美味しい駄菓子
こちらの世界にも馴染んできている雪樹。
そんな中愛依に少し付き合ってほしいとの誘いを受ける。
どうやら買い物に行くようだが、何を買うのか。
その行き先はというと。
「お待たせー」
「ああ、それでどこへ行くんだ」
「それはお楽しみ、そんじゃ行くよ」
行き先は秘密らしい、そのまま駅に移動して電車を乗り継いで行く。
そうして降りた先は食品などを扱う商店街のようだが。
「うん、着いたよ」
「ここは商店街か?」
「そう、今度幼稚園で仕事があるからそこで使うものを買いに来たの」
「何を使うかは知らんが、まあいい、案内しろ」
「うん、それじゃ行こうか」
そのまま案内されたのはお菓子が大量に陳列された、所謂駄菓子屋だ。
それも問屋のようで、まとめて安く買える場所でもある。
ここでお菓子でも買うというのか。
「凄いな、これだけの菓子類があるとは」
「ここならたくさん買えるしね、雪樹も好きなものを買っていいよ」
「いいのか?ならそうさせてもらう」
「あと電子マネーは使えないと思うから現金かカードで払ってね」
「分かった」
そのまま店の中を見て回る。
駄菓子を扱う問屋というだけあって、その品揃えは圧巻の一言だ。
近年は駄菓子を作っているところも経営が苦しいところも多いとは聞く。
「そういえば愛依はこんなに菓子を買ってどうするんだ」
「今度幼稚園で仕事があるんだよ、その時に持っていくの」
「ほう、お前は意外と子供に好かれるタイプなのか」
「そうなんだよね、これでも子供と動物には好かれるんだよ」
「人は分からんな」
愛依曰く、自分は子供と動物には好かれるのだという。
実際過去にメンバー数人で仕事をした際も自分のところに一番集まったとか。
それもあってかその手の仕事によく呼ばれるようになったらしい。
「そういえばこの菓子類は珍しいものが多いな」
「駄菓子だからね、今でこそ消費税がかかるけど以前なら100円でたくさん買えたよ」
「そんなものなのだな」
「今は駄菓子屋とかそんなに見なくなったからね、コンビニでは売ってたりするけど」
「店が淘汰されていくのも時代なのか」
愛依が言うには、昔は駄菓子屋も普通にあったのだという。
だが店の主人の高齢化や、他の店が出来る事によって追いやられたとか。
その結果もあって今では駄菓子屋も珍しくなったそうだ。
「駄菓子屋はなくなっても駄菓子自体は意外と生き残るのかもね」
「そうだな、売ってくれる店があるのなら生き残るとは思うぞ」
「うちも駄菓子は好きだからさ、それにやっぱりコンビニより駄菓子屋がいいよ」
「お前、歳の割にノスタルジックな事を言うんだな」
「駄菓子屋に行った事ぐらいあるっての」
そんなこんなで駄菓子をまとめてお買い上げになる。
これだけ買ってもそんなに高くつかないのが駄菓子の凄さだ。
雪樹も結構買ってしまったようで。
「うん、満足したね」
「しかしこれだけ買ってもこの程度で済むのは凄いな」
「駄菓子ってそれこそ安さが売りだからね、子供が100円玉握りしめて買うものだよ」
「子供にとってはそれでも大金という事か」
「そうだね、子供には500円でも立派な大金なのさ」
そのまま駅に移動する。
ついでに駅の売店で飲み物を買ってその場で飲む。
こういうのもたまには乙なものだ。
「駅の売店でというのもたまにはいいものだな」
「だよね、こういうのが不思議と美味しいもんなのさ」
「家で食べるものもいいが、外でこうして立って食べるのも悪くない」
「そうそう、買ったその場でグイッとね」
「変な感じに年寄りくさいな、お前は」
なんにせよこういった立ち飲みや立ち食いというのは不思議な美味しさがあるもの。
別に高級な何かというわけではないのに不思議と美味しいと感じる。
立ち食いそばや売店での立ち飲みは不思議な感覚があるものである。
「そんじゃお疲れ様」
「ああ、これは碧流とでもいただくとする」
「うん、そんじゃしっかりと食べてね」
そのままアパートに帰還し愛依と別れる。
買った駄菓子は碧流や卯咲子にも分けて食べたそうな。
駄菓子は今の時代でも衰えないその味がある。
やはり不思議な魅力はあるものなのだろう。




