのも大変なのだな」

「だろうね、うちが監修してるやつはオールシーズン売ってるけど」

「寧ろ下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるってのが新商品つてやつなんだな」

「そうそう、まあコンビニの企画を考える人ってのはそれだけ大変なんだよ」

「こっちの世界はそういう考える能力が高すぎるな」

雪樹もそういう事には素直に感心するしかない。

なんにせよ二郎もそういう商売もしているという事なのだろう。

コンビニで監修のカップ麺をちゃっかり出している辺りは二郎らしいとも言える。

「カップ麺というのは素晴らしいと思うが、新しい味が多すぎるな」

「そこは考えてる人達の努力だよ」

「まあ毎週のように限定味を出せるってのは素直に凄いよな」

「企画担当は偉大って事だね」

「カップ麺、この技術は持ち帰りたいものだな」

雪樹もカップ麺に限らずフリーズドライの技術には一目置いている。

食料に関する技術は雪樹の世界に持ち帰りたいとも思う。

やはり食に関する技術は大切だと分かっているのだろう。

「フリーズドライというのは凄い技術だな、改めて思う」

「カップ麺に限らずスープとかキャンプ用の食品なんかにも割とあるよね」

「フリーズドライは偉大な技術だよなぁ」

「それこそ丼料理とか他にもたくさんあるもんね」

「お湯で戻すだけというのも簡単でいいな」

フリーズドライの素晴らしさ。

雪樹もそれの素晴らしさは感じている。

やはり技術は素晴らしいと思い、持ち帰るべきと思うのだろう。

「さて、お昼休憩も終わりにするよ」

「ああ、では僕はまたどこか行ってくる」

「アタシはまた夕方には上がらせてもらうからな」

そんな二郎もきちんと何かとやっている。

監修のカップ麺は割といい感じに売れているらしい。

ちなみに冷凍水餃子も持ち帰り限定で売っていたりする。

ちゃっかりしているものである。