Lyla_1
その夜は雷を伴うひどく冷たい大雨だった。
呼吸を荒くして、男が叫ぶ、手には大きなスコップを握りしめて。
「おまえのせいだ……。」
せっかく整えたブロンドの綺麗な髪と、お気に入りの艶やかな赤いドレスは泥水にまみれて台無しだ。
「何もかもおまえのせいだ!!」
血と泥の入り混じる水たまりに身を預け、女は死の時を待っていた。
復讐に目は濁り、自分に近づく男を片っ端から、騙し、盗み、奪い、そしてさんざ遊び歩いた結果がこの様だ。
ふと昔のことを思い出す。
愛した男に逃げられ、堕胎した時の事。
産声を上げることすら叶わなかった私の子。
全てはあそこから始まったのだ。
許さない
許さない
許さない
勢いを増す雷雨の中、女は分厚い雲に覆われた空に浮かぶ不気味な満月を見つめる。
ハッキリと、燃えるような深紅の満月を、その瞳に焼き付けていた。
華の都キョートまでもが焼け野原と化して、絶望に暮れる世界。
道に迷い到着が遅れた事で、ヨシネンは多くの人から罵声を浴びせられ自暴自棄に……。
ある日寒空の下、河原で膝を抱えて蹲っていると、そこへ一人の女性が現れる。
それは大エド大火災で失った親友の恋人だった。
次回!! ヒケコイ883話!!
「ヨシネン、恋の火消しに大大大苦戦!!」
お楽しみに!!




