anthem_11
【えー続きまして初戦第三試合……。おー!!!!
きたきたきたきたぁぁあああああ!!!!!! いつものデコボココンビがやって来た~~!!!!
今回もばっちり対戦カードに細工したぜぇ!!!】
は? 細工…?
【黒印持ちのお茶目な聞かん坊!! ミノタウロスのぉぉおおお!!!
ビーフ!!!! ストロガノフゥゥウウウ!!!!!】
あ、昨日のバカ牛。
【ガチ! 応援よろしくゥゥウウウ!!!!】
ー ぅおおおおおおおおお!!!! ー
「はーっはっはっはっは! たっくん! 今日こそは負けねぇからなぁ!!」
何やら腰に手を当てて嬉しそうに高笑いしているが……。
今ばっちり対戦カードに細工したっつったよな?
それにデコボココンビって。
てことはビーフストロガノフの言う「たっくん」て犬猿のライバル? 喧嘩仲間?
もしかするとこの試合は箸休めとか、余興のようなポジションなのか?
【そして対するはぁ!!! 言わずもがなやっぱりあのおとこ!!! そうでなくちゃぁ始まらねぇ!!!!
同じく黒印持ちの!!! デモンゴート族の暴れん坊将軍!!! ズボラァァアアア!!! エボラァァアアア!!!!】
「えぇ? ズボラ・エボラ?」
ー ぅおおおおおおおおお!!!! ー
ズボラ・エボラ……。
そう呼ばれて現れたのはデモンゴートと呼ばれるヤギ顔の男だった。
ビーフストロガノフといい、これまたなんとも立派な黒ツノだ。
あれほど大きければ、それこそ武器になりそうなほどに凶悪な大ツノ。
ところで黒といえば少し気になったのだけど「黒印持ち」とは何だろうか?
犯罪歴とかそういう類のモノ?
それとも負けが込むとその汚名として着せられるとか、そんなものだろうか?
『ケンちゃん! 悪いが今回も勝ちは譲れねぇぜ? 今回で黒星100個目――』
うん、どうやらそうっぽいな。
『その引導を渡してやるぜ! 墓場まで持ってきな!』
「何言ってやがる! たっくんに一度勝たなきゃ死んでも死にきれねぇっての!
がーっはっはっはっ! それに今回もたーっぷりネタを仕込んで来たぜぇ!!」
『へっ! それは俺も同じ事よ!!』
なにやら楽しそうに話しているが、少なくともビーフがズボラに勝った事は一度もないらしい。
俺の近くに座る観客らの会話を聞いている限りでは、ビーフとズボラはやはりライバル同士のようだ。
お互いの初出場からかれこれ7年、どちらも欠かさず出場してきたという。
当然そうなると刃を交える機会が増えるが、そのたびに毎回熱い戦いを繰り広げるので、いつのまにかファンが増えたんだそうな。
今では恒例のイベントマッチになっているらしい。
彼らの試合を見るためにこの闘技場に足を運ぶ者も多く、今回でビーフとズボラの闘いは通算100戦目となるんだとか。
その記念すべき100戦目にビーフの初白星を期待して、普段より多くの観客が詰め寄せているらしい。
なんかこうして聞いてると、結構いい話だな。
手に汗握る青春ものっぽいじゃん。
そーゆーの、嫌いじゃないぜ、俺…へへっ。
ビーフ、頑張れよ……。
勝って皆に感動と勇気を届けてくれよな――
ー ビーフ!!! ビーフ!!! ー
ー ビーフ!!! ビーフ!!! ー
ー ビーフ!!! ビーフ!!! ー
会場は試合が始まる前からビーフコール一色となる。
それを一身に受け、ビーフは「がっはっはっ」と満足そうに笑った。
対するズボラも、『へへへっ』と嬉しそうに鼻を擦って微笑んでいた。
そう…まるで『こいよ、ビーフ』と胸を貸すように――うぅ……。なんか、ちょっとウルッと来たや。
【それじゃあ行くぜぇ!!!! ビーフ!!! お前の記念すべき初勝利を願って!!! レーッツローックッ!!!!】
解説の男の合図と共にゴング鳴り響き、歓声の中ビーフとズボラは同時に飛び出した。
ほぼ同時に間合いを詰め、お互いの一撃を勢いよくぶつけ合う。
戦略など無い、お互いに手の内は知り尽くしている。
だからこそ真正面から迷いなくぶつかり合えるのだろう。
木剣を交え、叩きつけ、弾き返す、身を引くタイミングすらも怖い程同時だ。
そう、それはまるでミラーマッチでも見せられているかのような錯覚を起こした程だ。
「やれー! ビーフー!」
「いいぞー! 今日こそ勝てるぜぇ!」
観客席からも熱い声援が絶えず飛び交う。
これまでのあのふざけた2試合が嘘のようだ。
【互角!!! ビーフ!! ズボラ!! 互いに互角だぁ!!!
