博物館に行く
夏も少しだけ落ち着いてきたこちらの世界。
雪樹もある程度は体力が回復したようではある。
そんな中この前の約束もあり雪樹を誘って出かける事に。
もちろん二人で行けるものでもないようだが。
「卯咲子ってこういう嗅覚だけは鋭いよね」
「出かけるなら誘ってよ、酷いなぁ」
「僕は構わんのだが、変な嗅覚でも持っているのか」
卯咲子に嗅ぎつけられてしまったようで、ついてくる事に。
なお今回はどこへ行くかといえば。
「それでどこへ行くの」
「博物館だよ、地下鉄博物館」
「地下鉄博物館?」
「どこがいいかなと思って調べたんだけどね、技術関係ならここかなって」
「ふーん、意外と考えてるんだ」
すでに最寄り駅で降りているので、そのまま博物館へと向かう。
駅から出てそんなに遠くない場所にそれはある。
地下鉄博物館、主に地下鉄関係の展示をしている博物館である。
「さて、入場料も払ったし入ろうか」
「博物館、楽しみだな」
「男の子って博物館とか好きだよねぇ」
「だが僕を連れてきたという事は見せたいものがあるのだろう」
「そういう事、行くよ」
そのまま中へと足を進める。
その中には雪樹にはかなり新鮮な景色が広がっているようでもある。
雪樹の世界にはそもそも博物館のようなものはないのだから。
「これは凄いな、これは古いタイプのものでいいのか?」
「そうだよ、博物館は古くなったものとか資料みたいなのを一般に展示してる場所だからね」
「なるほど、使わなくなったものやそれに関係する資料の一般公開か」
「博物館も様々だよね、ここは地下鉄だけど」
「他にもいろいろな博物館があるのか」
そんな地下鉄博物館の中を見て回る。
すると雪樹が一つの展示の前で足を止める。
どうやらジオラマのようだ。
「これはなんだ?」
「ジオラマだね、決まった時間になると動くんだけど今は時間じゃないみたい」
「そうか、残念だがそれは仕方ないな」
「なんかシュンとしてるね」
「他にも見て回るぞ」
とはいえそれでも雪樹にとって博物館は新鮮に見えるらしい
技術などを一般に展示するという発想自体雪樹の世界にはないものだ。
だが保存というのも面白いと雪樹は思っているようで。
「こういう古くなったものを保存して公開するというのはいいものだな」
「雪樹の世界には博物館とかないの?」
「ないな、まあ維持するのが大変というのもあるが」
「博物館の運営も大変だからね、仕方ないのかな」
「それでもこういうのはとても素晴らしい、いいものが見られたな」
雪樹の目がとても輝いているのが分かる。
碧流の休みを使って連れてきてくれた事に感謝している様子。
技術を持ち帰るという目的で来ている以上、こういうものには目が輝くのだ。
「それにしても博物館か、僕の世界でもそういったものは出来るのだろうか」
「技術の公開とはいえ古いものだからね、資料館の役割の方が大きいよ」
「なるほど、まあ流石に最新の技術を展示するわけにもいかないか」
「古いものなら歴史的なものとして意味もあるしね」
「歴史的なものか」
そうして館内を一通り見終わった様子。
雪樹はとても満足しているようで、連れてきてよかったと思う。
帰り際に近くの店で何か食べていこうという事になった。
「うん、たまにはいいかな」
「ラーメンか、まあたまには悪くない」
「少し駅からは離れてるけどね」
「だがこういう店があるのはいいと思うぞ」
「雪樹もすっかりこっちの世界に馴染んでるよね」
駅から少し離れた場所にあるラーメン屋。
コンビニはそれなりにあるが、それでは味気ないのでラーメン屋である。
雪樹も意外と気に入っているようだ。
「しかしラーメンも多様なのだな、二郎の店のものとはまた違う」
「日本人って魔改造大好きだからねぇ」
「魔改造?」
「外国のものを自分の国に合わせるように作り変えるって事だよ」
「なるほど、料理なら自国の民の好みに改良するという事か」
ラーメンのルーツなどについても何かとあるが日本人は魔改造大好きである。
歴史において魔改造で生まれたものも意外と多い。
雪樹はそれについても面白いと思ったようではある。
「さて、帰ろうか」
「だね、碧流も隅に置けないんだから」
「また機会があれば連れて行ってくれ」
そんなわけで博物館に連れてきて正解だったようではある。
雪樹も博物館には目を輝かせていた。
雪樹の目的においてもこれよかったのだろう。
また別の博物館に連れて行ってくれとせがまれそうだ。




