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【超工事中!】てんさま。~転生人情浪漫紀行~  作者: Otaku_Lowlife
第三部 1章 ユースファウンテン
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Jinxed_6




暫くして、コーヒーを淹れ終えた私がリビングへ戻ると、少年はさっそくコーヒーを片手に「なぜ魔女の行方を追っているのか」について話し始めた。




 まず少年が語ったのは「魔女はある人物の助けで、声を封じられ生かされている」という、そもそもの根幹に当たる部分だった。

ただそれに関して、少年の口から魔女を生かした当事者の素性が明かされることはなかった。

というのも、万が一「魔女を逃がした人物がいる」と世間に知られれば、その人物が何らかの罰を受ける可能性があるからなのだろう。



 さて、その後も話は続いたが――それは例えば「魔女には娘がいた」とか。

例えば「少年はその娘と共に魔女の行方を追って旅をしている」とか。

最後には「ここには完璧に勘違いで来た」という、0~100まで冗談みたいな事をしみじみと伝えてくれた。


「――というわけです。」




ので――




「え、それじゃぁキミ……何しにここへ来たの?」


「それなー。」


「それなーって、あのなぁ……。いやー、稀代のバカだな、キミは。」


「はい、バッカデース。」


話の最後に私が呆れてそう言うと、彼はうんざりした様子で頭を掻いていた。


「しかし『魔女が生かされていた』というだけでも驚きだが、さらに娘がいたとはね。」


 魔女の娘の名を「ファラ」と、少年は言っていた。

声を聞いた者の記憶を消す魔女――そして、業苦は遺伝する。

つまり、ファラというその子にも同じように「声を聞いた者の記憶を奪う業苦」が宿っているという事になる筈だ。

とすると――


「けどそうなると、ファラちゃんの声も封じられてるんだろう。それも魔法で封じてるとくれば、もし術者が亡くなれば――」


 長い髪を指でクルクルと絡めとりながら、私はトントンと話を整理し、彼の事情を理解する。

そして、問題は「シャラプ」だ――対象の声を封じるあの術は、決して永久的なモノではない。


 本来「声」というものは、肺から送った呼気によって閉じた声帯を揺らす事で、まず、音の元なる「振動」を発生させている。

ヒュムだろうとリザードだろうと、種族問わず、その基本的な仕組みは同じだ。

そしてシャラプは、術者の「気」を使って、それを薄い膜のようにして対象の声帯を覆う事で、音の発生源となる「振動」を中和している状態なのだ。

使用する「気」そのものは微々たるものだが、術者が死亡すれば、その膜もすぐに消滅する。


「ふむ、なかなか気の重い話だね……同情するよ。」


私は他人事のようにそんな事を言って、ため息交じりにティーカップを口へ運んだ。


「あー、それが、今は喋れるんです。」


「え?」


 あっけらかんとした彼の言葉に理解が遅れ、思わずカップを持った手が一瞬止まる。

今は、喋れる――それはつまり、その子が「業苦の影響を気にしなくても良い状態」という事だが。

そこで考えられる理由は一つだけ、しかし「そんな事」があり得るのだろうか……。

だが実際、彼にこれまでの記憶を失っている様子は全くないわけで……となるとやはり――


「それじゃぁまさか……その子は業苦を解消したの? 凄いな……。一体どうやってそんなこと……。」


 実際、過去にも例はあるそうだが、私は業苦を解消したというヒトに会ったことも、見たこともなかった。

なにしろ、業苦を解消するというその術自体も曖昧で、例えば「当事者の願いを叶える」だとか「人生を謳歌する」などと、今も無責任でありきたりな情報が巷では横行している。

それゆえに、私はそもそも「業苦は解消できる」なんて話を信じていなかったのだが。


「あ、いや、業苦はそのままなんですけど……。」


「あん? それって……普通にまずいんじゃないのか? どういうこと?」


 少年の言い方では「業苦はそのままに、喋る事が出来ている」という事になる。

しかしそれでも、業苦は発動せず……と――これは、ナゾナゾなのか?