これまで幾度となく刃を交え2人!! これほどまでに完璧に息の合った闘いがっ! これまであっただろうかー!?!?
もはや芸術!!! いや剣舞と言っても過言ではない!! だが真の闘いはここからだぜぇええ!!!!】
ー ぅおおおおおおおおお!!!! ー
「へへっ! どうした! たっくん! こんなもんじゃない筈だぜ!?」
『なに言ってやがる! お前の方こそ、まだ本気出してねーだろ?』
「なーに、エンターテインメントってやつだ。 勝つからにはドカッと盛り上げねーとなぁ! 行くぜぇ!!」
再びビーフが飛び出す、それと同時にズボラも飛び出す。
一進一退ならぬ一進とまた一進のぶつかり合い。
はげしく木剣を打ち付け合い、どちらも一歩も引かずにグイグイと押し込むように間合いを詰めていく。
お互いの顔と顔が数センチの所まで近づいたその時、突然ビーフが大声で叫んだ。
「たっくーーーーん! お前こないだーーーーっ!! サチコの妹とーーーー!! 寝ただろーーーー!!」
「は?」
【言ったーーーーー!!!! 先に仕掛けたのはビーフだァァアアア!!!!】
解説が一層厚かましく歓喜した。
観客席にどよめきと歓声が混濁する。
え、なに……? アイツいま何て言った……?
サチコの妹?? なに? どゆこと?
そしてビーフがそう叫んだ途端ズボラの顔が青ざめ、ザっと引きつる。
『うぐぅぅうううううっ!!』
額に冷や汗を浮かべ、悔しそうに眉間に皺を寄せてビーフを睨んでいる。
動揺が隠しきれていないのは木剣の競り合いにも表れていた。
やや押され始め後ろに一歩下がるズボラ。
観客席のどよめきは徐々に減り、そしてついに大きな歓声の塊へと変わった。
ー ぅおおおおおおおおお!!!! ー
ー ズボラがサチコの妹と寝たぞーーーー!!!! ー
ー 赤っ恥かいたなぁあああああ!!!! ー
『ちぃっ! とんでもねぇネタ持ってきやがってっ! ぶっぶぶ! ぶっころしてやるぅうううう!!』
あっちもこっちも、観客がズボラを指さして大声で腹を抱えて笑う。
ネタってよぉ……。ただのゴシップじゃねーか……。
なんだこの試合……。今までで一番くだらねぇ。
「へへへ! どうしたたっくん! まだまだ、たぁ~くさんあるんだぜぇ!? 楽しませてくれよ!!」
『このやろう! 流石に悪いと思って言わなかったがっ、もう許さねえ!!』
そういうとズボラはズイッとビーフの木剣を勢いよく押し戻しながら叫んだ。
『お! お前の父ちゃん!! こないだ美人局に嵌められてーーーー!! とんでもねぇ借金こさえたろぉぉおおおお!!』
「ぶっほぉぉおおおお!!」
【これはやっばぁぁあああああい!!!!
これまでの99戦!! これほどエグイ暴露大会に発展したことはなかったぞぉぉおおおお!!!
まさに泥仕合!! いやクソ試合だァァアアア!!!
