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【超工事中!】てんさま。~転生人情浪漫紀行~  作者: Otaku_Lowlife
第一部 4章 ホールディングアブセンス
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In Circles_5

「にっくにっくにっくにっく、お~にくぅ~!

 ぶっくぶっくぶっくぶっく、お~でぶぅ~!

 おいし~なっぞにっく、な~んの~に~く~~~!!」


「おい、もうそれ歌うのやめろよ、みっともない。」


 どこか意味ありげで怖い歌を陽気に歌いながら、ルンルンとスキップするファラ。

今日はカレーにするというので、見慣れない野菜類を買い付け、先ほどは肉屋にいた。

そこでは珍妙な怪曲がどこからともなく延々と流れており、それを完全に覚えてしまったようで、ファラは先ほどからずっとこの調子でリピートし続けている。


「別にいいじゃない。歌ってるだけで幸せな気分になるわ。」


 まったく……。

しかし今は、この能天気さが逆に心地いい。

俺は知らず知らずのうちに、ファラの無邪気で陽気な性格に救われているのかもしれない。

そんな事を想いながらアスとファラの前を歩いていた時だった。


「いたわーーーー!! あそこよーーーーー!!」


突然、背後から獰猛な乳ウシの軍勢アーカイヴが地鳴りと共に現れた。


「ゲッ! おいファラ! アーカイヴだ!! すぐにソイツから離れろ! し!! 死ぬぞっ!!」


「あわわわわ!! まだ死にたくないいいいいい!!!」


「チッ……。」


 先ほどと比べると幾らか小さな群れだがしかしそれでも、非力な俺たちにとっては絶望的な脅威だった。

ファラは無事なんとか逃げ切った。

しかしやはり、か弱い双子はまんまと餌食となってしまった。

そう、この世は弱肉強食――弱きものは食われ、強きものの贄となり、糧となる。

それをきっと、あの双子は、誰よりも知っている――


「ひゃっはぁーーーーー!! ショタっ子サイコーーーーーー!!」


「あーーーエヴァーストームお姉さまズルいですわぁ! アス様のオシリはわたくしのモノですぅぅううう!!」


「ちょっとエコーズ姉さん! エヴァーストームお姉さまを差し置いて何を言っていますの!?」

 

「おいヴァージ! しっかり押さえつけろよっ! ズボンが脱がせにくいだろうが!!」


「あぁ!? そりゃこっちのセリフだ!! ルミナスてめぇまた抜け駆けする気だな?!」


「ゲースッスゥウ~~~! アチキはチクビを舐めるでゲスッ!!」


 あっ! エクリプスだっ!! やっぱアイツだけ画風がちげぇ!

どう考えても生まれてくる世界間違えてるヤツだろ! 


「チッチッチッ――チチッチチッ――チッ――」


 そしてリズミカルに舌打ちすんな!

どうやらあれは兄者の細やかなる抵抗らしいが、色々と気が散って仕方がねぇ。


「チッ――メス豚が……。」


 暫く膝を抱えてボーっと見ていたが、群れから解放される頃にはすっかり夕暮れを迎えていた。

服をひん剥かれパンイチでズタボロになり疲れ果てたのか、無言になる双子。

並んで歩きながら、横目でそれをみていると僅かに心が痛かった。

チクビ丸出しのパンイチ姿――流石に放っておけず俺が普段寝巻に使っている「哀れなクソ豚」Tシャツを、ひとまず家に帰るまで着させた。

しかしどうやらこの双子にはサイズが大きかったらしく、小汚い金太郎みたいになってしまった。


「なぁ、いつもあんなことが起こるのか? その、大変なんだな。大丈夫か……?」


「え? 僕は別に。むしろ今、最高に幸せです。ムフフ。」


 あ、弟者か、あほくさ。

性格が真反対と言ってたが、それはもはや女の――いや、乳の趣味だけな気がする。 


 そんなこんなでチトさんの家にようやくたどり着き、玄関の扉を開けるとお米の炊けた時の甘い香りがした。

今夜はカレーだ。

双子の好きな甘口、それも悪くない。

そう思うと、何故だか無性に懐かしい気持ちになった。

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