夏に食べるもの
こっちの世界にも馴染んできている雪樹。
そんな雪樹でもこちらの夏はかなり堪えている様子。
体力も落ちてしまったのか、食も細くなっているようではある。
それだけこちらの夏は過酷なものというのが分かる。
「ご飯出来たよ」
「ああ、すまん」
「雪樹でもこっちの夏は体に堪えるなんて凄いんだね」
とりあえず碧流が体力のつきそうなものを作ってくれる。
自炊はこういう時は強いものだ。
「何を作ったんだ」
「にんにくとかしょうがとか、あとは肉と炭水化物がメインだね」
「流石にこれはきついぞ」
「夏はこういうのを食べるのがいいんだよ、体力がつくからね」
「そんなものなのか?一応いただくが」
夏バテになっても食べられるものはしっかりと食べる事。
寧ろ夏バテだからこそ食べなくてはいけないのだ。
食べないと余計に体力が落ちてしまうだけなのだ。
「む、これは思っているより美味いな」
「よかった、なんとか食べてくれて」
「ああ、白米が進むな、これは美味しい」
「それにしても雪樹でもこっちの夏は相当効いてるのかな」
「この世界の夏はこんなに暑いとは聞いていない、高地だからな、僕の国は」
雪樹の国は夏でも比較的涼しいような土地にある。
なので日本の夏はそれだけ効くという事でもある。
ただ暑いだけならともかく高い湿度がそれに追い打ちをかけている。
「でもこの国の夏は湿度があるから世界的に暑いって言われる国より暑いらしいね」
「そうだな、とにかくまとわりつくような湿度が不快感を高くしている」
「砂漠だと夜は嘘のように冷えるって聞いたから」
「実際砂漠は気化熱といったか?のせいで夜は冷えるどころか寒くなるぞ」
「それだけ高温多湿の環境は不快感が凄いって事だね」
実際日本を訪れる外国人もよく口にするのが日本の湿度だ。
暑さに関して言うなら湿度が全て悪いと言わんばかりに暑い。
湿度に対する不快感はもはや多くの外国人ですら感じるものになっている。
「しかし、これは、美味いな、止まらん」
「さっきまでのぐったりしてたのが嘘みたいに食べるね」
「食欲は確かになかったのだが、それでもこれは美味い、流石だな」
「やっぱりこういうのは食欲がない時でも食べられるものなのかな」
「白米の追加を頼む」
ご飯のおかわりまで要求し始めた雪樹。
食欲はすっかり回復したようなので、一安心か。
夏だからこそ熱いものを食べるというのは体力をつけるためでもある。
「夏だからこそこういう温かくて体力のつくものを食べないとね」
「そうめんというのをよく食べると聞いたぞ」
「そうめんって意外と重いし、カロリーも馬鹿にならないからね、あれ」
「そうなのか?」
「乾麺の束だと200グラムって少なく見えるけど、茹でると膨らむからね」
一応乾麺の束は基本的に一束100グラムが多い。
200グラムを例に出したのは実際に体験した話だろう。
茹でる前は少なそうに見えるがいざ茹で上がるとその量にビビるやつである。
「実際困るのは100グラムだと少ないんだけど、200グラムは多いって事だね」
「乾燥させているという事は当然縮小しているわけだからな」
「そうなんだよね、夜食はやきそば弁当なんだけど」
「しかも乾燥させているものを元に戻すというのは肥大化するわけだからな」
「俺は結構食べるんだけど、そのせいで束じゃなくて袋で買うようになったよ」
碧流曰く乾麺を買うなら束より縦長の某製粉のうどんやそうめんがいいらしい。
あれは一袋全部茹でても乾麺二束より少なく、それでいてちょうどいいとか。
それもあってか碧流は乾麺はかならずそれを買うのだという。
「しかし夏によく食べると言われるものは実は重いものなのか」
「安いそうめんは面が細くなっただけのうどんだからね」
「よく分からんな、どういう基準なのだ」
「分かりやすく言うと、本物のそうめんは乾燥させる際に油を使ってるやつだよ」
「乾燥させるのに油?こっちの世界は何かと面白いな」
なんにせよ碧流は意外と食べる人だという事ではあるらしい。
乾麺は束より袋で買え、これは乾麺の量に悩む人へのアドバイスにもしているとか。
束だと100では少なく200だと多いという悩みがつきまとうそうな。
「うむ、美味かったぞ、完全復活だ」
「よかった、あ、そうだ、今度少し出かけない?少し休みがあるからさ」
「それは構わんぞ、楽しみにしている」
どうやら碧流は少しの休みがもらえたらしい。
その理由はどうやら学校で作った服が高い評価をもらえた事によるものらしい。
なのでそれもあり少し雪樹を誘って出かける事に。
まあ二人だけで行けると思っているのは今だけではあるが。




