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【超工事中!】てんさま。~転生人情浪漫紀行~  作者: Otaku_Lowlife
第一部 3章 エンバー
75/402

Failure_7

「目を覚ましたら教えて下さい。それまで休憩室にいます。」


 託児所の入り口でイスタさんに会った。

案の定、ライラは寝室で眠っているという。

イスタさんに事情を説明して、ライラが目を覚ました頃に呼んでもらう事になった。


「本当に、おひとりで大丈夫でしょうか? よろしければわたくしも――」


イスタさんの不安そうなしっとりとした声。


「大丈夫です、きっと。俺でなければいけない、今はそう思っています。」


 これは、傲慢だったろうか。

…いや、あの時とは違う――冷静だ。

なにより「ライラの為に」そう確信が持てた。


 イスタさんが静かに頷いたのを見て託児所を去った。

そうして休憩室に行くとファラをみつけた。

腕相撲はしておらず大変に疲れた様子で、くて~っとバカみたいにソファにもたれ掛っている。


「お疲れ、そっちも大変だったね。たこ焼き、食べる? あじまんも、まだあるよ。」


 死んだ魚の目をしたファラの隣に腰掛け、目の前に先ほどパシリに使われて買ってきた食べ物をカバンから取り出してちらつかせる。

瞬間、水を得た魚へと超進化した。


「おやおやぁ~、えっへっへぇ~、シーヴさん気が利きますなぁ~!!

 は~むっ!!! んん~!! あじまんもたこ焼きも最高!!

 あんこの後にたこ焼き食べるとこんなにおいしいのね!!」


 それはどうだろう……。

あまり想像できないが。

美食を全身全霊で堪能するファラを見ながら俺もあじまんをランダムに一つ口に運んだ。

お、クリームだ。


「ところでメノさんは?」


「え? あー……。」


そう問いかけると再び疲れた顔になり、爪楊枝を咥えながら、フヘーっとオヤジ臭くため息をついた。


「あれはもうダメよダメ。てんでダメ。あの落ち込み様ったら、クソダサしー君の比じゃないわ。」


「おいクソダサっておまえ。」


そしてあまり比べてほしくない部分だ。


「な~にが『お前に何がわかる!』よ。バッカじゃないの? 解りますかっての!

 と申されましてもこちらとしましてはってのよホントにもぅ!!

 ケェーーーーッッッ!! ケェーーーーッッッ!!」


 徐々に不満はエスカレートし、いよいよ大層ご乱心の様子でキジみたいな奇声を上げ始めた。

ん? そりゃどんな声かって? そんなの自分で調べろよ、まぁ十中八九引くだろうけどな。

そうしてストレスを発散したのか、次の瞬間には冷静になり俺の目を見て話し始めるのだった。


「それでライラちゃんの事、どうするつもりなの? なにか考えがあるみたいだったけど。」


「あぁ、ちゃんと考えた。皆に言われたこと、ちゃんと受け止めて。

 ライラが起きたら、2人で話をしようと思う。」


 手のひらのロザリオを再び見つめながら、そう話した。

ファラは何やら勝手に納得してくれたようで満足そうに微笑んでいる。


「うん、なるほどね。それじゃあ後は、しー君に任せるとして――」


そういうと話半分に元気に立ち上がり――


「メスブタの乞食デブウシは退散しよっかな~。」


「え。」


悪戯な笑みを浮かべて探るようにこちらを見る。

昨晩の出来事を思い出し、なんだか急にバツが悪くなって思わず視線を下の方に逸らしてしまった。


「しー君。」


静かに名前を呼ばれて恐る恐る顔をあげると、ファラは嬉しそうに笑っていた。


「無理、しないでね。」


 なんだよそれ……。

乞食デブウシの下りいらねーだろぅによ……。

というか頼むからそう言ういじり方するのもうやめてくれよ、たくっ……。


「あぁ、わかってる。無理なことは一つもない、大丈夫。」


確信は自信になり、それは嘘偽りのない、素直な言葉になる。


「俺に任せろ。」


「うん。」


そう頷いた、曇り一つないファラの笑顔を見て「きっと上手くいく」そう思えた。


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