両者クソにクソを塗りたくってクソにまみれたドクソっぷりだァァアアア!!!】
「がーはっはっはっはっ! ビーフのオヤジ馬鹿すぎだろー!」
「ぷっはっはっはっはーーーー!」
エグイ……。えぐすぎる……。
この試合と一切関係のないビーフパパのゴシップに、周りの観客が目に涙を浮かべ、腹を抱えて大爆笑。
流石のビーフも鼻水を吹き出し、ドッと涙を流し始めた。
これ完全に放送事故、いやこの場合、闘争事故か……。
ジリジリと今度はビーフが押され始める。
「ちっきしょおぉおぉぉおおお!! ズボラてめぇ! いくらなんでもひどいじゃねーかよぉおお!
パパはぁあああ! パパはもうかぁちゃんじゃ満足できねぇんだよぉおおお!! ぜってーーー許さねぇええ!!」
『オメーだって! とんでもねーことバラしやがって!
もーーーー許さねぇ!!』
「言ってやる! とっておき言ってやる!!」
『あぁ言えよ!? お前が言ったら俺もとっておき言ってやるからなぁあああああ!!』
【きたきたきたきたきたぁぁああああ!!!! とんでもないことになって来たぁぁあああああ!!!!
俺達に言えないことを平然と言ってのける!!!! そこに痺れる憧れるぅぅううううう!!!!
えぇ~い!!! こうなったら全部ぶちまけろぉぉおおお!!!!】
いや止めようよもう……。可哀想だよ……。
2人とも泣いてるじゃんかよぉ……。
ー ぅおおおおおおおおお!!!! ー
ー ビーフ!!! ビーフ!!! ー
ー ビーフ!!! ビーフ!!! ー
ー ビーフ!!! ビーフ!!! ー
「なんなんだこれ……。」
もはや試合でもなんでもない。
ただの大暴露大会だ……。
「おぉぉおおおおーいいいいいぃーテツヲォォォーーーーー!!
今日来てんだろーーーー!! いるなら返事しろーーーーー!!」
〖おーーーーーー! けんちゃあああん!! 俺はここにいるぞーーーーーー!!〗
ビーフが友人らしき人物の名を叫ぶと、立ち上がって大声でそれに呼応し、笑顔で手を振るただのゴリラが観客席から現れた。
アイツがテツヲか……。なんというか、もろにゴリラだな……。
絶対血液型Bだろ。
「テツヲーーーーーー!! ズボラのやつーーーー!! 先週お前のかぁちゃんとーーーー!!」
『あーーーー!! ばか! ビーフてめぇ! それだけは言うんじゃねぇ!!』
「寝たぞーーーーー!! しかもーーーー! お前の妹とーーーー!!」
『やめろーーーーーーーーー!!!』
「3Pだぁぁあああああああああああ!!!」
………………………。
シーン…………。
会場は静まり返った。
ついに修羅場すら裕に超えてきた。
まじ? それは流石にやべえって……。
アイツどんだけ寝てんだよ……。
〖ふざっっっっっっけんなぁぁぁあああああああああああああああ!!!〗
テツヲ、ブチギレてドラミングオブザイヤー。
さらに観客席から闘技場へ飛び降り試合に乱入。
あーぁ、もうめちゃくちゃ。クソ試合ですらねーよ。ただの怪獣大戦争。
【おぉっとぉぉおおおお!!! ここで新戦士爆誕だァァアアア!!!】
アンタも言ってる場合か。
【その名もぉ!! 怒れる類人猿!!! テツヲォォォオオオオオオオーーーー!!!!】
言ってる場合かっての!
なんで止めねーのアイツ!
おかしいだろ!!
ー ぅおおおおおおおおお!!!! ー
ー テツヲ!! テツヲ!! テツヲ!! テツヲ!! ー
ー テツヲ!! テツヲ!! テツヲ!! テツヲ!! ー
ー テツヲ!! テツヲ!! テツヲ!! テツヲ!! ー
〖うぅぅうううがぁぁああああああ!!!!!〗
『待てーーーー! テツヲーーーー!! 話せばわかる!!
