Holding absence
次の任務で、今度はアスとナツって名前の「お互いが入れ替わっちゃう」とかいう、ふざけた双子のリンネに会ったんだ。
しかもアイツら、助けてやった恩も忘れやがってさ、今も俺の事「ハゲ」とか「変態」とか言ってバカにするんだよ。
まぁ、それはもういいんだけど……。
それでチトさんていう双子を育てたお爺さんから話を聞いたら、思った以上にややこしい事態になってて。
挙句、協力者になる筈だったチトさんからも「この件から手を引け」って、冷たく拒絶されちゃってさ。
どうにか説得しようと思ったんだけど――でも俺に何かを言えるほど、深い考えや言葉の重みなんて無くて。
結局、またファラに助けられた。
俺は自分の無力さを思い知っただけだった。
俺にはまだ、何もないんだって、そう思い知らされた。
まだまだ、半人前にすら届いてないんだって。
最終的に俺の奇跡で、どうにか双子を和解させることが出来たけど。
あのとき俺のしたことは結局、出来レースに便乗した程度の事だった。
けれどチトさんは、そんな自信のない俺を勇気づけようとして「あの子に見合うパートナーになれ」って、そう言ってくれて。
あのセリフ――すげぇカッコいいんだけどさ……今にして思うと、なんだか笑えてきちゃうよ。
でもこんなダサい俺の事を、ファラはずっと信じてくれていた。
皆は信じてくれていた。
だから俺も信じられた。
自分の事も。
皆の事も。
自分が手を差し伸べようとしている相手の事も。
あの一件、ボキボキに心をへし折られるくらいマジで怖かったんだけどさ。
けどその経験が、それからの出来事を支える一本の柱になってた。
自分に足りないもの、自分にできない事、だんだん解ってきて。
そして自分にできる事、探すようになって。
俺は、俺のこと、少しずつ解ってやれるようになってた。
なんて……それもきっと、自惚れてただけだったんだけどね。
だから……俺は、今だったら解る……。
フレンさんの気持ち、今だからこそ、痛いほどわかるんだ……。
これアニメ化したらいきなり総集編で笑えるやつ。




