Feed The Wolf_4
暗い洞窟から這い出た時、月明りに照らされた私は、醜い獣だった。
けれど不思議なことに、朝日の訪れと共にヒトの姿になっていた。
それから私はここが元居た場所でないことを悟った。
街に溶け込み暮らすようになった。
そしてまた満月の夜が訪れると、一層醜い獣の姿となった。
私は満月を恐れて暮らすようになり、獣となる夜には逃げるように小さな森へ身を隠した。
獣になる度に、ヒトを食いたい衝動に駆られた。
その欲望は満月が訪れる度に強くなり、日々爛れていく醜い獣の姿に震える夜を過ごした。
そんな日々を誰にも正体を見られる事無く、どうにかやり過ごしていたある夜。
獣となった私はいつものように小さな森へ身を隠した。
そこで不自然な鳴き声を聞いた。
声のする方へ近づくと、美味しそうな赤ん坊を見つけた。
魔が差した。
食べる。
汚い唾液を垂らしながら、柔らかく肉厚な赤ん坊を掴んだ時、何故か涙がこぼれた。
食べたくて、食べたくて、食べたくて食べたくて食べたくて――仕方がなかった。
私はヒトなのに――この柔らかくて新鮮なお肉を食べたい。
獣なのに――その御馳走を食べる事が心苦しかった。
御馳走が大きな悲鳴を上げるたび、その柔らかな骨肉に齧り付きたい衝動に駆られた。
醜く爛れた、太く大きな手で新鮮で柔らかな極上の肉塊を掴んだまま、私は朝を迎えた。
伊豆行きてー。




