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荒廃した世界を救うもの  作者: あさしおやしお971号
技術の発展した世界
32/90

ほぼ専属

すっかり外も涼しくなった秋の昼間。

そんな中碧流が新しい服の構想などを立てている様子。

これでも服飾の大学に通っているわけで。

作る服のモデルはいつものように卯咲子に頼むつもりらしいが。


「相変わらず服を作っているのだな」


「冬に発表会があるからね、それに向けて今から構想とか考えてるんだよ」


「今から冬の事を考えるのだな」


碧流はデザイナーであってパタンナーではない。


とはいえそこは大学の方で知り合いのパタンナーに頼むそうだ。


「こっちの世界の服はどうにもゴテゴテしている、実用性に欠けるぞ」


「そこは着てる人をかっこよくとか可愛く見せるものだからだよね」


「僕の世界だと服は基本的に防具だ、それこそ刃物を弾けるぐらいのな」


「そこは世界の違いかもね、こっちでも防護服みたいなのはあるから」


「軍隊の服なんかはそれこそ簡単には攻撃が通らなくなっているのだろう」


碧流の作っている服はあくまでも魅せるためのものだ。

軍人が着るような防護服などとは違う。


雪樹の場合服は防具という認識が強いからこそなのだろう。


「そういえばボロボロのジーンズというものを穿いている人を見たが」


「ああ、ダメージジーンズか、あれはオシャレの一つだから」


「なぜ破れた服を身につけるのか僕には分からん」


「それはなんというか、それがかっこいいって思う人もいるんだよ」


「ただジーンズというのはなかなかに防御力が高そうなのは素晴らしいが」


雪樹にとっての服はあくまでも防具、碧流にとっての服はオシャレだ。

そこは世界の違いを感じる話で、服というものへの認識の違いでもある。


それだけ生きてきた世界が違うという事でもあるのだが。


「そういえば服のモデルはまた卯咲子に頼むのか?」


「うん、もちろん予定が空かないなら別の人を探すけどね」


「卯咲子はほとんど碧流の専属モデルになっていないか」


「彼女が俺の服を気に入ってるんだよね、だから受けてくれるんだけど」


「そういう関係を築けているのは大したものだろう」


卯咲子は碧流の作る服を気に入っている。

だからこういう時はモデルを引き受けてくれるのだ。


その一方で碧流も学校の方で新たな課題に入っているようで。


「そういえばそこにある名刺はなんなのだ」


「ああ、これは学校で勉強の一環として卒業生の仕事の手伝いに行ってるんだよ」


「その卒業生というのは独立しているという事だな」


「うん、もちろんみんなが成功してるわけではないみたいだけど」


「ついでに言えば卒業生が服飾の道に進むとも限らないか」


碧流は学校での勉強の一環として卒業生の仕事場に手伝いに行っているという。

もちろん卒業生全員が服飾の道に進んでいるわけではないとのこと。


そんな卒業生の中で独立した人の仕事場に手伝いに行くとの事らしい。


「それでどんな服を考えているんだ」


「冬物の服だからある程度の厚手じゃないと駄目なのもあるしね」


「流石に冬に薄い服を出してくる馬鹿はいないだろうからな」


「なんにしても夏には夏の冬には冬のオシャレってあるからね」


「そこはその道を目指しているからには分かっているという事か」


ある程度の方向性などは固まっている様子の碧流。

だからこその今回の発表会に出す服もイメージは出来ているのだろう。


卯咲子も碧流の発表会の際には極力予定を空けてくれるようではある。


「しかし服飾の道というのもなかなかに大変そうだな」


「まあお金はかかるからね、二郎おじさんのお店で働いてるのもそれだし」


「金は結局は必要という事だな」


「うん、結局お金がないと始まらないからね」


「慈善事業ではないからな、それは仕方ないのだろう」


世の中の問題の多くはお金で解決出来るのもまた事実。

お金で解決出来ない問題の方が現実として少ないのだ。


碧流の学校もそんなお金を捻出して通っているのだから。


「完成したらまずは試着しないとね」


「男のお前が試着するのは不思議なものだな」


「それも含めてだよ、顔を出さなければ平気だと思いたいしね」


モデルはまた卯咲子に頼むつもりの碧流。

また完成品は自分自身で試着もする。


課題以外で作った服は顔を出さずにネットにも上げたりする。


学校は大変ではあるが楽しみ方も理解しているようである。

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