あーーーーーーーー! いっっっってぇぇえええええええ!!』
怒り狂ったゴリラ――いや、テツヲは沸き上がる声援の中ウホウホと飛び出し、一直線にズボラ目掛けて飛び掛かった。
『ぎゃぁぁああああああああああああ!!!』
そしてズボラの背中に飛び乗ると再び激しくドラミングをして、思い切り首に嚙みつくのだった。
〖うほっ! うほっ! うほっ! うほっ!!〗
真っ赤に充血した目を見開き、完全に野生を解放してしまっている。
これは死人が出るかもしれない……。
ー はははははははははははははっ!!!! ー
ゴリラがヤギの首に噛みつき、それを見た観客とバカ牛が大声で腹を抱えて笑っている。
とんでもねぇ――とんでもねぇ地獄絵図だ。
〖ズボラてめぇぶっ殺す!! このまま首嚙みちぎってやるっ!!〗
『あんぎゃぁぁああああああああああ!!!』
「がーはっはっはっはっ!! ざまーみろっ! これで勝負あったなぁ!!」
ー テツヲ!! テツヲ!! テツヲ!! テツヲ!! ー
ー テツヲ!! テツヲ!! テツヲ!! テツヲ!! ー
ー テツヲ!! テツヲ!! テツヲ!! テツヲ!! ー
そしてウホウホと興奮したゴリラを背中に乗せたまま走り回っていたズボラはいよいよ力尽き、ついにその場に呆気なくパタリと倒れてしまった。
死んだ……?
観客は再びテツヲコールに湧き、怒りに溺れていたテツヲは一転、我に返るととても優しげな笑顔で観客席に手を振って降り注ぐ声援に応えている。
俺は一体何を見せられているのだろうか。
少なくともこの中から優勝候補が現れることは今後も一生ないだろう。
「テツヲ!」
〖ケンちゃん!〗
ビーフが熱い声援の降り注ぐ中、テツヲに近づく。
そして2人…いや2匹は互いの名を呼ぶと、右腕を力強くガシッと組んで清々しい笑顔で観客席に手を振り始めた。
【しょうしゃあああああああああ!!!!! ビーフストロガノフ&テツヲォォオオオオオオオ!!!!!!!】
いいのかそれで。
ー ぅおおおおおおおおお!!!! ー
なんだこれ。
【初勝利おめでとうビーフ!!!! 友情のたまものだぁぁあああああ!!!!!】
ー ビーフ!!! ビーフ!!! ー
ー ビーフ!!! ビーフ!!! ー
ー ビーフ!!! ビーフ!!! ー
「へへ……。ついに、ついに俺、勝ったんだな……。」
〖あぁ…おまえの夢、俺達の夢。解説の男はあー言ったが、この勝利はお前の努力の賜物さ。〗
勝ち誇った顔で何言ってんだ…9割以上闘ってねーだろがよ。
なんならお前ら全員クソまみれだよ。
俺がお前らだったらもう恥ずかしくて街歩けねーよ。
【ん!? あぁっとぉ!!!
ここでズボラが起き上がったぞぉぉおおおお!!! まだ試合続行かぁぁあああああ!!!】
解説の素っ頓狂な叫び声と共にズボラがムクッと静かに起き上がる。
瞬間声援は止み、ビーフとテツヲの表情が一瞬にして曇る。
再び緊張した空気が立ち込め会場が静まり返る中、無駄にズタボロのズボラが口を開いた。
『へへっ……。残念だが、もう俺にやり合う気力は残ってねぇ……。』
だろうな。
『ビーフ……。まさかこんなサプライズ持ってくるたぁ、予想外だったぜ……。』
でしょうね。
『ほんと、とんだエンターティナーだぜ。強くなったな、ビーフ。』
「た、たっくん……。」
目をウルウルさせるな。
もう何に感動してるのかもわからねぇよ。
ん………。おいゴリラ、今お前どこからハンカチ出した。
ビーフが鼻水を垂らしながら泣き始めると、テツヲはどこからともなくハンカチを取り出しビーフの肩を優しく叩きながらそれを渡した。
ちなみにテツヲはもろにただのゴリラ、つまり全裸だ。
『おめでとう……。ビーフストロガノフ。おまえの、勝ちだぜ……。』
「たっくん!!!」
【なんとここでまさかの敗北宣言!!!! 勝ったのはビーフ!!!! ビーフストロガノフだぁぁあああああああ!!!!】
ー ぅおおおおおおおおお!!!! ー
なあおい、いい加減にしろ。
ー ビーフ!!! ビーフ!!! ー
ー ビーフ!!! ビーフ!!! ー
ー ビーフ!!! ビーフ!!! ー
【あぁっとぉぉおおおおおお!!!!! ちょいまちちょいまち!!!!!!