「あーもー訳わからん、早く話せ!!」


 ただでさえ理解に苦しむ上に、いつまでも煮え切らない少年に、私は僅かに憤りを覚えた。

仮に魔法であったとして、そんな魔法は聞いたことも無い。

いや、そもそも本大陸に、私以上に魔法に長けた者がいるという話すら聞いたことがないのだ。


「だから話すと長いんで、巻きで。」


「は? なんだって……?」


「巻きまーす。」


「あ、おいコラ勝手に!!」


「巻き巻き~。」




***




「つーわけなんです。」


という訳で、私は彼に巻きに巻かれて、だいぶ話を割愛されてしまったが――


「は~、江戸っ毛ねー。そりゃまた可笑しな話だ。」


 よく解らないが、その副声虫サイレントヒルとかいうグロテスクな寄生虫のお陰で、その子は業苦を気にせず話すことが出来るのだそうだ。

恐らくは声帯に寄生する類のものだろうが――そんなものを無暗に体に取り入れるなんて、しょうじき気味が悪いったらこの上ない。


「それと申し訳ないんすけど、他言無用でお願いしますね。魔女に関しては、どこに恨みを持ったヒトがいるか解らないんで。」


「解っているよ、私に魔女の事を教えてくれたヒトも、大変な恨みを持っているようだったからね。」


――こんなふざけた世界でも、実際に魔女に恨みを持つ者は多い。

つまり、命の危険があるのは、魔女だけでなくその子にしてみても同じことなのだ。

その子に罪はなくとも、その子が黒印持ちであり、また「声を聞いた者の記憶を消す業苦」を背負っている事には何ら変わりがない。

もし恨みを持った誰かに「魔女に娘がいる」なんて事が知られようものなら、それこそ街中がパニックを起こしか兼ねない大事件に発展する恐れがあるというわけだ。


 少年は何よりもその子の身を案じているのだろう。

彼はそうして、その子を守り、庇い、先の不安をひた隠しながらも、どうにかここまでやってきたのだ。

不覚にも私は、そんな彼をカッコイイと思ってしまった。




――よほど、その子の事を大切に想っているのだろうね。




「それで、えっと……ファラちゃんだっけ。その子は何歳いくつになるんだい。」


「え? あー、確か……今年で22だったかなぁ? アイツに興味ないんで、あんまわかんないっす。」


「えー……。」




――訂正。




「酷いなキミ……まぁけど、それじゃぁウチのガチャ子とも同い年かもね。」


「……ん? 今、なんて?」


 ふと、私の言葉に、少年は静かに首を傾げた。

まぁ、何を考えているのかは、心を読まずともわかるけれど。


「いや、ガチャ子も今年で22だから、キミの言う通りならファラちゃんと同い年だな、と……。」




そして、彼は――




「ひぃ~~~はっはっはぁ~~~ッ!!」


「え?」


「それはマジでか~なり面白い冗談すねぇ~~~プギャーーーー!!!!」




――発狂した。




「お、おい……。」


瞬間、一瞬で涙腺と理性と腹筋がバッキバキのバキに崩壊したと思われる少年が、それこそ壊れるんじゃないかと心配になるほど力任せに、バシバシとテーブルを叩きまわし始めた。


「ひゃっはーーーークッソ腹いてぇーーーー!!!!」


「いや、大ウケしてるとこ悪いが、マジだぞ……少年。」


「え。」






~~おまけ~~






「う、嘘だろ……。だってアイツ、背とか他にも、あんなにちいせぇのに……。」


「確かに、ドルイドの中でもアレは……同い年の子達と比べると脳の容積とか他にも色々、随分小さいけどね……。でもそれを本人の前で言うと噛みつかれるよ、気を付けな。」


「はぁ……って、え? てかアイツ、ドルイドなんすか。」


「今更なに言ってるんだキミ、当然だろう。そもそもヒュムが『使えもしない魔法の修行』になんて来るもんか。ちなみに、私もドルイドだぞ。」


「な、なるほど……。てかアイツ、俺より目上なのかよ……。」


「まぁ、信じたくない気持ちもわかるけどね。だがあのサイズ感もそれなりに需要はあるんだよ。有り体に言えば、ロリコン作者の趣味だ。」


「まじかー。作者の趣味クッソ最悪だな。」






※作者はロリコンではありません。



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