Monochrome_5
「あ……、あそこ……、です……。」
「しっかりしろ! もうすぐだ、もう大丈夫! 大丈夫だから!!」
背中に背負われた双子が、虫の息を振り絞って、か細い声を出す。
命からがら乳ウシの軍勢から逃げ出した俺たちは、既に限界を迎えていた。
双子のお爺さんの家まではもう目と鼻の先。
そう、目と鼻の先まで来ていたというのに……。
「お爺さん…だいすき……。」
「嫌だ…こんなのは嫌だ……!」
「ちなみに今…入れ替わって…ガクッ……。」
「おい……。ウソだろ…おい! うわあああああああああああああああああああああ!!!」
あんまりだ、あまりにむごい。むご過ぎる。
なんて…なんて人生だ……。
だってこの双子は、お爺さんに会いたかっただけなのにッ!!!!
「うわあああああああああああああああああああああ!!!
うわあああああああああああああああああああああ!!!
うわあああああああああああああああああああああ!!!」
「あぁもう! うるっさいわよ! ただでさえ疲れてるのになんなのよぉ!」
「なにを、しておる……。」
「あ。これは、どうも、お世話になっております。
ギルドハンターのシーヴと申します。こちらはファラ、旅の仲間です。
本日は双子のナツ君とアス君の事でお話を聞かせていただきたく、ケズバロンからはるばる参りました。
突然の訪問となってしまい誠に申し訳ございませんが、よろしければ双子のお話聞かせていただけますか?」
双子のお爺さんとは、玄関でバッタリ出くわした。
ちょうど買い物に行くところだったようで、もう少し到着が遅れていたら行き違いになるところだったようだ。
そしてこの小柄な梅干し頭の老人、おそらくチーさんと同じドルイドだ。
てかドルイドって老人しかいないのかな……?
怪訝な目を向けるお爺さんに常識のある丁寧な挨拶を済ませ、怪しい者ではない事を伝える。
「お爺さん、お久しぶりです。」
「おぉ、ナツ久しぶりだの。アスは元気か?」
「はい、もちろんです。ちなみに今入れ替わってます。」
「ほっほっほっ、それなっ?」
それなっ? なんだこの爺さん。
てか何気に双子を見分けているのか?
それすごくね?
「ともあれハンターさん方、大層お疲れのようだな。
立ち話もなんじゃ、上がっていくと良い。茶くらいなら出せるでの。
あ~、アス、お茶菓子が無いのでの、儂の代わりにこぅて来ておくれ。」
「お爺さん、今僕はナツですよ。」
そう言うとどこへやら、ナツは再び一人でスタスタと行ってしまった。
無事帰ってこれると良いが、正直心配である。
「ほれ、ハンターさん方、どうぞ中へ入られたし。」
「ありがとうございます。ファラ良かったな。」
「もう…変なドラマに付き合わされて流石にヘトヘトよ……。」
こうして俺達はどうにかお爺さんとの接触に成功し話を聴かせてもらう運びとなった。
日は高い、この分なら今日中にこの件を解決できるかもしれない。
ショタっ子親衛隊、アーカイヴ。