みんなぁぁあああああ!!!! よくみろーーーー!!!! ズボラとビーフのツノをよくみろぉぉおおおおおお!!!!!!】
「え? なんだ、アレ……。」
勝利の歓声にクギを刺すような解説の声に観客がざわつく。
そしてそれを見た誰もが驚きの声を上げた。
もちろんそれは俺とて例外ではない。
「た! たっくん! ツノが! ツノが!!」
『お! お前の方こそ! ツノ! 黒印が!!』
〖お前ら、ついに……。ついにやったんだな……。
まさか、こんな日が来るなんて……。俺…おまえらと一緒にいてよかった……。〗
ビーフとズボラは狼狽えたような表情でお互いを指さし、テツヲはそれを見て子の成長を見守る親の如く嬉しそうに涙を流していた。
そう、それは本当に奇跡のような出来事だったと思う。
2人の真っ黒だったツノが突然、まるで鬱血した患部が治って元の色へと戻るように綺麗な白色に変わったのだ。
「え、なに……。何が起こって……。」
まさか、これ演出?
そう思って周りを見渡すがしかし、どうやらそうではないらしい。
観客が驚嘆の表情のまま口をあんぐりと開けて固まってしまっていた。
何が起きたのか、観客や戦士たちの表情や反応から察するに、俺の想像より遥かにとんでもない事なのは間違いなさそうだ。
解説の男も呆気に取られていたのか、少しの沈黙を破ってハッとしたようにポツポツと敬語で喋り始めた。
【黒印が……。業苦が、消えました!!!こんなことが、あるの、でしょう、か……。】
え? 黒印……? 今、業苦が消えたって、そう言ったのか??
あの黒いツノが白くなった、それが業苦が消えたってことなのか?
待って…突然の事でいまいち状況が呑み込めない……。
つまり「黒印」っていうのは、あの黒くなったツノの事で……。
そして2人が争い、ビーフが勝利した時、二人の黒印は消えた。
黒印の消失と共に業苦も消えたって事なのか?
でも何故――理由が知りたい……。
きっとこれはファラの業苦を解く手掛かりにもなる筈だ。
「たっくん!!」
『けんちゃん!!』
〖おまえらぁあああああ!!〗
ー ぅおおおおおおおおお!!!! ー
【こいつはすげぇえええ!!!! 100戦目の勝利にふさわしい最高のサプライズだぁぁあああああ!!!
おめでとうビーフ!!! おめでとうズボラ!!! おめでとうテツヲ!!!
そして今日までずっと応援してくれた会場のみんな!!! ありがとぉぉおおおおおおおおお!!!!】
ー いいぃぃぃえぇえええええええええええ!!!! ー
俺の動揺に反して会場は感動の嵐に雄たけびを上げ、盛大にブチ上がった。
3匹のフレンズが暑苦しく抱き合い、無駄に大粒の涙を流し始め、観客は一斉にスタンディングオベーション。
圧倒的幸福の絶頂の最果て。
もはや「黒印、並びに業苦が何故に消えたのか」という疑問が入り込む余地など何処にもなかった。
黒印と業苦、そしてそれらがビーフの勝利と共に消えた不思議……。
初戦第三試合勝者、ビーフストロガノフ。
かくしてクソにクソを塗りに塗りつくした怪獣大戦争大暴露大会は、大きな疑問を残したままその幕を閉じた。
野生のゴリラは、バナナを食べないそうです。




