In Circles_7
「お爺さん、誰ですか? このヒトは……。なぜ、お爺さんの家で眠っているんです?」
チトさんが扉を開いて、眠るナツの部屋へ足を踏み入れた時だった。
洗い物を終えた2人が、俺の後ろから現れた。
眠るナツを見たアスは、それに歩み寄りその傍に無表情のまま立ち尽くしていた。
「アス、これはお前の弟じゃ。」
「? ――お爺さん、いま僕はナツです。それに、僕に弟はいません。
えっと、意味がよく解らないのですが――」
「いいか、よく聞け。」
チトさんの声は震えていた。
今までとは違う、怯えたような、何かを怖がるような、そんな声だった。
目を見開いてアスの目をジッと見据え、必死にその歪みと向き合っているのだろうと解った。
「よく聞け、アス! お前は、決して悪くない。悪くないのだ……。
悪くないが、ズルをした。その償いを今、させてやろうと言うのだ。」
ハッキリと声を張り、どこか悔しさを滲ませてそう言い終えると、チトさんは俺の方に向き直る。
後は頼んだぞ――
そう言う様に、俺の目の奥をじっと強く見据えていた。
はい。確かに頼まれました――
しっかりと頷いて、俺は前へ出る。
ベッドの脇でアスの隣に立った時、アスは震えていた。
戸惑ったように肩を震わせ、呼吸が乱れている。
今にも逃げ出しそうだった。
けどここに立っている――向き合おうとしている。
それだけで、もう十分なはずだ――
「シーヴ、さん……? なにを――」
俺は錯乱気味なアスの手を取り、安らかに眠るナツの顔に触れた。
ー アス、一緒に帰ろう…… ー
ぶっちゃけヒケコイの次回予告が一番面白いと思う。




